アーカイブ: 2022年3月30日

モノクロナール抗体の糖鎖修飾構造に関するリファレンス・スタンダード:NISTmAb

Global Biologics, Science Division, United States Pharmacopeia, Rockville, MD 20852, USA から詳細な糖鎖修飾情報が付加されたモノクロナール抗体のリファレンス・スタンダード(RS)が公開されています。
https://www.mdpi.com/1424-8247/15/3/315

詳細な糖鎖修飾情報を備えたモノクローナル抗体リファレンス・スタンダードが、NIST Reference Material 8671、NISTmAbとして、米国国立標準技術研究所から入手できます。
米国薬局方(USP)は、糖鎖修飾の特性評価手順が正確な結果を提供するかどうかを示すためのコントロール材料として使用できる3つのモノクローナル抗体リファレンス・スタンダード(USP mAb 001 RS、USP mAb 002 RS、およびUSP mAb 003 RS)を開発しました。
USP mAbリファレンス・スタンダードは、同じIgG type 1サブクラスの異なるタンパク質ですが、広範囲の糖鎖修飾構造を調べるのに十分な根拠を提供します。糖鎖修飾の特性評価は、通常、タンパク質骨格から切り出された糖鎖の解析によって行われます。


糖鎖構造の記号の意味は、例えば下記のようです、
F(6)A2: core fucosylated biantennary、
F(6)A2B: core fucosylated biantennary with bisecting GlcNAc、
M5: five mannose on core GlcNAc、
F(6)A1G(4)1: core fucosylated monoantennary with β1-4 linked Galactose、
A2[6]G(4)1: biantennary with β1-4 linked Galactose attached to α1-6 linked core mannose、
F(6)A2[6]G(4)1: core fucosylated biantennary with β1-4 linked Galactose attached to α1-6 linked core mannose、
F(6)A2[3]G(4)1: core fucosylated biantennary with β1-4 linked Galactose attached to α1-3 linked core mannose、
F(6)A2[6]G(4)1Ga1: fucosylated bianntennary with a β1,4-linked galactose directly attached to the α1,6-linked core mannose, and an α1,3-linked galactose attached to the β1,4-linked galactose
F(6)A2G(4)2: equal to G2F、

免疫チェックポイント分子PD-L1の脱糖鎖修飾を抑えることで上咽頭癌に対するT-細胞免疫活性を高めることができる

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Nanfang Hospital, Southern Medical University, Guangzhou, Chinaらのグループは、TGF-β1経路を標的とすることで、上咽頭癌におけるPD-1/PD-L1免疫チェックポイントの阻害を増強するというアプローチを提案しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35311117/

PD-L1(programmed death ligand-1)は、腫瘍細胞に発現する膜貫通型糖タンパク質であり、PD-L1はT-細胞の活性を阻害し、T-細胞上の受容体PD-1に結合することで免疫回避を促進することはよく知られています。

TGF-βは多機能なサイトカインであり、癌を含む生理学的および病理学的プロセスの両方で重要な役割を果たします。 TGF-βの異常産生は、腫瘍の進行、血管新生、転移、および免疫回避に強く関与しています。TGF-βは、CD8+ T-細胞、NK細胞、マクロファージなどのエフェクター細胞の抗腫瘍活性を抑制する重要な免疫抑制性サイトカインと見なされています。

この研究では、PD-L1が上咽頭癌で強く糖鎖修飾を受けており、TGF-β1がPD-L1のN-型糖鎖修飾に重要な役割を果たしていることが分かりました。TGF-β Type I型受容体阻害剤(SB431542)によるTGF-β1の阻害は、PD-L1自体の発現低下だけでなく、PD-L1のN-型糖鎖修飾の減少も招きました。 PD-L1の糖鎖修飾の減少は、レクチンConAのPD-L1結合能の喪失によって確認されました。

著者らは、PD-L1のN-型糖鎖修飾がc-Jun/STT3Aシグナル伝達経路を介してTGF-β1の影響を受けていることを発見し、TGF-β1経路を標的とすることで、PD-L1の脱糖鎖修飾を抑制しながら、上咽頭癌の免疫チェックポイント阻害を強化することが有望なアプローチになり得るということを示唆しています。

