COVID-19の重症化でα2-6-シアル化が増加する

Department of Chemistry, University of Alberta, Edmonton, Alberta, Canadaらのグループは、COVID-19の重症化でα2-6Siaの発現が昂進すると報告しています.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35702159/

インフルエンザでは、重症化すると、ハイマンノースと自然免疫レクチンであるMBL2の発現が昂進することが分かっています。また、SARS-CoV-2においては、抗体の糖鎖修飾の変化が重症度のマーカーとなりうるという研究例があります。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗体の糖鎖修飾が重症患者で変化し、フコシル化とシアル化が低下し、抗体の持つエフェクター機能に潜在的な影響を及ぼします。SARS-CoV-2に対するこのような研究では、単一のタンパク質タイプ(IgG)に焦点が当てられており、今日まで、SARS-CoV-2感染に対する血漿中の糖タンパク質に関する網羅的な研究は行われておらず、感染組織における糖鎖修飾の変化に対する分析もありませんでした。

本研究では、COVID-19患者から得られた血漿および剖検サンプルの糖鎖修飾変化を、レクチンマイクロアレイ使用してハイスループット分析しています。この結果、血漿α2,6-シアル化が重症度のマーカーである可能性があることが明らかになりました。このα2,6-シアル化修飾は、IgGを含む血中タンパク質の半減期を延長することが知られています。血漿中では、重度のCOVID-19患者のα2,6-シアル化を受けた補体C5およびC9の割合が有意に昂進していました。これと一致して、COVID-19剖検サンプルにおいても、補体C5およびC9の染色が強くなることが観察されました。

しかし、補体タンパク質のシアル化の機能的重要性は実は良く分かっていません。糖鎖修飾は、血清半減期とタンパク質分解切断に対する耐性の両方を制御する役割を果たし、このカスケードにとって特に重要です。 α2,6-シアル化は半減期を延長し、カスケードからの細胞性損傷を長期化させる可能性があります。もちろん、まだ発見されていない補体生物学に対するα2,6-シアル化の他の効果もあるかも知れません。 α2,6-シアル化および他の糖鎖修飾が補体に及ぼす機能的影響を研究する必要があります。

N-GlcNAcが植物成長促進効果を示す

State Key Laboratory of Food Nutrition and Safety, College of Food Science and Engineering, Tianjin University of Science and Technology, Tianjin, Chinaらのグループは、N-GlcNAcが植物の生長促進効果を示すことを報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35665438/

キチンは、セルロースに次いで、生物界で2番目に豊富な多糖類です。キチンとキトサンは生分解性で無毒であり、土壌と基質としての品質、植物の成長、植物の回復力を改善し、強化された持続可能な作物生産の開発に大きく貢献するものとして、ますます注目を集めています。キチンとその誘導体の添加は、多くの作物の新鮮収量重量を改善することができます。しかし、植物の成長促進、栽培、および農業環境の持続可能性におけるキチン・キトサンの機能に関する知識は限定的であり、収量の増加、植物防除の予測可能な活性化、収穫貯蔵寿命の延長、更には農産物およびそれらの細菌叢に対する肥料中の栄養素の徐放の改善らに対して更なる貢献を制限してしまっています。
N-アセチル-D-グルコサミン(N-GlcNAc)は、地球上で最も豊富な炭素-窒素バイオ化合物であり、節足動物の外骨格、糸状菌の主成分、および細菌の細胞壁であるキチン、キトサン、ペプチドグリカンのポリマーに含まれる誘導体化グルコースモノマーです。

トマトを対象として、N-GlcNAc自体が植物の成長を促進するという仮説の検証実験が行われました。予想通り、N-GlcNAcで処理された植物は、自然土壌でより高い草丈、より大きな全新鮮重量、およびより大きな茎重量を生み出しました。 N-GlcNAcに曝露された植物の草丈の増加は、1.29倍となり、植物の全体の新鮮重量は、1.33倍となりました。

N-GlcNAcに曝露された根圏土壌サンプルには、比較的豊富なProteobacteria、Actinobacteria、Planctomycetesを含む142の固有のOTUが含まれていました。 N-GlcNAcに曝露された植物の根圏土壌サンプルにおけるProteobacteriaとActinobacteriaの相対的な存在量は、コントロールよりもそれぞれ3.89%と45.82%増加していました。

