モノクロナール抗体の糖鎖修飾構造に関するリファレンス・スタンダード:NISTmAb

Global Biologics, Science Division, United States Pharmacopeia, Rockville, MD 20852, USA から詳細な糖鎖修飾情報が付加されたモノクロナール抗体のリファレンス・スタンダード(RS)が公開されています。 https://www.mdpi.com/1424-8247/15/3/315 詳細な糖鎖修飾情報を備えたモノクローナル抗体リファレンス・スタンダードが、NIST Reference Material 8671、NISTmAbとして、米国国立標準技術研究所から入手できます。 米国薬局方(USP)は、糖鎖修飾の特性評価手順が正確な結果を提供するかどうかを示すためのコントロール材料として使用できる3つのモノクローナル抗体リファレンス・スタンダード(USP mAb 001 RS、USP mAb 002 RS、およびUSP mAb 003 RS)を開発しました。 USP mAbリファレンス・スタンダードは、同じIgG type 1サブクラスの異なるタンパク質ですが、広範囲の糖鎖修飾構造を調べるのに十分な根拠を提 […]

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免疫チェックポイント分子PD-L1の脱糖鎖修飾を抑えることで上咽頭癌に対するT-細胞免疫活性を高めることができる

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Nanfang Hospital, Southern Medical University, Guangzhou, Chinaらのグループは、TGF-β1経路を標的とすることで、上咽頭癌におけるPD-1/PD-L1免疫チェックポイントの阻害を増強するというアプローチを提案しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35311117/ PD-L1(programmed death ligand-1)は、腫瘍細胞に発現する膜貫通型糖タンパク質であり、PD-L1はT-細胞の活性を阻害し、T-細胞上の受容体PD-1に結合することで免疫回避を促進することはよく知られています。 TGF-βは多機能なサイトカインであり、癌を含む生理学的および病理学的プロセスの両方で重要な役割を果たします。 TGF-βの異常産生は、腫瘍の進行、血管新生、転移、および免疫回避に強く関与しています。TGF-βは、CD8+ T-細胞、NK細胞、マクロファージなどのエフェクター細胞の抗腫瘍 […]

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生物肥料 Biofertilizer(バチルス・サブティリス、シュードモナス、トリコデルマ、アスペルギウス、ペニシリウム)の効果を実証する

Department of Botany and Microbiology, Faculty of Science, Alexandria University, Alexandria 21511, Egyptらのグループは、生物肥料(Biofertilizer)を接種した茄の塩害耐性の改善について報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8912713/ 化学肥料は、従来の農業システムにおいて、高い生産性を達成するために広く使用されてきました。しかしながら、化学肥料が閾値レベルを超えると、それらは土壌の酸性化を加速し、地下水を汚染し、環境全体に害を及ぼしてしまいます。生物肥料は、リン酸塩の可溶化、窒素固定、アンモニア、酵素、シデロホアの生成、および様々な植物ホルモンの分泌を促し、効果的で環境に優しい代替手段として注目されています。更に、生物肥料の接種は、多種多様な植物病原性物質に対して生物的防除活性も示します。 本研究では、茄(Solanum melongena L.)の塩害ストレスに対する選択された生物肥料(植物成長 […]

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ピロリ菌の根絶前後での胃粘膜の糖鎖修飾の変化:レクチンマイクロアレイを用いた研究

大分大医学部らのグループは、ピロリ菌根絶前後での胃粘膜の糖鎖修飾の変化をレクチンマイクロアレイを用いて評価した結果を報告しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35238778/ 胃前庭部のJacalinおよびMPAのシグナルは、ピロリ菌無感染群の胃粘膜よりも、ピロリ菌感染群で有意に低く、ピロリ菌の根絶から1年後には、そのシグナルレベルは、無感染で見られる値に戻っていました。 胃のLTL、SNA、SSA、およびTJA-Iシグナルは、ピロリ菌感染群で有意に増加し、ピロリ菌の根絶後1年で無感染で見られたレベルに戻りました。 MPAとJacalinは85%の相同性があり、これらのレクチンは、ヒトの癌腫の85%以上で発現するTF抗原に対して特に高い特異性を持っています。 LTLはLewisx、LewisyおよびH-抗原Type IIに結合し、膀胱癌細胞株における癌進行のマーカーであると報告されています。 SNAは、結腸直腸癌、膵臓癌、および肝細胞癌らの診断、転移、および予後のマーカーであると報告されています。 SNAは、肺炎の診断マーカーおよび糖尿病性腎症 […]

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バチルス・サブティリスは、どのようにして乾いた土壌の中で効果的に根圏にマイグレートできるのだろうか?