上咽頭癌細胞(5-8F細胞)と Jurkat T-細胞の共培養、STT3A-knockdown細胞(shSTT3A細胞)、T-細胞のSB431542 と tunicamycin (TM) 前処理を絡ませて

生物肥料 Biofertilizer(バチルス・サブティリス、シュードモナス、トリコデルマ、アスペルギウス、ペニシリウム)の効果を実証する

Department of Botany and Microbiology, Faculty of Science, Alexandria University, Alexandria 21511, Egyptらのグループは、生物肥料(Biofertilizer)を接種した茄の塩害耐性の改善について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8912713/

化学肥料は、従来の農業システムにおいて、高い生産性を達成するために広く使用されてきました。しかしながら、化学肥料が閾値レベルを超えると、それらは土壌の酸性化を加速し、地下水を汚染し、環境全体に害を及ぼしてしまいます。生物肥料は、リン酸塩の可溶化、窒素固定、アンモニア、酵素、シデロホアの生成、および様々な植物ホルモンの分泌を促し、効果的で環境に優しい代替手段として注目されています。更に、生物肥料の接種は、多種多様な植物病原性物質に対して生物的防除活性も示します。

本研究では、茄(Solanum melongena L.)の塩害ストレスに対する選択された生物肥料(植物成長促進根圏バクテリアおよび根圏真菌の接種)の接種効果が評価されています。

比較実験条件は次の様でした。
(C): コントロールとして蒸留水で灌漑されたもの、
(I): 生物肥料を接種し、蒸留水で灌漑されたもの、
(S): 200 mM NaClで灌漑されたもの(塩害ストレス条件)、そして
(S + I): 200 mM NaClで灌漑され、生物肥料を接種したもの。
二種類の根圏バクテリア(バチルス・サブティリスシュードモナス)そして、三種類の根圏真菌(トリコデルマ, アスペルギラス, と ペニシリウム)が生物肥料 (biofertilizer)として使用されています。

塩害ストレスは、コントロールと比較して、根の含水量、葉の面積、根の新鮮重量および乾燥重量を有意に減少させましたが(それぞれ59.14、95.87、96.30、および95.66%)、塩害ストレスを受けた茄の土壌への生物肥料の接種は、以下に示すように、葉面積(LA)、総新鮮重量(TFW)、総乾燥重量(TDW)、および総含水量(TWC)に対して有意な増加をもたらしました。

光システム II D2、グルタチオン・レダクターゼ、およびグルタチオンSトランスフェラーゼの遺伝子発現は、塩害ストレスを受けた茄と比較して、生物肥料を接種された塩害ストレス茄で昂進しており、プロテアーゼIおよびプロテアーゼII(病原体の成長を抑制する細胞壁分解酵素)の遺伝子発現も、塩害ストレスを受けた茄に比べて、生物肥料を接種された塩害ストレス茄において昂進していました。逆に、リパーゼの遺伝子発現は、塩害ストレスを受けた茄に比べて、生物肥料を接種された塩害ストレス茄において減少していました。。
これらの変化は、病原菌防御機構に関連する遺伝子が生物肥料が接種された茄で昂進されている事を示唆しています。

ピロリ菌の根絶前後での胃粘膜の糖鎖修飾の変化:レクチンマイクロアレイを用いた研究

大分大医学部らのグループは、ピロリ菌根絶前後での胃粘膜の糖鎖修飾の変化をレクチンマイクロアレイを用いて評価した結果を報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35238778/

胃前庭部のJacalinおよびMPAのシグナルは、ピロリ菌無感染群の胃粘膜よりも、ピロリ菌感染群で有意に低く、ピロリ菌の根絶から1年後には、そのシグナルレベルは、無感染で見られる値に戻っていました。
胃のLTL、SNA、SSA、およびTJA-Iシグナルは、ピロリ菌感染群で有意に増加し、ピロリ菌の根絶後1年で無感染で見られたレベルに戻りました。

MPAとJacalinは85%の相同性があり、これらのレクチンは、ヒトの癌腫の85%以上で発現するTF抗原に対して特に高い特異性を持っています。
LTLはLewisx、LewisyおよびH-抗原Type IIに結合し、膀胱癌細胞株における癌進行のマーカーであると報告されています。
SNAは、結腸直腸癌、膵臓癌、および肝細胞癌らの診断、転移、および予後のマーカーであると報告されています。 SNAは、肺炎の診断マーカーおよび糖尿病性腎症の進行の予測マーカーでもあると報告されています。 SNA、SSA、およびTJA-Iは、α2-6Siaに対する糖鎖結合特異性を持っています。

