COVID-19の確認された外来患者の場合には、mRNAワクチンの接種は一回で十分のようだ

Northwestern University Feinberg School of Medicine, USAらのグループは、以前にSARS-CoV-2に感染していた人と、していない人の間で、mRNAワクチンの1回或いは2回接種後のIgG中和活性に如何なる違いが生じているかについて報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8276631/ 次の三つのグループについて比較しています: (1)COVID-19群: COVID-19の確認された外来患者で回復した人達、 (2)血清陽性群: SARS-CoV-2のRBDに対して血清陽性ではあるが、COVID-19に対する急性ウイルス診断テストはない人達、 (3)血清陰性群: ワクチン接種前の以前のSARS-CoV-2感染に対して血清陰性の人達。 COVID-19群は、中和活性中央値%は、血清陽性群に比べて有意に高い(22.2 vs. 4.4, p < 0.001)。 COVID-19群は、ワクチン接種一回で、血清陽性群に比べて顕著に中和活性中央値%が高い(99.9 vs. 56 […]

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海藻から抽出される多糖類のSARS-CoV-2の感染阻害効果について

Marine Biotechnology Research Center, Koreaらのグループは、海藻から抽出した多糖類のSARS-CoV-2の感染阻害効果と細胞毒性について報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8071526/ 海藻類は、非常に優れた生薬ソースであり、多糖類、食物繊維、アミノ酸、脂肪酸、天然色素、フタロタンニン、ビタミン、ミネラルなどが抽出できます。これらの成分は、非常に多岐にわたる薬理効果を持ち、抗腫瘍活性、酸化防止、抗細菌・ウイルス活性、抗凝固活性、免疫活性効果などが知られています。 次の多糖類について、SARS-CoV-2の感染阻害効果と細胞毒性が評価されました: ワカメ、 ミウマコンブ、 ヒジキ、 アカモク、 アワビ内蔵、 ミル、 アサクサノリ、そして フコイダン。 細胞毒性は、HEK293/ACE2 細胞を用いて評価され、各々の多糖類は、1 ng/mL ~ 1 mg/mL (1/10希釈系列) の濃度にてアプライされ、96時間インキュベートされました。ほとんどの多糖類は、シビアな細胞毒 […]

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レンズ豆レクチンがSARS-CoV-2変異株に対して広範な抗ウイルス活性を示す

National Institutes for Food and Drug Control (NIFDC), Beijing, China, らのグループは、レンズ豆レクチンが、SARS-CoV-2の変異株に対しても有望な抗ウイルス活性を持っていると報告しています。 https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/22221751.2021.1957720 Huh7細胞とあらかじめレクチンで前処理したSARS-CoV-2の疑似ウイルスを用いてレクチンの中和活性を評価しました。WGA、lentil lectin、PHA-L、PHA-E らがSARS-CoV-2疑似ウイルスに対して非常に優れた抗ウイルス活性を示し、そのIC50は 8.5 μg/mL から 22.0 μg/mLの範囲でありました。 レクチンによる血球凝集と細胞毒性は、レクチンの応用においては常に課題となります。 PHA-L と PHA-E は、血液凝集を 3.91 μg/mLで示し、WGA は7.81 μg/mLでした。レンズ豆レクチンは、最も弱い血球凝集を示し、その値は高濃度の 1 […]

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COVID-19で高齢者が重症化するのは、T-細胞減少症が大きな原因だが、それは短くなったテロメアに原因がある

University of Washington, Seattle, USAらのグループは、年齢とともに短くなるT-細胞のテロメア長が、COVID-19の重症化に影響している可能性を指摘しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8282112/ 一時的なリンパ球減少症は、急性呼吸器不全の感染症では一般的に見られます。急激で長引くCOVID-19のリンパ球減少症は、しかしながら、独特でT-細胞数の大幅な減少を見せます。このT-細胞減少症についてはまだその全体像が良く分かって居ないのですが、COVID-19でのT-細胞数の減少は、T-細胞の急速で大掛かりなクローン性増殖を必要とし、それはテロメア長(TL)に依存した事柄なのです。骨髄性細胞のテロメア長(HCTL)は、年齢とともに短くなります。その為、高齢者によっては、COVID-19のリンパ球減少症を補い、且つ復活させるに必要なT-細胞のクローン性増殖が行えない可能性が多分にあります。 急性な感染症がない場合には、T-細胞の抗体はゆっくりとしており、ナイーブT-細胞の半生は5年、 […]

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COVID-19回復期患者から選別された最も優れたSARS-CoV-2に対する中和抗体とは

Technische Universität Braunschweig, Institut für Biochemie, Biotechnologie und Bioinformatik, Abteilung Biotechnologie, Germanyらのグループは、COVID-19回復期患者の末梢血単核細胞(PBMC)から抗体ファージディスプレイ法を用いて、SARS-CoV-2に対する中和抗体を開発した結果について報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8260561/ 抗体ファージディスプレイ法は、今日ターゲット疾患に対する治療用抗体の開発におけるin vitroな技術として広く使用されています。著者らは、6人のCOVID-19回復期患者から得た免疫ファージディスプレイを使用し、SARS-CoV-2 RBDに結合する抗体を選別することによってSARS-CoV-2に対する阻害・中和抗体を開発しました。 30 種類の抗体を、IgGとしての特性評価を行うために、細胞変性効果(CPE)ベースの中和スクリーニングアッセイ […]

