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COVID-19無症状者に見られる抗体反応の特徴について

National Institute of Metrology, Beijing, Chinaらのグループは、COVID-19無症状者における抗体反応の特徴について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41392-021-00596-2

無症状者と一口に行っても、その40%以上は全く何の症状も見せません。これら無症状者はウイルス蔓延に関わっており、SARS-CoV-2感染の30%以上は、これら無症状者に由来するものと考えらrています。

本研究においては、合計143名の無症状者がリクルートされています。これら無症状者におけるウイルス量は、唾液中のSARS-CoV-2 N遺伝子の検出で推定され、感染発覚後9日目にピークを迎え、(315.1 copies/mL, 95% CI 238.1–417.1)、その後は徐々に減少し、21日後にはカットオフ値 (102 copies/mL) 以下になりました(下図参照)。SARS-CoV-2検出の陽性率もウイルス量と同じ傾向を示しています。

抗体反応は非常に弱く、わずかに69日間しか続きませんでした。

糖尿病では、心筋細胞のACE2の発現が上昇し、SARS-CoV-2の感染をアシストする

University of Campania L. Vanvitelli, Naples, Italyのグループは、糖尿病患者におけるSARS-CoV-2の感染リスクの増大と心筋細胞におけるACE2の発現量の関係について研究しています。
https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-021-01286-7

糖尿病(DM)を発症している患者さんと健常者を比較すると、糖尿病患者の方が明らかに、心筋細胞において、ACE2の発現量のみでなく、TMPRSS2の発現量も増加していることがに示されています(下図参照)。
更に、COVID-19患者とCOVID-19非感染者の間の比較では、COVID-19患者の方が、更にACE2、TMPRSS2共に発現量が上昇していることが分かります。
結果として、糖尿病患者のCOVID-19に対するリスクの増大は、ACE2の発現量の増加と深い関係にありそうだと結論しています。

ACE2, TMPRSS2の発現とCOVID-19の呼吸器不全との間にはいかなる関係があるのか?

Universidade Federal do Rio de Janeiroらのグループは、COVID-19の重症度とACE2及びTMPRSS2の発現の間に如何なる関係があるのか?について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-88944-8

ACE2とTMPRSS2のふたつが、SARS-CoV-2が宿主細胞に感染する場合の主要なプレーヤーであると考えられています。しかしながら、これらの要素の発現レベルがCOVID-19の重症度と相関しているのかについては、依然として明確な結論はありません。angiotensin-converting enzyme 2 (ACE2) は、SARS-CoV-2の感染受容体であり、transmembrane serine protease 2 (TMPRSS2) は、感染プロセスにおける重要な起爆剤となる酵素と考えられています。

鼻腔RT-PCR検査でSARS-CoV-2の感染が確認された213名を含む症例対照研究が行われました。ACE2とTMPRSS2の発現レベルは年齢と正に相関し (ACE2に対して、r = 0.20; p = 0.03 、TMPRSS2に対して、r = 0.21; p = 0.01)、性別間差はありませんでした。
ACE2のトランスクリプション・レベルは、感染者の方が健常者よりも顕著に低く、TMPRSS2のそれは両グループ間に差異がなく、結果、TMPRSS2/ACE2 比は、感染者の方が健常者より有意に高くなっていました。ACE2の発現量がSARS-CoV-2の感染に対して防御的に働き、TMPRSS2のそれは無関係であり、結果、TMPRSS2/ACE2比がCOVID-19の重症度と相関するというのは面白くはありますが、それを解釈するにはブログ管理人の観点からは無理があります。それよりもACE2/TMPRSS2という感染パスの背後に隠れて存在する何らかの感染メカニズムが疑われます。

米国CDCのCOVID-19チームが報じたPfizer-BioNTech と Moderna ワクチンの有効性

米国CDC COVID-19 チームは、Pfizer-BioNTech や Moderna ワクチンの有効性調査の結果を報告しています。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7018e1-H.pdf

チームは、その結果として、Pfizer-BioNTech 或いは Moderna ワクチンの完全接種を受けた人のワクチン有効性は、94% (95% CI = 49%–99%)、部分的なワクチン接種を受けた人で 64% (95% CI = 28%–82%)と報告しました。
本研究においては、65歳以上で、COVID-19症状を示して2021年1月1日から3月26日の間に入院し、RT-PCRで確認された417名を対象としています。この中には, 187人の症例患者と230人の対照が含まれています。症例患者とは、一回以上のSARS-CoV-2 RT-PCRテストを受けて陽性と認められた人、対照とはRT-PCRで陰性と認められた人であります。また、この研究の参加者は、ワクチン接種を受けたことがCDCワクチン記録など公的な記録と自己申請で確認された人達です。

COVID-19の症状を発症する14日以内に、第一回目のワクチンの接種を受けていてもその効果はほとんどないということには注意しましょう(ワクチン有効性 = 3%, 95% CI = −94%–51%)。