この研究の結果は、ピロリ菌感染に起因する糖鎖修飾へのレクチン結合のシグナルレベルが、ピロリ菌の根絶の結果として、無感染で見られるレベルに戻ることを示しています。つまり、このデータは、糖鎖修飾が可逆的であることを示しているという点で興味深いものです。

バチルス・サブティリスは、どのようにして乾いた土壌の中で効果的に根圏にマイグレートできるのだろうか?

Institute of Plant Protection, Tianjin Academy of Agricultural Sciences, Tianjin, Chinaらのグループは、バチルス・サブティリスの根圏におけるコロニー形成におけるスクロースを起点と知る新たなシグナルカスケードの存在について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8397739/

バチルス・サブティリスは優れた善玉菌であり、多くの土壌伝染性植物病原菌を抑制することができることが知られています。 しかし、そのような有益な細菌はどのようにして植物の宿主からの信号を認識し、根圏にコロニーを形成し、最終的に植物との親密な関係を構築していくのでしょうか? この問題に対する焦点の1つは、植物の根から分泌される栄養素とその根圏細菌への影響であります。根から放出される栄養素の中で、スクロースは根圏に最も豊富に放出されることが知られています。光合成植物は固定炭素輸送および異なる組織間での貯蔵メカニズムとして主にスクロースを使用するため、スクロースは植物にとって非常に重要です。

下の図において、スクロースが他の幾つかの根の分泌糖(フルクトース、グルコース、マルトース)よりも、トマトの根において、バチルス・サブティリスの強力な根圏コロニー形成を誘導することが明確に示されています。

赤色に蛍光修飾された枯草菌のコロニー形成の違い(Fru: フルクトース, Glc: グルコース, Mal: マルトース, Suc: スクロース)

さらに、スクロースを添加した根圏土壌では、バチルス菌の相対存在量は約10.1%に達しましたが、この比率はスクロースを添加しない場合はわずか約0.1%であり、スクロース刺激によって根圏の天然バチルス菌の存在量が100倍に増加したことを示しています。スクロースによる。バチルス菌の存在量に対する強い正の影響に加えて、シュードモナス菌の比較的低い存在量(0.05%)も、野生型バチルス・サブティリスの接種により2.7%に上昇し、同時にスクロースを添加すると12.5%に更に上昇しました。また、スクロースの添加により、フザリウム・オキシスポルム属菌による土壌伝染病の抑制効率が向上することも示されました。

大きな疑問は、どのようにしてバチルス・サブティリスは、乾いた土壌の中で効果的に根圏にマイグレートできるのだろうか?ということです。

この質問に関して、著者らは、スクロースがシグナル伝達カスケードを活性化して乾いた土壌での運動性を誘発し、バチルス・サブティリスによる効果的な根のコロニー形成をもたらすことを示しました。つまり、スクロースはレバンの生合成を誘起し、レバンはさらに加水分解されてレバノオリゴ糖になり、最終的にバチルス・サブティリスからのサーファクチンの強力な産生を誘発することで、乾いた土壌での運動性を加速するのです。

レクチン経路の捕体系路の活性化が突発性膜性腎症(突発性膜性糸球体腎炎)に関係している

膜性腎症(MN)には、特発性膜性腎症(iMN)と非定型膜性腎症(aMN)の2種類があります。Department of Nephrology, Peking University People’s Hospital, Beijing, Chinaのグループは、マンノース結合レクチン(MBL)経路の活性化がiMNの発症に重要な役割を果たしていると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8920381/

補体経路には、古典的経路、マンノース結合レクチン(MBL)経路、および代替経路を含む3つの主要な経路があります。 C4dは、古典的およびマンノース結合レクチン補体経路の両方で生成されます。 C1qは、古典的補体活性化の主要な前駆体です。
C4dとC1qの両方の存在は、古典的経路の活性化を示していますが、
C1qなしのC4dの存在は、MBL経路とより一致しており、
C4dとC1qは、どちらも代替補体活性化には関係しません。