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表皮ブドウ球菌の角質細胞への結合は、ブドウ球菌が持つAapのL-型レクチンドメインの働きによる

University of Nebraska Medical Centergrid.266813.8, Omaha, Nebraska, USAらのグループは、表皮ブドウ球菌の角質細胞への接着メカニズムについて報告しています。 https://journals.asm.org/doi/10.1128/mBio.02908-20 黄色ブドウ球菌は、皮膚感染症における世界的に最も危険とされるブドウ球菌です。黄色ブドウ球菌は、稀に健常者の皮膚からも検出されることがあります。この事は、表皮ブドウ球菌や他の皮膚に常在している細菌が黄色ブドウ球菌の繁殖を阻害しているということを示唆しています。 表皮ブドウ球菌は、その細胞膜上に、完全長のaccumulation-associated protein (Aap) を発現させており、そのAapが角質細胞表面に発現している糖鎖に結合していることが分かりました。Aap は、AドメインとBドメインという二つの領域からなり、Aドメインは L-型レクチンのドメインと繰り返し領域からなります。Aドメインを開始や結合は、レクチンのサブドメインに依存するのですが、それ […]

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本日は、Mx Homepageの一周年記念日です

本日は、Mx Homepageの一周年記念日です。このhomapageは、2020年7月19日にアップロードされました。日頃のご愛顧に深く感謝申し上げますとともに、今後とも御引き立てのほど宜しくお願い申し上げます。 本ブログページでは、新型コロナウイルスの感染機構やその重症化のメカニズムを中心に、特に糖鎖とレクチンをキーワードとして、これらに関する情報を発信しています。 下記は、カメノテからレクチンを抽出しようとしている時の一場面です。 ちなみに、先ごろ管理人は新型コロナウイルス・ワクチンの2回の接種を終えました。感謝申し上げます。

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ACE2-IgG4 Fc融合タンパク質を釣り餌として鼻腔に発現させるAAVベクターを用いたSARS-CoV-2の感染阻害遺伝子治療

University of Pennsylvania, Philadelphia, USAのグループは、COVID-19を感染阻害する為に、AAVベクターに乗せたACE2-IgG4 Fc融合タンパク質を釣り餌として鼻腔内にスプレーするという遺伝子治療を提案しています。 https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1009544 SARS-CoV-2の幅広い変異に対して1,000倍アフィニティーを改善したACE2タンパク質を開発し、それをIgG4 Fcと融合することでSARS-CoV-2に対する釣り餌タンパク質としました。最も優れたSARS-CoV-2に対する釣り餌となる融合タンパク質を CDY14-Fc と名付けました。このアフィニティー・マチュレーションは、酵母ディスプレイによる (>108にも上る) ACE2 変異体フォーマットを用いて実現されました。 CDY14-Fc がSARS-CoV-2の各種変異株(B.1.1.7/アルファー変異株、417N/484K/501Y from B1 […]

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SARS-CoV-2のoligo-mannoseとS2のHR1ドメインを両睨みする二価タンパク質でSARS-CoV-2の感染を抑える

Hanghai Institute of Infectious Disease and Biosecurity, Fudan University, Shanghai, Chinaらのグループは、SARS-CoV-2の感染を抑える為に、SARS-CoV-2 Spikeタンパク質のoligo mannoseとS2サブユニットにあるHR1ドメインを両睨みする二価タンパク質を開発しました。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8264481/ 宿主細胞に感染する為に、 SARS-CoV-2 はSpikeタンパク質のS1サブユニットに存在するRBDを介して宿主細胞表面のACE2と結合します。その後、プロテアーゼによる切断を受けて、SpikeのS2サブユニットの構造変化が起こり、HR1 と HR2ドメインの間にsix-helix bundle(6-HB)が形成され、膜融合に向けてウイルスと宿主細胞を橋渡しします。それ故、SARS-CoV-2の膜融合と侵入を阻害する為には、S1、S2両方のサブユニットが重要なターゲットとなり得ます。S2サブユニ […]

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NiclosamideのSARS-CoV-2感染阻害:SARS-CoV-2のエンドサイトーシスを利用した感染経路の阻害

National Centre for Biological Sciences (TIFR), Bengaluru, Indiaらのグループは、SARS-CoV-2 感染におけるエンドサイトーシスを利用した感染経路の重要性について述べています。 https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1009706 ウイルス感染におけるキーとなるステップは、ウイルス遺伝子の宿主細胞の細胞質内への放出にあります。これを行うために、ウイルスは細胞膜上の特定の受容体に結合し、引き続いて直接的に細胞膜と融合、あるいはまたエンドサイトーシスによる取り込みに引き続いて細胞膜融合を行います。この両方の細胞感染ルートは、SARS-CoV-2 の感染において起きているようであり、宿主細胞膜上の受容体やプロテアーゼの可用性に依存しています。Angiotensin converting enzyme 2 (ACE2) がSARS-CoV-2の良く知られた受容体でありますが、他の受容体(C-型レクチンなど)や共受容体(ヘパ […]

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