アーカイブ: 2020年8月2日

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染能に糖鎖はどう絡むのか?

新型コロナウイルスの第二波が襲ってきています。昨日は東京の新規感染者数は472人に達したとのこと。大阪=195人、愛知=181人、福岡=121人、大都市は何処も100人越えです。

新型コロナウイルスに関する研究進展の速さと出版される論文の急増には驚くばかりです。Pubmedにて、COVID-19をキーワードとして検索しますと、今日現在で37,700件を超える論文が既に出版されています。新型コロナウイルス(SRAS-CoV-2)がヒトに感染する場合に、その感染開始のきっかけとなる細胞の受容体はACE2(Angiotensin Converting Enzyme 2)である、という事が定説になっています。例えば、下記の論文が参考になります。因みに、SARS-CoVもACE2が感染受容体であり、MERS-CoVでは、DPP4;CD26が感染受容体と考えられています。

 

しかし、ACE2以外に、ANPEP(Alanyl Aminopeptidase), DPP4(Dipeptidyl Peptidase-4)も感染受容体になりうるという報告があります。

 

膜タンパク質が糖鎖修飾を受けていることにはほとんど例外がなく、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(Sタンパク質)も、感染受容体となるACE2らも糖鎖修飾を強く受けています。
例えば、下記の論文では、Sタンパク質について、Oligomannoseから、Hybrid型、Complex型まで多様なN型糖鎖構造が発現しており、O型糖鎖についても、Core1, Core2タイプの糖鎖が発現していることが報告されています。

 

一方、ACE2についても、その糖鎖修飾の概要が下記の論文に記載されており、Sタンパク質の糖鎖修飾同様に、非常に多様な糖鎖が同様に発現していることが分かります。

 

このようにして、Sタンパク質にも感染受容体側にも多様な糖鎖が発現している以上、糖鎖を介在した感染開始も必ずやあるはずです。下記の論文では、Sタンパク質が、受容体のCタイプレクチンであるDC-SIGNやMGLと強く相互作用し、シアル酸認識レクチンであるSiglec-3, -9, -10とも強く相互作用することが報告されています。

 

従って、新型コロナウイルスの感染は、ACE2一辺倒ではなく、ペプチダーゼである(ANPEP, DPP4)と、Cタイプレクチンである(DC-SIGN, MGL)、それにSiglecも関係して複雑な感染経路が存在している可能性があるということです。しかも、これらの受容体は、免疫細胞も含め、体内の組織に広く発現しています。

 

更に興味深いのは、新型コロナウイルスの重症化にABO血液型が関係しているという報告です。
この論文は、A型のヒトはO型のヒトに比べて、2.2倍ほど重症化しやすいということを述べています。ということは、抗A型抗体が、SARS-CoV-2の感染抑制に多少とも関係しているという可能性を示唆します。抗A型抗体は、下記のA型抗原(GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ1-4GlcNAc)に対する抗体ですので、この種の糖鎖構造が何らかの形で感染に関わっていることは間違いが無いと考えられます。
ABO.pngのサムネイル画像

 

更に不思議なのが、ファクターXの存在です。なぜ、アジアオセアニアでは、死亡率が欧米よりけた違いに小さいのか?

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