興味深いことに、Bacillus cereusによって産生されたオーキシンインドール-3-酢酸(IAA)は、N-GlcNAc処理で増加し、LB培地で60 mmol/LのN-GlcNAcと共培養すると92.9mg/Lに達しました。 N-GlcNAcがIAA産生を活性化するこの能力は、P. mirabilisおよびP. putidaの菌株に対しては、外因性基質トリプトファンを供給することで増加しました。トリプトファンの添加はまた、B. cereus and S. thermocarboxydusの菌株におけるIAAの蓄積も促進しました。

このようにして、本研究は、フィールドでの植物生育促進根圏細菌の利点と安定性を理解して利用するための新しい方向性を提供し、微生物シグナル伝達分子として重要なキーとなるN-GlcNAcを明らかにしました。N-GlcNAcは、根圏細菌叢の再構成を促し、根圏細菌叢の代謝の変化を誘発し、それによって植物の成長を促進するのです。

小麦の根圏:トリコデルマを用いて病原菌フサリウムを押さえる

School of Bioengineering, Qilu University of Technology, Jinan, Chinaらのグループは、トリコデルマ アトロビリデ HB2011(Trichoderma atroviride HB20111)の種子への接種が小麦の根圏真菌叢に及ぼす影響について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9188553/

フサリウム属による小麦の冠腐病と小麦の眼紋病は、小麦の主要な土壌伝染病です。
生物学的防除剤としてのストレプトマイセス、バチルス、シュードモナス、放線菌、トリコデルマなどは、病原性真菌のコロニー形成を減らし、土壌中で抗生物質と有機化合物を生成し、植物の成長を促進することができます。種子ドレッシングは費用効果の高い方法であり、作物の病気の予防と管理に大規模に適用できる可能性があります。生物的防除剤として、トリコデルマの種子ドレッシングは、植物の真菌性疾患を防除するためにますます注目されています。 トリコデルマによって制御される一般的な病原体には、Bipolaris sorokiniana、F. pseudograminearum、F. oxysporum、R. solani、R. cerealis、および他の多くの植物病原体が含まれます。

トリコデルマ処理における総真菌のqPCRによって測定されたコピー数は、コントロールに比べて47.2%減少しました。AscomycotaとOlpidiomycotaは、コントロールと比較して、トリコデルマ種子ドレッシング後の根圏真菌叢で有意に変化し、その中で、Ascomycetesの含有量は54.2%減少し、Olpidiomycotaは54.8%増加していました。トリコデルマ処理は、フサリウムの相対的な存在量を減少させました。Alternaria spp.の相対的な豊富さは、トリコデルマ処理によって、コントロールと比較して3.26%減少しました。これらの減少は、根圏土壌におけるOlpidiumとBotryotrichumの相対的な存在量の顕著な増加を伴っていました。

これらの結果として、フサリウム冠腐病の場合、トリコデルマ処理により病害指数が64.3%減少し、トリコデルマの種子ドレッシングで処理された小麦の収量は、コントロールと比較して、7.7%増加しました。

抗体やレクチンにとって代わる高精度な肝臓がんの診断方法:ターゲット分子の鋳型を使う

State Key Laboratory of Analytical Chemistry for Life Science, School of Chemistry and Chemical Engineering, Nanjing University, Nanjing, Chinaのグループは、AFP-L3をマーカーとして使用し、AFP-L3を鋳型として作られたプローブ(MIP)を用いた肝臓がんの診断方法について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9020343/

triMIP-PISAと呼ばれる新しい戦略は、糖タンパク質疾患バイオマーカーの糖鎖修飾の変化を検出することにより、より正確な疾患診断を行う技術として開発されました。この方法は、モノクローナル抗体の特性に近い優れたタンパク質認識特性、およびレクチンよりも優れた優れた単糖認識特性を組み合わせています。