突発性膜性腎症の病変は、少量のIgG1およびIgG3、そして多量のIgG4の沈着を特徴としています。IgG4は古典的補体経路を活性化しません。代替補体活性化に存在しないC4dは、突発性膜性腎症患者で本質的に100%で検出されます。これらの観察は、MBLによって開始される補体経路が突発性膜性腎症における主要な補体活性化経路である可能性が高いことを示唆しています。一方、細胞増殖、マルチサイト免疫複合体沈着、IgA、IgG、IgM、C3、C1q陽性を含む免染の「フルハウス」を特徴とする非定型膜性腎症は、複雑な補体系の活性化を伴う病態生理学的プロセスが存在していることを示唆しています。

ラクトバチルス・クリスパタス KT-11のS-layerタンパク質がロタウイルスの感染を阻害する:シアル酸が鍵を握る

信州大学らのグループは、ラクトバチルス・クリスパタス KT-11のS-layerタンパク質が、ロタウイルスの感染を阻害することが出来、ウイルス感染開始にシアル酸が関係している可能性を指摘しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8902352/

ラクトバチルス属を含む乳酸菌は、チーズ、ヨーグルト、発酵乳などの発酵乳製品の生産に重要な役割を果たしています。近年、乳酸菌のS層タンパク質(SLP)の抗ウイルス成分としての作用に注目が集まっています。

Caco-2細胞におけるロタウイルスDS-1株の感染に対するラクトバチルス・クリスパタス KT-11 SLPの効果を下図に示します。 DS-1感染が、ドーズ依存的にKT-11 SLPによる感染前処理によって、有意に抑制されていることが分かります。しかし、逆に、KT-11 SLPは、100μg/ mLでの感染前処理後でも、ロタウイルスWa株の感染は全く抑制できませんでした。

ロタウイルスの細胞への侵入は複雑な多段階プロセスであり、ロタウイルス表面タンパク質のさまざまなドメインが、接着と侵入の受容体として機能する細胞表面分子と相互作用します。その中で、末端シアル酸や組織血液型抗原などのいくつかの糖鎖が、標的細胞へのロタウイルスの付着に関与していることが報告されています。上図に示したように、KT-11 SLPは、Caco-2細胞におけるDS-1株の感染をドーズ依存的に有意に阻害しました。ロタウイルス株と宿主細胞との感染初期の相互作用は、VP4遺伝子型に依存しています。 VP4(P型)の分子特性に基づく分類により、DS-1株はP[4]遺伝子型に分類されます。DS-1株を含むP [4]遺伝子型ロタウイルスが、感染にH-type1およびLewis-b抗原を使用していることを示す研究例が増えています。実際、H-type1およびLewis-b抗原はCaco-2細胞で発現しています。この結果は、これらの抗原へのKT-11 SLPの競合的結合によってDS-1感染の可能性が阻害されたことを示唆しています。しかし、予想に反して、同じH抗原とLewis-b抗原を感染に使用してるとして報告された別の優勢なP[8]サブタイプであるWa株の感染は、KT-11 SLPの存在下で全く阻害されませんでした。

最近ですが、DS-1株の感染は、3′-シアリルラクトースと6′-シアリルラクトースによって有意に阻害されたが、Wa株は2′-フコシルラクトースによって阻害された、ということが報告されました。従って、シアル酸を含む何らかの化合物が、DS-1株の感染に深く関与している可能性があります。

小麦の根圏:長期間にわたる施肥で、根圏真菌叢がどのように変化するか

State Key Laboratory of Soil and Sustainable Agriculture, Institute of Soil Science, Chinese Academy of Sciences, Nanjing, Chinaらのグループは、小麦の圃場における長期間の施肥が根圏真菌叢に如何なる変化をもたらしているかについて報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35266812/

この論文では、小麦の圃場での長期にわたる5種類の施肥実験(35年以上)から得られた新しい発見が報告されています。NPK肥料のみ、NPKと牛糞混合(NPK+CM)、NPKと豚糞混合(NPK+PM)、NPKと麦わら混合(NPK+WS)、および肥料なしのコントロール間の比較です。

