Institute of Microbiology, Chinese Academy of Sciences, Beijing, Chinaらのグループは、唐辛子の根圏バクテリアと菌類をアンプリコン(16S, ITS)を使って測定し、フサリウム萎凋病(FWD)が根圏にいかなる影響を及ぼすかについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8444440/
フサリウム萎凋病(FWD)は、フサリウム・オキシスポラムの複合種によってしばしば引き起こされ、この古来からの土壌伝染性疾患は、経済的に重要な植物に広範囲に見られます(例えば、バナナ、スイカ、ナス科植物(トマト、ナス、およびチリペッパー)等などです)。
菌類では、病原性菌類であるDiaporthe、Fusarium、Phomopsis、Plectosphaerella、Stemphylium、Cryptococcus らが、羅漢した根で増えており、
バクテリアでは、良性細菌とされるPseudomonas、Streptomyces、Klebsiella、Enterobacter、Microbacterium、Bacillus、Chitinophaga、Citrobacterらが羅漢した根で顕著に増加していました。
植物-微生物叢のシグナル伝達経路に関与する幾つかの機能遺伝子は、健康な根のエンドスフェアーよりも病気の根の微生物叢に豊富に含まれていました。たとえば、メチル受容性走化性タンパク質(MCP)に関連する遺伝子の相対的な存在量は、健康な植物と比較して、罹患した根のエンドスフェアーの微生物叢で33.2〜218.2%増加していました。MCPの下流にあるヒスチジンキナーゼCHEAおよびプリン結合走化性タンパク質CheWについても、羅漢した根のエンドスフェアーの微生物叢で15.0から40.3%増加していました。
MCPは、特定の化学物質の検出時にCheAヒスチジンキナーゼの活性と細菌の遊泳行動を変化させる運動性細菌の主要な化学受容体です。MCPは、典型的に有益な細菌、例えば、本実験で羅漢した植物で増加したBacillus subtilisやPseudomonas sppでも同定されています。病原体の侵入などのストレス条件下では、植物は、アミノ酸、ヌクレオチド、長鎖の有機酸などの不揮発性の根からの分泌物を積極的に放出したり、揮発性有機化合物のブレンドを積極的に放出することによって、遠くの有益な微生物を引き付けることができるようです。本研究の結果は、羅漢した植物におけるMCP遺伝子の濃縮が、植物が放出したシグナル分子に対するMCP産生細菌の応答に関連している可能性があることを示唆しています。これらの細菌は、MCPを使用して細胞外マトリックス内のこれら特定シグナル分子の濃度を検出し、その濃度勾配に従って、植物への細菌の方向性のある誘導と蓄積を可能にしているのでしょう。更なる検証が必要です。
本研究は、宿主植物の「外部ストレス下での子孫の生存と成長を最大化するために微生物パートナーを積極的に関与させるというCry for Help戦略」における細菌群の重要な役割に関する証拠を提供するものです。