根圏マーカーという視点で植物の根と根圏細菌叢の関係をとらえる

植物の根の周辺には根圏細菌が共生しており、その多様で複雑な細菌の集団を根圏細菌叢と呼んでいます。この根と根圏細菌叢の共生の関係は、しばしば動物の腸と腸内細菌の関係に例えられます。しかし、生物学的に見て、植物にはもちろん腸という器官は存在しません。根と根圏細菌と土壌を総体としてとらえた場合に、これが腸という器官に対応すると考えると良いのではないでしょうか。

ヒトが健康であるか無いかを判断する場合に、各種の臓器特異的かつ疾患特異的なバイオマーカーが健康診断や病理診断で使用されます。
この考え方をそのまま植物の根と根圏細菌に当てはめると、植物の腸の健康度合いを示すマーカー、即ち根圏マーカーなるものが存在し、それをモニタリングしてあげれば、新たな植物の土壌監視システムが構築できるのではないでしょうか?

即ち、土壌診断で用いられる従来の指標、pHや水分量と言った化学的指標、土壌密度と言った物理的指標に加えて、生物学的な指標である根圏マーカーを加えるのです。

遺伝子解析技術の進歩によって、最近では、土壌から根圏細菌を分離培養しなくても、細菌叢の構成を解析できるようになっています。個々の細菌間の相互作用についても、菌根菌を助けるヘルパー細菌といった形で理解が進んできています。しかし、ブログ管理人は、このような複雑系を還元的な手法によって理解することには限界があり、マクロな視点から見て同じような特性を示す細菌叢の構成は唯一無二のものではなく、多様な細菌構成が有り得ると考えています。

それ故、植物の腸の健康状態を的確に表すマクロな視点からみた根圏マーカーを見つけだし、それをコントロールする方法を見出すことが最も優れた植物の管理方法に成り得ると考えるのです。