この方法は、3つの異なるタイプの鋳型分子プローブを用いた糖タンパク質バイオマーカーの認識とプラズモニック検出を統合しています。
N末端エピトープインプリント基板を使用して臨床サンプルから標的糖タンパク質を特異的に抽出し、次に捕捉された標的分子をラマンレポーター1でカプセル化されたC末端エピトープインプリントナノタグで標識し、糖タンパク質のフコース化糖鎖をレポーター1とは異なる特徴的なラマンピークを持つラマンレポーター2でカプセル化されたフコース(Fuc)インプリントナノタグで標識します。このようにして基板上に形成されたサンドイッチ様免疫複合体を、プラズモニック検出します。

本研究では、この方法を、AFP-L3をマーカーとして使用するHCC診断に適用しています。レポーター1を含むナノタグによって生成されたラマン信号は総AFP量を表し、レポーター2を含むナノタグによって生成されたラマン信号はAFPのフコース化糖鎖(L3とも呼ばれる)の量を示します。このようにして、ヒト血清中のAFPの総量(AFP-L3/AFP)に対するフコース化糖鎖を持つAFPの相対的な発現レベルは、HCC患者の信頼できる特異的な指標をとなります。 AFP N末端エピトープインプリント基板のKd値は、LCAレクチンよりもはるかに小さい10 -9Mレベルに達しています。

母乳中のシアル酸修飾を受けたミルクオリゴ糖は、急性栄養失調症のリスクが2倍高い

Nutrition and Clinical Services Division, International Centre for Diarrhoeal Disease Research, Bangladesh, Mohakhali, Dhaka, Bangladeshらのグループは、母親の母乳に含まれるシアル酸修飾を受けたヒトミルクオリゴ糖(HMO)の相対量が多いと、幼児の栄養状態に悪影響を与える可能性があると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9177541/

ヒトミルクオリゴ糖は乳児が消化できず、そのまま大腸に到達します。ヒトミルクオリゴ糖は、ビフィズス菌や一部のラクトバチルス菌など、腸内細菌叢の幾つかの有益な細菌グループの発達をサポートし、乳児の腸内での善玉菌の定着、成長、および最終的なコロニー形成の為の代謝産物を提供することによってプレバイオティクスの役割を果たします。ヒトミルクオリゴ糖は、健康な腸内細菌叢を助けることに加えて、脳の発達、有害な病原菌のおとりとしての役割、病気や感染の回避など、乳児に多くのメリットをもたらします。

ヒトミルクオリゴ糖は、分泌型と非分泌型の母親で異なります。これにより、ヒトミルクオリゴ糖のフコシル化は、ルイスと分泌型の血液型を制御する遺伝子産物の結果です。

この研究では、合計45のヒトミルクオリゴ糖が対象とされ、その内26は重度の急性栄養失調(SAM)乳児の母親からのもので、19は栄養失調でない乳児の母親からのものでした。急性栄養失調乳児の母親のうち、14人が分泌者で、12人が非分泌者でした。

シアル酸修飾を受けたヒトミルクオリゴ糖は、年齢および性別調整モデル(AOR = 2.00、90%CI 1.30、3.06)、年齢、性別、分泌状態調整モデル(AOR = 1.96、90%CI 1.29、2.98)、および年齢と性別を調整したモデルを使用した場合の非分泌型母親の間でも(AOR = 2.86、90%CI 1.07、7.62)、重度の急性栄養失調を発症するリスクが高いことがわかりました。これらの異なる4つの統計モデルはすべて、幼児のシアル酸修飾を受けたヒトミルクオリゴ糖と重度の急性栄養失調とが統計的に有意な相関関係を持つことを示しています。フコース修飾を受けたヒトミルクオリゴ糖は、重度の急性栄養失調を引き起こす可能性は低く、これらの間に有意な関連性は認められませんでした。


model 1: 調整済みオッズ比(aOR)(90%CI)は、年齢と性別で調整
model 2: 調整済みオッズ比(aOR)(90%CI)は、年齢、性別、および分泌型のステータスに合わせて調整
model 3: 分泌型の母親のみ、調整されたオッズ比(aOR)(90%CI)は年齢と性別のために調整
model 4: 非分泌型の母親のみ、調整されたオッズ比(aOR)(90%CI)は年齢と性別のために調整