Institute of Plant Protection, Tianjin Academy of Agricultural Sciences, Tianjin, Chinaらのグループは、バチルス・サブティリスの根圏におけるコロニー形成におけるスクロースを起点と知る新たなシグナルカスケードの存在について報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8397739/ バチルス・サブティリスは優れた善玉菌であり、多くの土壌伝染性植物病原菌を抑制することができることが知られています。 しかし、そのような有益な細菌はどのようにして植物の宿主からの信号を認識し、根圏にコロニーを形成し、最終的に植物との親密な関係を構築していくのでしょうか? この問題に対する焦点の1つは、植物の根から分泌される栄養素とその根圏細菌への影響であります。根から放出される栄養素の中で、スクロースは根圏に最も豊富に放出されることが知られています。光合成植物は固定炭素輸送および異なる組織間での貯蔵メカニズムとして主にスクロースを使用するため、スクロースは植物にと […]

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レクチン経路の捕体系路の活性化が突発性膜性腎症(突発性膜性糸球体腎炎)に関係している

膜性腎症(MN)には、特発性膜性腎症(iMN)と非定型膜性腎症(aMN)の2種類があります。Department of Nephrology, Peking University People’s Hospital, Beijing, Chinaのグループは、マンノース結合レクチン(MBL)経路の活性化がiMNの発症に重要な役割を果たしていると報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8920381/ 補体経路には、古典的経路、マンノース結合レクチン(MBL)経路、および代替経路を含む3つの主要な経路があります。 C4dは、古典的およびマンノース結合レクチン補体経路の両方で生成されます。 C1qは、古典的補体活性化の主要な前駆体です。 C4dとC1qの両方の存在は、古典的経路の活性化を示していますが、 C1qなしのC4dの存在は、MBL経路とより一致しており、 C4dとC1qは、どちらも代替補体活性化には関係しません。 突発性膜性腎症の病変は、少量のIgG1およびIgG3、そして多量のIgG4の沈着を特徴としています。I […]

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ラクトバチルス・クリスパタス KT-11のS-layerタンパク質がロタウイルスの感染を阻害する:シアル酸が鍵を握る

信州大学らのグループは、ラクトバチルス・クリスパタス KT-11のS-layerタンパク質が、ロタウイルスの感染を阻害することが出来、ウイルス感染開始にシアル酸が関係している可能性を指摘しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8902352/ ラクトバチルス属を含む乳酸菌は、チーズ、ヨーグルト、発酵乳などの発酵乳製品の生産に重要な役割を果たしています。近年、乳酸菌のS層タンパク質(SLP)の抗ウイルス成分としての作用に注目が集まっています。 Caco-2細胞におけるロタウイルスDS-1株の感染に対するラクトバチルス・クリスパタス KT-11 SLPの効果を下図に示します。 DS-1感染が、ドーズ依存的にKT-11 SLPによる感染前処理によって、有意に抑制されていることが分かります。しかし、逆に、KT-11 SLPは、100μg/ mLでの感染前処理後でも、ロタウイルスWa株の感染は全く抑制できませんでした。 ロタウイルスの細胞への侵入は複雑な多段階プロセスであり、ロタウイルス表面タンパク質のさまざまなドメインが、接着と侵 […]

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小麦の根圏:長期間にわたる施肥で、根圏真菌叢がどのように変化するか

State Key Laboratory of Soil and Sustainable Agriculture, Institute of Soil Science, Chinese Academy of Sciences, Nanjing, Chinaらのグループは、小麦の圃場における長期間の施肥が根圏真菌叢に如何なる変化をもたらしているかについて報告しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35266812/ この論文では、小麦の圃場での長期にわたる5種類の施肥実験(35年以上)から得られた新しい発見が報告されています。NPK肥料のみ、NPKと牛糞混合(NPK+CM)、NPKと豚糞混合(NPK+PM)、NPKと麦わら混合(NPK+WS)、および肥料なしのコントロール間の比較です。 門レベルでは、子嚢菌、担子菌、およびモルティエロ菌が、処理や生息地に関係なく、真菌叢を支配し、得られた全遺伝子配列読取の80%以上を占めていました。興味深いのは、他の処理と比較して、NPK+PM処理において、子嚢菌の相対的な存在量が最も高くなっているということです(根 […]

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トマトの白腐れ病菌(Sclerotim rolfsii)を阻害する根圏真菌について

Laboratoire Biologie et Santé, UFR Biosciences, Université Félix Houphouët-Boigny d’Abidjan (UFHB), Côte d’Ivoireらのグループは、トマトの白腐れ病菌(Sclerotim rolfsii)を阻害する根圏真菌について報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8857420/ S. rolfsiiは、ナス科作物の破壊的な病原体の1つである白腐れ病原菌です。コートジボワールでは、この真菌病原体がトマト(Solanum lycopersicum)の栽培の主要な制約となっており、湿度の高い森林地域では41.01%の作物が失われています。 S. rolfsiiに対する根圏真菌の抗菌作用 153種類の土壌からの真菌分離株を用いたPDA培地上での阻害実験から、S. rolfsiiの増殖を阻害する10種類の真菌が見つかりました。阻害率は27.06から60.59%の範囲でした。主な阻害作用機序(抗菌作用)は、競争と抗生物質であります […]

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ACE2-Fc融合タンパク質がSARS-CoV-2の変異株によらない治療薬となる可能性

SystImmune Inc., 15318 NE 95th St., Redmond, WA, 98052, USAらのグループは、ACE2-Fc融合タンパク質が、SARS-CoV-2変異株の種類に関わらず効果的にウイルスを中和することができる治療薬と成りうると報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8882475/ 興味深いことに、SI-F09と名付けられたACE2-Fc融合タンパク質を使用した疑似ウイルス中和データは、SARS-CoV-2 RBDとACE2の間の結合強度が高いほど、IC 50値が低いことを示しています。言い換えれば、SARS-CoV-2 WTのIC50値が、オミクロンを含むSARS-CoV-2変異株の中で最も高いとなっています(以下に表示)。 現在、健康な患者に対するSI–F019の安全性を評価する第I相臨床試験が実施され(ClinicalTrials.gov識別子:NCT04851444)、次の治験に向けて、結果の分析が行われています。

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