免疫チェックポイント分子PD-L1の脱糖鎖修飾を抑えることで上咽頭癌に対するT-細胞免疫活性を高めることができる

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Nanfang Hospital, Southern Medical University, Guangzhou, Chinaらのグループは、TGF-β1経路を標的とすることで、上咽頭癌におけるPD-1/PD-L1免疫チェックポイントの阻害を増強するというアプローチを提案しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35311117/

PD-L1(programmed death ligand-1)は、腫瘍細胞に発現する膜貫通型糖タンパク質であり、PD-L1はT-細胞の活性を阻害し、T-細胞上の受容体PD-1に結合することで免疫回避を促進することはよく知られています。

TGF-βは多機能なサイトカインであり、癌を含む生理学的および病理学的プロセスの両方で重要な役割を果たします。 TGF-βの異常産生は、腫瘍の進行、血管新生、転移、および免疫回避に強く関与しています。TGF-βは、CD8+ T-細胞、NK細胞、マクロファージなどのエフェクター細胞の抗腫瘍活性を抑制する重要な免疫抑制性サイトカインと見なされています。

この研究では、PD-L1が上咽頭癌で強く糖鎖修飾を受けており、TGF-β1がPD-L1のN-型糖鎖修飾に重要な役割を果たしていることが分かりました。TGF-β Type I型受容体阻害剤(SB431542)によるTGF-β1の阻害は、PD-L1自体の発現低下だけでなく、PD-L1のN-型糖鎖修飾の減少も招きました。 PD-L1の糖鎖修飾の減少は、レクチンConAのPD-L1結合能の喪失によって確認されました。

著者らは、PD-L1のN-型糖鎖修飾がc-Jun/STT3Aシグナル伝達経路を介してTGF-β1の影響を受けていることを発見し、TGF-β1経路を標的とすることで、PD-L1の脱糖鎖修飾を抑制しながら、上咽頭癌の免疫チェックポイント阻害を強化することが有望なアプローチになり得るということを示唆しています。

上咽頭癌細胞(5-8F細胞)と Jurkat T-細胞の共培養、STT3A-knockdown細胞(shSTT3A細胞)、T-細胞のSB431542 と tunicamycin (TM) 前処理を絡ませて