新型コロナウイルス(COVID-19)にレクチンと糖鎖の相互作用を生かして立向かう

Universidade CEUMA, Brazilらのグループは、エンベロープを持つウイルスとの戦いに糖鎖とレクチンの相互作用を用いた過去の事例をレビューし、SARS-CoV-2への挑戦に触れています。
https://academic.oup.com/glycob/article/31/4/358/5934657

COVID-19に立ち向かうに際して、ウイルス・エンベロープの糖タンパク質の存在は、レクチンを用いる方法について、いろいろな可能性を与えてくれます。レクチンは、ウイルス・エンベロープの糖鎖と結合し、ウイルスの宿主細胞への感染を阻害することができるという意味において、新しい抗ウイルス薬の開発のリード高分子になり得ます。

SARS-CoV-2の糖鎖修飾の概要は次のようです。SARS-CoV-2のspikeタンパク質には、22個のN-型糖鎖修飾部位、6個のO-型糖鎖修飾部位があります。 oligomannose-型の糖鎖は、2ケ所(N234 and N709)、複合型糖鎖は、主に14ケ所(N17, N74, N149, N165, N282, N331, N343, N616, N657, N1098, N1134, N1158, N1173 and N1194)、更に6ヶ所は、oligomannose-型と複合型が混在しています(N61, N122, N603, N717, N801, N1074)。最も普通にみられるoligomannose-型糖鎖は、 Man5GlcNAc2であります。一方、O-型糖鎖は短鎖にて、Tnやcore1構造が主であります(T73, T76, T478, T676, T678, T1076)。

このレビュー論文で触れられている抗ウイルス薬として評価された典型的なレクチンは(FRAIL, GRFT, Cyanovirin-N, BanLec, MVN, Avaren)であります。これらのレクチンの糖鎖結合特異性は、ほとんどがoligo及び high mannoseでありますが、これは過去にターゲットとされたウイルス(HIV, HCV, influenza, Ebora)のエンベロープは、強くmannose修飾を受けていたことに関係します。これらウイルスに比較すると、SARS-CoV-2の糖鎖修飾は幾らかパターンが異なっているということができますし、従って、これらのレクチン以外に、SARS-CoV-2と戦うにはより優れたレクチンが存在する可能性があるでしょう。

ともあれ、抗ウイルス薬としてレクチンを使う場合の大きな制限は、ターゲット以外の望ましくない体細胞に結合してしまう可能性があるということにあります。例えば、レクチンを投与することで、凝集反応や細胞増殖を招いてしまうというような事柄があります。従って、レクチンを使うことによるそういった副作用を抑えながら、SARS-CoV-2に対する特異的な抗ウイルス薬としてのみ働くようにレクチンをタンパク質工学を用いて工夫してやることが必要です。おそらくそのキーワードは、融合タンパク質を作るということではないでしょうか?例えば、Fab融合, Fc融合, PEG化、などなどです。

SARS-CoV-2のNTDをターゲットとする中和抗体の特性について

Israel Institute for Biological Researchらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のNTDに対する12種類の中和抗体の特性について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33937725/

12種類のSARS-CoV-2 NTDをターゲットとする抗体 (BLN1 ~ BLN14) は効果的にSARS-CoV-2を中和化することができ、そのIC50は、最も低い中和活性のBLN8で54.9 µg/ml、最も高い中和活性を示すBNL1やBLN12で0.008 µg/ml、に分布しました。 これらすべての抗体の特異性は、NTDをターゲットとするELISAにて検証され、より詳細には、S1タンパク質の配列から作られたペプチドアレイによるエピトープマッピングにて検証されました。 そしてまた、NTDの糖鎖修飾の抗体への影響については、糖鎖アレイ、及び糖鎖を阻害剤として用いる競合アッセイによって評価されました。糖鎖アレイの実験では、これら抗体は、ほとんどの糖鎖に対して非常に弱い結合しか示しませんでしたが、LacNAcとそのα2-3Sia修飾については強く結合しました。これらの結果から、BLN4とBLN12は、NTDのアミノ酸配列のみでなく、N-型糖鎖もその結合に関与している可能性が指摘されました。

SARS-CoV-2においては、ACE2が主たる感染受容体として考えられていますが、C型レクチン(L-SIGN, DC-SIGNなど)も感染受容体として機能することが報告されています。そこで、代表的な抗体がSARS-CoV-2とL-SIGNの結合を阻害できるかどうかについての実験が行われました。 阻害効率は、BLN14の25%からBLN4の50%に分布しました。この阻害効果は、抗体のNTDの糖鎖に対する直接的な結合によって引き起こされるものではなく、L-SIGNとの立体障害によって引き起こされているものだと考えられました。

ACE2の発現が低い組織の細胞の場合に、L-SIGNやDC-SIGNがSARS-CoV-2に対する第二の感染受容体となるのであれば、NTDをターゲットとする抗体がSARS-CoV-2の感染を抑え込むために有効であると考えられ、結果として、RBDをターゲットとする抗体とNTDをターゲットするカクテル抗体がSARS-CoV-2の治療に有効であるはず、と結論しています。

SARS-CoV-2再感染のリスクはどの程度なのか?

