トリコデルマ菌をトウモロコシとスイカの種にコーティングした結果

Jiangsu Collaborative Innovation Center for Solid Organic Wastes, Educational Ministry Engineering Center of Resource-Saving Fertilizers, Nanjing Agricultural University, Nanjing, Chinaのグループは、トリコデルマ菌をトウモロコシとスイカの種にコーティングした結果について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37195176/

本研究では、真菌トリコデルマ guizhouense NJAU4742 を種子コーティングによってトウモロコシとスイカの種子細菌叢に接種させ、スイカとトウモロコシの種子コーティングが、植物の成長と根圏土壌の酵素活性を大幅に改善することを示しています。
種子コーティングされた種子の発芽率は、コントロールと比較して、トウモロコシでは植え付け後3日後で25%、スイカでは植え付け後8日後で35%それぞれ有意に増加していました。
トウモロコシへのトリコデルマ種子コーティングの影響

コントロールと比較して、種子コーティングされたトウモロコシでは、ウレアーゼ、スクラーゼ、酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ、α-グルコシダーゼ、ペルオキシダーゼ、セルラーゼらの酵素活性が、それぞれ97.9%、51.7%、61.2%、82.3%、27.0%増加しました。種子コーティングされたトウモロコシでは、スクラーゼ、酸性ホスファターゼ、中性ホスファターゼ、α-グルコシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、およびセルラーゼの酵素活性が、それぞれ51.7%、25.7%、21.1%、62.6%、39.1%、34.3%増加しました。
種子コーティングしたトウモロコシの茎腐れ病の発生率は、コントロールと比較して28%減少し、種子コーティングを施したスイカの場合には、発生率は病原菌散布後60日で37%減少しました。

18F-labeled rBC2LCN レクチン複合体を膵臓癌のPETプローブとして使用する

Department of Gastrointestinal and Hepato- Biliary- Pancreatic Surgery, Faculty of Medicine, University of Tsukuba, Tsukuba, Japanらのグループは、18F-labeled rBC2LCN レクチン複合体を用いた膵臓癌のPETイメージングについて報告しています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/cas.15846

本研究では、rBC2LCN-F-18 (18F) レクチン複合体の新しい陽電子放出断層撮影 (PET) 用プローブとしての応用の可能性について検討されました。 H-type-3型糖鎖陽性のヒト膵臓癌細胞株であるCapan-1を選択し、Capan-1細胞(2×106)をヌードマウスの右背部に皮下注射しました。rBC2LCN レクチンは H-type-3型糖鎖に対して結合特異性を有することが知られています。重要なのは、rBC2LCN は血球凝集(外因性レクチンが血液中に導入されると誘発される)を誘発しないため、無害に静脈内投与できるということです。

その結果、18F 標識 rBC2LCN レクチンは、細胞表面糖鎖を標的とする新しいクラスの PET 用腫瘍特異的プローブとなり得ることが実証されています。ただし、Mxブログ管理人は、このプローブは癌細胞に確かに特異的ではありますが、以下に示すように他の正常組織にも結合することが問題のようにも思いますが、どうなのでしょう?

WGAレクチンの修飾を受けた抗生物質を内包するヒト血清アルブミン・ナノ粒子で尿路感染症を治療する

University of Vienna, Faculty of Life Sciences, Division of Pharmaceutical Technology and Biopharmaceutics, Vienna, Austriaらのグループは、WGAレクチンの修飾を受けた抗生物質を内包するヒト血清アルブミン・ナノ粒子(NP)を尿路感染症の治療に使用しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1549963423000369?via%3Dihub

NPがどのように作られたのかを知るのはとても興味深いです。 NPの生成のために、20 mgのHSAを10 mlの100 mMリン酸緩衝液(pH 8)に溶解しました。その後、1 mlのオリーブ油をタンパク質溶液上に流し込み、超音波発生器のプローブマイクロチップを、2つの相の界面に挿入しました。緒音波パワー= 約253 W/cm2、振幅40 % でサンプルを2分間超音波処理しました。続いて、NPを遠心分離(5204×g、40分、4℃)で4回洗浄して分離しています。抗生物質内包のNPの製造では、2.5 mg、5 mg、10 mg、または 20 mg のリファンピシンを 1 ml のイソプロピルアルコールに溶解し、オリーブ油と混合し、上記のように処理しました。トリメトプリム担持粒子の調製では、2.5 mg、5 mg、10 mg、または 20 mg のそれを 10 ml の 100 mM リン酸緩衝液 (pH 8) に溶解しています。

