樹状細胞(DC)は免役反応の最前線にいます。
ウイルス等の病原体が侵入すると、DCに発現しているトール様受容体(TLR)、C-型レクチン受容体(CLR)らが、病原体特有の分子構造を認識し、免疫反応の引き金を引きます。
樹状細胞のCLRとしては、DCIR/CD367/CLEC4A, DECTIN1/CD369/CLEC7A, DECTIN2/CLEC6A, DNGR1/CD370/CLEC9A, MMR/CD206, DEC205/CD205, DC-SIGN/CD209, langerin/CD207, BDCA2/CD303/CLEC4Cらが知られています。
これらレクチンの機能については、まだまだ不明点が多いのですが、例えば、
DCIRは、high mannose/fucose系の糖鎖に結合し、IL12やTNFαの分泌に抑制的に働き、DECTIN1は、β-1,3-glucansを認識し、逆にそれら炎症性サイトカインの分泌を促します。
Univ. Grenoble Alpesのグループは、慢性化したHBVにおいて、各種CLRの発現がどのように変化しているかについて、Flow cytometryを用いて行われた実験結果を元に考察を加えています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cti2.1208
DCには、CD1c/BDCA1 (cDC2s), CD141/BDCA3 (cDC1s), plasmacytoid DCs (pDCs)という三つのサブクラスが存在します。
血中cDC2s:DECTIN1, MMRが減少
肝臓内cDC2s:DCIR, MMRが減少
血中cDC1s:DECTIN1, CLEC9Aが減少、FcɣRIIAが若干増加、
肝臓内cDC1s:DCIR, CLEC9A, Fcɣ受容体, MMRが減少、DECTIN1が若干増加
血中pCDs:ほとんど変化はない
肝臓内pCDs:DCIRが増加、Fcε受容体が若干増加
というような変化が起こっています。
非常に変化は複雑ですが、HBVに慢性的に感染することで、DCのCLRの発現量に変化が起こっているという現象は注目に値すると思われます。
全般的には、CLRの発現が減少しているようであり、それによって、HBVが免疫系の攻撃から逃れやすくなっているのではないでしょうか?