Cornell University, Doha, Qatarらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の再感染のリスクがどの程度あるのかについて報告しています。
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(21)00141-3/fulltext

2020年4月16日~12月31日にかけてSARS-CoV-2感染陽性となった43,044人を対象とし、最初の抗体テストの後、14日後以降にPCRのSwab検査で陽性となった人が再感染の可能性があると定義しています。

結果として、SARS-CoV-2に罹った人の再感染に対する抑止効果は、92.7% (95% CI: 91.3–93.9%)に達したとのことです。また、再感染した場合の病態は、最初の病態よりも軽症の場合がほとんどであるとのことです。この再感染に関する抑止効果は、mRNA COVID-19ワクチンで報告されている有効性と同レベルであることは非常に興味深い結果です。

潰瘍性大腸炎の抗TNF抗体治療効果を予測する新規バイオマーカーについて:IgGのJacalin結合性糖鎖修飾構造の変化

University of Pisa, Italyらのグループは、潰瘍性大腸炎における新しいバイオマーカーについて報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2021.654319/full/

潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: UC)は、自己免疫疾患であり、大腸上皮細胞に炎症が発生し、出血、下痢、腹痛が起こります。 腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor: TNF)の発現が潰瘍性大腸炎では上昇しており、 大腸粘膜に炎症を起こし、大腸上皮細胞にダメージを与えています。このようなことから、抗TNF抗体, infliximab (IFX) や adalimumab (ADA), が潰瘍性大腸炎の治療に使用されています。.

しかしながら、潰瘍性大腸炎の患者の30%は、この抗TNF抗体が効かない(non-responder)ということもあり、治療効果に対して早期に予測ができることが非常に重要になっています。著者らの研究は、抗TNF抗体治療に対する治療効果を予測する上で、IgGのJacalin(JAC)結合性糖鎖が非常に良いマーカーになると述べています。下図において、Aは治療前のJAC-IgGのベースラインを示し(NHS = 健常者, R = レスポンダー, NR = ノンレスポンダー)、Bは抗TNF抗体治療後のそれを示します。
Jacalinは、O型糖鎖を認識するレクチンであり、IgGのこの糖鎖修飾の違いがどのように抗TNF抗体の治療効果に関係しているのか?については不明ですが、治療効果に対するバイオマーカーには成り得るとしています。

多くの自己免疫疾患では、IgGの糖鎖修飾がアガラクトに変化することが知られており、FcγRIIaとの相互作用を介してマクロファージの活性化や、TNFα、IL-6ら炎症性サイトカインの産生を促すことが知られています。また、リューマチでは、ステロイドや抗TNF抗体を投与することで、IgGのシアル酸修飾が増加するという現象も知られています。

トシリズマブ(Tocilizumab)のCOVID-19に対する治療効果は、IL-6>100pg/mL以上、酸素飽和度<90%の患者で劇的に表れる

Medical University of Białystok, Polandらのグループは、トシリズマブ(Tocilizumab)のCOVID-19に対する治療効果を報告しています。
https://www.mdpi.com/2077-0383/10/8/1583/htm

合計825名の患者の内、170名にトシリズマブが投与され、655名にはトシリズマブは勿論のこと他の如何なるサイトカイン受容体に対する阻害剤(mAb)も使用されませんでした。トシリズマブのドーズは、一回の投与で、8mg/kgにて、最大ドーズは800mgとされました。

IL-6のレベルが100pg/mLより高い場合に、トシリズマブの顕著な効果が表れ、hazard ratio [HR]=0.21(95% confidence interval [CI]: 0.08–0.57)となりました。IL-6のレベルが100 pg/mLより高く、且つ酸素飽和度が90%以下あるいは酸素吸入が必要な場合で、更に効果が顕著となり、HR=0.18となりました。付け加えるならば、IL-6の濃度が100pg/mLよりも低い場合には、トシリズマブはほとんど効かないという結果でもあります。
しかし、トシリズマブがどのような状態の時に、如何なるドーズが最適なのか?という知見が得られたことは非常に素晴らしいと思われます。

N501Y変異を持つSARS-CoV-2 S-タンパク質とACE2の結合構造について

University of British Columbiaらのグループは、Cryo電顕を用いて、N501Y変異を持つSARS-CoV-2 S-タンパク質とACE2の結合構造を研究しています。
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3001237

ACE2とSARS-Cov-2 N501Y変異との結合構造は、オーバーオールに見て、N501Y変異のないそれと同じです。しかしながら、局所的な構造変化が起こっており、ACE2のY41とK353の間に存在する空隙にY501の芳香環が挟み込まれ、垂直π–π 相互作用が存在するとしています。これがN501Y変異で感染力が上がっている原因と考えられます。

同じような結論は、他の研究者からも報告があり、既に下記の記事をブログに上げていました。

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