ヒト尿路上皮細胞と本NPをインキュベートすると、青色に染色された核の周囲と赤色に染色された膜内にNP(緑色の色素で染色)が局在していることが観察されました。これは、細胞へNPがうまく取り込まれていることを示しています。 WGA修飾のあり・なしの場合を比較すると、WGA修飾ありでは細胞結合能が60%増加していました。

胆管癌のバイオマーカーとして癌由来エクソソームのハプトグロブリンの末端フコース修飾が注目される

Department of Life Sciences, Pohang University of Science and Technology (POSTECH), Pohang, Gyeongbuk, Republic of Koreaらのグループは、胆管癌由来エクソソームのハプトグロブリンの末端フコース修飾が胆管癌のバイオマーカーとして有望であると報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fonc.2023.1183442/full

腫瘍の糖鎖修飾の変化は、潜在的な癌のバイオマーカーとして着目されています。多くの研究は、しかしながら、可溶性形態で血液を循環する分泌分子の異常な糖鎖修飾変化を見つけることに焦点を当てています。本研究では、細胞外小胞 (EV) と相関する膜結合成分の末端フコシル化が胆管癌と相関することが示されました。

糖鎖分析により、胆管癌由来のEVには通常のEVよりも多くのα1-3/4フコシル化糖鎖 (末端フコシル化) が含まれていることが明らかになりました。しかし、注目すべきことに、α1-6フコース (コアフコース) はサンプル間で同等でした。結果として、胆管癌由来EVにおけるβ-ハプトグロブリン(β-Hp)のα1-3/4フコシル化は、胆管癌の早期診断や術後の再発予測のバイオマーカーとして有用であることが示されました。そして更に、胆管癌由来のフコシル化EVが腫瘍の進行に寄与していることも示されました。


胆管癌におけるEV-Hpのフコシル化の変化

癌治療のための志賀毒素Bユニット(STxB)を用いたDDSについて

enGenes Biotech GmbH, Muthgasse 11, 1190 Vienna, Austriaらのグループは、志賀毒素Bユニットを用いた癌治療のためのドラッグデリバリーシステム(DDS)について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10157870/

志賀毒素Bサブユニット (STxB) は、レクチンの一種であり、標的腫瘍細胞上のスフィンゴ糖脂質 (GSL) グロボトリアオシルセラミド (Gb3) に特異的に結合します。モノメチルオーリスタチン E (MMAE) を StxB (STxB-MMAE) に結合させ、その腫瘍細胞殺傷能力を2種類の細胞、ヒト結腸直腸腺癌細胞株 – HT-29 (Gb3+) および LS-174 (Gb3-) を用いて評価しました。STxB-MMAE複合体は、Gb3 陽性腫瘍細胞に結合し、MMAE薬剤の取り込みと放出を誘導することで、治療後72時間で HT-29 腫瘍細胞を94%除去することができたと報告しています。

病原性細菌類の初期付着および凝集を防止するための非殺生物性表面活性多糖類の特徴とは

Institut Pasteur Université Paris Cité, CNRS UMR 6047, Genetics of Biofilms laboratory, Paris, Franceらのグループは、病原性細菌類の初期付着および凝集を防止するための非殺生物性表面活性多糖類について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10156666/

細菌のバイオフィルムは、広範囲に表面付着して凝集した細菌群を形成し、医療用または工業用の表面で発生すると、人間の活動に悪影響を与えます。抗生物質に対する耐性が高いため、バイオフィルムを根絶することは困難であり、バイオフィルム関連感染の防止は、健康上および経済上の主要な問題となっています。バイオフィルムの形成を防ぐための戦略は、多くの場合、広域スペクトルの抗生物質や重金属などの殺生物剤で表面をコーティングして、細菌の付着の初期段階を阻害することです。これらの殺生物的アプローチは、死んだバクテリアや有機物の破片が急速に蓄積することによって、コーティングされた表面の新しい細菌への阻害活性が低下することが問題です。

本研究では、その組成と構造が知られている31種類のグラム陽性およびグラム陰性細菌の莢膜多糖類のパネルを用いて、その抗バイオフィルム活性が調べられました。それらの中で、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの典型的な院内病原菌によるバイオフィルム形成を阻害する9つの新しい非殺生物性多糖類が発見されました。

これらの多糖類の詳細な分析を通じて、多糖類が抗バイオフィルム活性を示すには、その緩い構造(すなわち、多数の多糖類構造内の空隙による大きな透過性)と高密度の負に帯電した静電荷の存在が重要せあることが示されました。。