腫瘍溶解性H-1パルボウイルスの感染には、Galectin-1が介在している

Laboratory of Oncolytic Virus Immuno-Therapeutics, German Cancer Research Centre, Im Neuenheimer Feld 242, 69120 Heidelberg, Germanyらのグループは、腫瘍溶解性H-1パルボウイルスの感染過程において、Galectin-1が重要な役割を果たしていると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9146882/

腫瘍溶解性ウイルスは、正常組織を温存しながら、癌細胞に選択的に感染して破壊します。それらはまた、強力な抗腫瘍免疫応答を刺激し、腫瘍血管系を破壊する可能性もあります。現在、40種類以上の腫瘍溶解性ウイルスが、さまざまな癌の治療法として臨床試験で評価されています。その中のひとつには、プロトパルボウイルス属のパルボウイルス科のメンバーであるH-1ラットプロトパルボウイルス(H-1PV)があります。

H-1PVは、ダイナミンが関与し、エンドサイトーシス小胞で低pHを必要とするクラスリンを介したエンドサイトーシスを介して癌細胞に侵入することがわかりました。ラミニン、特にラミニンγ1鎖を含むものは、H-1PV感染における細胞表面での付着因子として作用することも分かりました。特に、ラミニンのシアル酸修飾は、ウイルスが細胞表面に付着するための優れた接着サイトとなり、Galectin-1は、クラスリンでコーティングされたピットへのウイルス粒子の効率的な内在化を促進することが示されました。
これらの因子が関与した後、H-1PVはクラスリンを介したエンドサイトーシスを介して効果的に細胞に侵入します。

ヒトと共生している腸内細菌が持つ機能がまだ良く解明されていないレクチン

Department of Medicine, Icahn Genomics Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USAらのグループは、ヒトの腸内共生微生物叢における細菌レクチンの解明機能と多様性について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41467-022-29949-3

複数の患者の便サンプルの共生腸内細菌から見つかったひとつの共生細菌エフェクター遺伝子(Cbeg)ファミリーは、レクチンをコードすると予測されるまだ良く解明されていない遺伝子(Cbeg4やCbeg5など)で構成されています。

Cbeg4とCbeg5の予測ドメイン分析により、両方の遺伝子が分泌シグナルペプチド、フィブロネクチン3型ドメイン(Fn; IPR003961)および糖鎖結合モジュールドメイン(CBM、CBM6-CBM35-CBM36_like_2、IPR033803)を含むタンパク質をコードしていることが明らかになりました。 Uniprotデータベースで見つかったCBM6-CBM35-CBM36_like_2 糖鎖結合ドメインを含むと予測される865個のタンパク質のうち、108個の異なるドメインアーキテクチャと2つの機能的に特徴付けられたタンパク質が特定されました。 CBM6-CBM35-CBM36_like_2ドメインを持つふたつの機能的に特徴付けられたタンパク質は酵素であり、レクチンではありませんでした。 ひとつはバチルス菌から分離されたキサンタンリアーゼであり、もうひとつは、キイロタマホコリカビから分離されたゴルジ輸送酵素(ゴルベシン)でした。 SWISS-MODELによるCbeg4およびCbeg5タンパク質配列の分析は、Cbeg4およびCbeg5が単量体タンパク質として存在することを示唆しています。 Cbeg4およびCbeg5のドメインアーキテクチャは、共生バクテロイデス種に固有であり、機能的に特徴付けられた既知のレクチンとは異なっています。

この未知のレクチンが結合する糖鎖は、共通のGalβ1–3GlcNacβ1–2Manα1–3Manモチーフを共有しているようです。 Glyconnectデータベースでは、このN-型糖鎖の下部構造は、末梢血単核細胞(PBMC)から生成されたデータセットで最も頻繁に見られます。これらのことから、Cbeg4およびCbeg5は、白血球関連のN-型糖鎖構造に結合するレクチンであるように見えます。

