表皮ブドウ球菌の角質細胞への結合は、ブドウ球菌が持つAapのL-型レクチンドメインの働きによる

University of Nebraska Medical Centergrid.266813.8, Omaha, Nebraska, USAらのグループは、表皮ブドウ球菌の角質細胞への接着メカニズムについて報告しています。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/mBio.02908-20

黄色ブドウ球菌は、皮膚感染症における世界的に最も危険とされるブドウ球菌です。黄色ブドウ球菌は、稀に健常者の皮膚からも検出されることがあります。この事は、表皮ブドウ球菌や他の皮膚に常在している細菌が黄色ブドウ球菌の繁殖を阻害しているということを示唆しています。

表皮ブドウ球菌は、その細胞膜上に、完全長のaccumulation-associated protein (Aap) を発現させており、そのAapが角質細胞表面に発現している糖鎖に結合していることが分かりました。Aap は、AドメインとBドメインという二つの領域からなり、Aドメインは L-型レクチンのドメインと繰り返し領域からなります。Aドメインを開始や結合は、レクチンのサブドメインに依存するのですが、それだけでなく、Aドメインにある繰り返し構造やBドメインの影響も受けます。

Aapの糖鎖結合特異性を各種グリコシダーゼを用いて糖鎖構造を変化させることによって評価しています。その結果、相互の影響も受けるようですが、シアル酸、フコース、ガラクトース、それぞれの修飾構造に結合特異性を持ち、GlcNAcやマンノースには結合特異性を持たないことが分かりました。

黄色ブドウ球菌もAap相似構造を持ち、表皮ブドウ球菌と同じような角質細胞に対する結合メカニズムが働いているものと考えられます。これらのことから、通常は、表皮ブドウ球菌が黄色ブドウ球菌の角質表面糖鎖への結合を打ち負かしているという様子が推察されました。