門レベルでは、子嚢菌、担子菌、およびモルティエロ菌が、処理や生息地に関係なく、真菌叢を支配し、得られた全遺伝子配列読取の80%以上を占めていました。興味深いのは、他の処理と比較して、NPK+PM処理において、子嚢菌の相対的な存在量が最も高くなっているということです(根内圏、根圏土壌、およびバルク土壌でそれぞれ96.9%、87.1%、および91.1%)。

次に、真菌叢のα多様性と物理化学的変数(合計P、合計C、合計N、合計K、P、Ca、Mg、Na、Fe、Mnなど)との相関関係が分析されました。ランダムフォレスト分析により、PとZnは常に、根内圏、根圏土壌、およびバルク土壌におけるα多様性の変化に対する最良の予測因子であることが明らかになりました。特に、根圏のPとα多様性の間、および根圏土壌とバルク土壌のZnとα多様性の間には有意な相関関係がありました。PおよびZn濃度が高いほど、根圏真菌叢のα多様性は低くなります
これは次のように考えることができます。豚糞は牛糞よりもP含有量が高く、豚糞を添加した後の土壌と小麦の根のP含有量は牛糞添加よりも有意に高くなっています。従って、長期の豚の糞尿の施肥は、土壌全体から根が適切で容易にアクセスできるPおよびP様栄養素の供給量が増えることとなり、それによって小麦の真菌叢への依存が減少し、それによっておそらく真菌全体の多様性が減少したものと考えられます。Pの場合と同様に、Znを巡る真菌間の資源と生存の競争を、Znに誘起された根圏真菌叢の多様性の変化に関連付けることは合理的だと考えられます。

トマトの白腐れ病菌(Sclerotim rolfsii)を阻害する根圏真菌について

Laboratoire Biologie et Santé, UFR Biosciences, Université Félix Houphouët-Boigny d’Abidjan (UFHB), Côte d’Ivoireらのグループは、トマトの白腐れ病菌(Sclerotim rolfsii)を阻害する根圏真菌について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8857420/

S. rolfsiiは、ナス科作物の破壊的な病原体の1つである白腐れ病原菌です。コートジボワールでは、この真菌病原体がトマト(Solanum lycopersicum)の栽培の主要な制約となっており、湿度の高い森林地域では41.01%の作物が失われています。

S. rolfsiiに対する根圏真菌の抗菌作用
153種類の土壌からの真菌分離株を用いたPDA培地上での阻害実験から、S. rolfsiiの増殖を阻害する10種類の真菌が見つかりました。阻害率は27.06から60.59%の範囲でした。主な阻害作用機序(抗菌作用)は、競争と抗生物質であります。前者は、抗真菌の急速な成長が病原菌の成長を遅らせるか阻害することによって引き起こされ、後者は、病原体の生物学的活性が阻害されることによって引き起こされます。これらの拮抗菌の分子同定から、10種の分離株は、Talaromyces属から4種類、Trichoderma属から3種類、Penicillium属から2種類、およびClonostachys属から1種類でありました。


10種の抗真菌の中で、Talaromyces purpureogenusとTalaromyces assiutensisが、抗生物質の分泌によって阻害していることが分かりました。
T. purpureogenusは、Mitorubrin と mitorubinolを分泌し、
T. assiutensisは、Spiculisporic acidをS. rolfsiiに対する阻害剤として分泌していました。

ACE2-Fc融合タンパク質がSARS-CoV-2の変異株によらない治療薬となる可能性

SystImmune Inc., 15318 NE 95th St., Redmond, WA, 98052, USAらのグループは、ACE2-Fc融合タンパク質が、SARS-CoV-2変異株の種類に関わらず効果的にウイルスを中和することができる治療薬と成りうると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8882475/

興味深いことに、SI-F09と名付けられたACE2-Fc融合タンパク質を使用した疑似ウイルス中和データは、SARS-CoV-2 RBDとACE2の間の結合強度が高いほど、IC 50値が低いことを示しています。言い換えれば、SARS-CoV-2 WTのIC50値が、オミクロンを含むSARS-CoV-2変異株の中で最も高いとなっています(以下に表示)。

現在、健康な患者に対するSI–F019の安全性を評価する第I相臨床試験が実施され(ClinicalTrials.gov識別子:NCT04851444)、次の治験に向けて、結果の分析が行われています。

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