乾癬患者と健常者の常在皮膚細菌の違いについて

Biotechnology Department, College of Science, University of Baghdad, Baghdad, Iraqらのグループは、乾癬患者と健常者の常在皮膚細菌の違いについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10133631/

門レベルでは、乾癬患者の病変皮膚では、健常者と比較して放線菌が有意に増加し、ファーミキューテスが大幅に減少しましたが、プロテオバクテリアに有意差は見られませんでした。更に、本研究では、乾癬皮膚の皮膚における優勢な門が放線菌とファーミキューテスであることを示しています。

どの根圏細菌属がもっともリンの可溶化能力が高いのか:ローズウッドの根圏から

School of Agriculture, Graphic Era Hill University, Bhimtal, Indiaらのグループは、ローズウッドの根圏からどの細菌属が最もリンの可溶化能力が高いのか?について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10147649/

その結果、シュードモナス属、クレブシエラ属、ストレプトマイセス属、パンテア属、キタサトスポラ属、ミクロコッカス属、ブドウ球菌属に属する菌株が強力なリン可溶化菌としてスクリーニングされました。
これらの内、シュードモナス エルギノーザおよびクレブシエブ バリコーラが、最も高効率なリンの可溶化能力を示したということです。

稲の生長を促進するにはバチルス菌の接種が良い

Department of Microbiology, Himachal Pradesh University, Summerhill, Shimla, Indiaらのグループは、稲の生長を促進する植物成長促進細菌(PGPB)について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10142854/

本研究は、稲の根圏から多種多様な植物の成長を促進するバチルス菌株を選択することを目的として行われました。種子へのバチルス菌株(Bacillus licheniformis MNNITSR2およびBacillus velezensis MNNITSR18)の単独接種および共接種により、カリウム、リン酸二アンモニウム、尿素などの化学肥料の施肥なしで、稲の大幅な成長増進効果が示されました。具体的には、Bacillus MNNIT SR2の接種は、ポット培養アッセイで未処理のコントロールに比較して、8週間後の稲の新鮮な新芽と根の長さと新芽と根の乾燥重量が有意に増加しました(それぞれ(14.7% と 30.8%)と(53% と 35.6%))。同様の結果が Bacillus velezensis MNNIT SR18の接種でも得られ、8週間後の稲の新芽と根の長さと新芽と根の乾燥重量が有意に増加していました(それぞれ(17% と 20%)と(88.3% と 83.7%))。

これらのバチルス菌株は、以下の植物生長促進活性を示しました。

IAA生産: 根の発根、細胞の拡大、細胞分裂の刺激など、様々な生理学的プロセスを調節し、根の表面積が増加することで植物がより多くの栄養素を吸収できるようになります。
リン酸可溶化: 植物は無機リンのみが利用可能であり、有機リン化合物はまずホスファターゼ酵素によって加水分解される必要があります。
シデロフォア生産: 根圏の鉄をキレートすることで、真菌性病原体の増殖を防ぎます。
抗真菌活性: どちらのバチルス菌株も、Rhizoctonia solaniとFusariun oxysporumの菌糸の成長を阻害することができます。
HCN生産: 植物病原菌の呼吸器系に影響を与え、菌糸の成長を阻害します。
アンモニア生産: 植物の成長と生産性を直接促進します
ACC デアミナーゼ活性: 様々な非生物的ストレス、つまり、塩ストレス、洪水ストレス、重金属ストレスなど、様々な悪環境下で ACCの濃度を低下させることにより、植物の成長に有益な効果をもたらします。
非生物的ストレス耐性活性: 両方のバチルス菌株は耐塩性と干ばつ耐性を示し、それぞれ10 ~ 15% のNaClと 25% のPEG 6000に耐性がありました。

光バイオームセンサー(OBS)の実用化にむけて

エムックが開発を進める光バイオームセンサー(OBS)は、光ファイバーセンサーをベースとし、低価格・簡易・速いをモットーとして工夫を重ねたものであります。
OBSの1号機は、OBSの実証機であり、動作確認を行うことが使命でした。
OBSの2号機では、筐体を堅牢な黒アルマイトで仕上げ、光ファイバーセンサー部を交換可能とすることにより実用性を高めました。その結果、1,000個/mL~2億個/mLという広い測定レンジで細菌(生きたバクテリア)を計測できることを実証することができました。この実証作業は、対象とする細菌種を広げながら今後も行っていきます。
OBSの性能の一端をご紹介

OBSの3号機は、筐体のプラスティック化を進めることで筐体に滑らかな曲線を入れつつ、低価格の実現に駒を進め、商品化に目途を付けるものです。


ピペットホルダーにOBS2号機をセットし、サンプルを測定している様子