実際、CD14+単球、CD16+単球、およびcDC2樹状細胞の場合、Cbeg5はIL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、およびTNFαをドーズ依存的に増加させました。 Cbeg5は、CD1c-CD14-CD16-CD11c+骨髄細胞(mCD11c)のサイトカイン産生にも影響を及ぼしました。これらの4つの細胞集団(CD14+単球、CD16+単球、cDC2樹状細胞、およびmCD11c細胞)におけるサイトカインの誘導は、PBSコントロールと比較して100倍を超える割合で顕著な増加を示しています。今日まで、ヒトの共生細菌叢におけるレクチンの役割というのは、接着としての機能、または細菌の代謝機能における糖鎖への結合とその輸送に焦点を合わせてきました。上記のPBMCとの相互作用で例証されたCbeg5の機能分析は、ヒトの共生細菌叢におけるレクチン機能の多様性が粘膜免疫系の調節にまで及ぶ可能性があることを示唆しています。

ヒトの共生細菌叢によってコードされるレクチンは、明らかに生物学的に関連性があり、機能的にも多様でもありますが、まだほとんど研究されていない対象です。これらのレクチンの体系的な調査は、ヒトの共生細菌叢が健康と病気にどのように寄与するかについての私たちの理解を向上させることに繋がると考えられます。

大豆の根粒組織におけるN-型糖鎖修飾を受けた糖タンパク質の根粒組織内空間マッピング

Environmental Molecular Sciences Laboratory, Earth and Biological Sciences Directorate, Pacific Northwest National Laboratory, Richland, WA, USAらのグループは、大豆の根粒組織におけるN-型糖鎖修飾を受けた糖タンパク質の根粒組織内空間マッピングの評価結果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9150855/

糖鎖は根粒形成プロセスと植物と微生物の共生関係における重要なメディエーターですが、タンパク質のN-型糖鎖修飾が窒素固定によって影響を受けるかどうかについての研究例はありません。本研究では、野生型根粒菌に感染した大豆の根粒と、大気中の窒素を効率的に固定できないnifH変異根粒菌に感染した大豆の根粒内におけるN-型糖鎖の分布と存在量プロファイルを比較しています。 nifH変異体は、根に同様に感染して根粒を形成はしますが、窒素を固定することはできません。

N-型糖鎖の大部分はnifH変異体の根粒で全体的に高い存在量を示し、幾つかのN-型糖鎖はWTとnifH-根粒の間で有意差を示さず、WTで多いというN-型糖鎖は存在しませんでした。 特に、Lewisa-エピトープを含むすべてのN-型糖鎖は、nifH変異体の根粒組織で有意に高い存在量を示しました。対照的に、短鎖のN-型糖鎖のレベルは、2種の根粒組織間で差異はありませんでした。

プロテオミクスの解析結果より、9種の糖タンパク質がLewisaの潜在的に主要なキャリアとして特定されました。
同定された9種のタンパク質は次のとおりです。フィコシアニンドメイン含有タンパク質(I1LWP0)、アミドヒドロ-relドメイン含有タンパク質(I1L921)、形成性タンパク質(I1JL51)、ペルオキシダーゼ(I1MP39)、ゲルミン様タンパク質(C7S8D5)、オキシドレダクターゼ活性を持つ未知の銅イオン結合タンパク質(I1MUX7)、マンノシルオリゴ糖グルコシダーゼ活性を持つ未知の酵素(I1K3K7)、および分子機能が不明な2つの未知のタンパク質(I1K380およびC5HU39)。

これらの特定のN-型糖鎖を含む糖タンパク質は、根粒細菌感染時の効率的な生物学的窒素固定またはその下流のシグナルパスに介在している可能性があります。実際、これらの9種の糖タンパク質はすべて、生物学的窒素固定または根の発達に関連する既知または予測された機能を持っており、それらのLewisa型糖鎖修飾がそれらの機能に関与している可能性があります。

血中B型肝炎表面抗原のO-型糖鎖修飾がヌクレオチドアナログを用いた肝炎治療効果の良いマーカーとなる

順天堂大学静岡病院らのグループは、血中のO-型糖鎖修飾を受けたB型肝炎表面抗原(HBsAg)が、従来のイムノアッセイを通じて血清HBVウイルスレベルを評価するために使用でき、特にNA療法を受けている患者におけるウイルス動態の新しい潜在的なバイオマーカーとなる可能性があると報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35641912/

現在、ヌクレオシド類似体(NA)の経口投与は、NAの優れたウイルス学的有効性と安全性のため、慢性B型肝炎患者にとって最も一般的な治療戦略です。 NAの長期投与は、ほとんどの患者でHBV増殖を抑制し、線維化や肝硬変の退行を含む生化学的寛解と組織学的改善をもたらします。ただし、肝内共有結合閉環状DNA(cccDNA)が持続するため、HBV感染を完全に排除することはできません。肝内cccDNA濃度を測定することは、増殖能力のある残留ウイルスを評価するための最も直接的な方法です。ただし、肝生検の必要性やcccDNAを定量化するための標準化された方法の欠如などの問題があります。

HBsAgは、HBV感染の診断のための定性的な血清学的マーカーとして長きにわたり重宝されています。定量的HBsAgアッセイは、血清HBsAgレベルが血清HBV DNAレベルおよび肝内cccDNAレベルと相関しており、予後の重要性を示していることを示しています。ただし、現在利用可能なHBsAgアッセイでは、HBVウイルスと非感染性サブウイルス粒子(SVP)を区別できません。最近、M-HBsAgのPreS2ドメインのO-型糖鎖修飾が、糖鎖ベースのイムノアッセイを通じて、遺伝子型C HBVウイルスの明確な特徴を反映するものとして同定され、O-グリコシル化M-HBsAgを特異的に認識する組換え抗体(抗Glyco-PreS2)が開発されました。

著者らは、血中のO-型糖鎖修飾を受けたHBsAgレベルが、従来のイムノアッセイを通じて血清HBVウイルスレベルを評価でき、特にNA療法を受けている患者において、ウイルス動態の新しい潜在的なバイオマーカーとなる可能性があることを発見しました。

パルミトイルエタノールアミド(PEA)がCOVID-19の優れた補助療法になる可能性がある

Retrovirus Center, Department of Translational Research and New Technologies in Medicine and Surgery, University of Pisa, 56100 Pisa, Italyらのグループは、パルミトイルエタノールアミド(PEA)は、COVID-19の現在の治療法、更にはコロナウイルスと同様な感染増殖経路を持つ新規のRNAウイルスに対する有望な補助療法となるでしょうと報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35632821/

SARS-CoV-2に対する阻害分子の候補の1つに、N-アシルエタノールアミンファミリーのメンバーの1つであるPEAがあります。PEAは、末梢炎症および肥満細胞の脱顆粒を阻害するだけでなく、ラットおよびマウスにおいて神経保護および抗侵害受容効果を発揮することが分かっています。最近、このPEAの抗炎症作用がアナンダミドと同じ経路をたどらないことが発見されました。PEA誘発性の鎮痛および抗炎症活性は、ペルオキシソーム増殖因子受容体アルファ(PPAR-α)の活性化によって媒介され、PPAR-αは、ミトコンドリアおよびペルオキシソーム内のベータ酸化の活性化、およびミクロソーム内のオメガ酸化の同時刺激による脂肪滴の破壊につながるシグナル伝達カスケードを発動します。細菌およびウイルス感染の予防または治療に対して、PEAの有効性も散見されることから、本研究においては、PEAがSARS-CoV-2の感染増殖を阻害するために使用できるかどうかについて検討が行われています。

PEAの細胞毒性ですが、PEAがHuh-7および293T細胞に100μMもの高濃度でアプライされた場合でも、その毒性は検出されませんでした。Huh7細胞を用いたSARS-CoV-2の感染実験において、1μMの濃度のPEAをSARS-CoV-2と同時にインキュベートした場合には、感染72時間後のqRT-PCRで測定にて、SARS-CoV-2ゲノムの量は約64%減少していました。

PEAの効果が、SARS-CoV-2の2つの主要な変異株(デルタおよびオミクロン)に対して評価されました。10および1μMのPEA前処理Huh-7細胞では、デルタ変異株のウイルスゲノムの数が62.4%および51.2%、オミクロン変異株では、43.4%および77.3%減少することが示されました。興味深いことに、PEAに曝露されたSARS-CoV-2デルタおよびオミクロン変異株においては、10μM PEAで、ウイルスゲノムが最大65%近くの減少を示しました。また、PEAを細胞とウイルスの両方に同時にアプライした場合では、1μMで投与されたPEAは、ウイルスゲノムが大幅に減少し、デルタおよびオミクロン変異株で、それぞれ75.3%および72.5%となりました。