新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化機構の解明とその治療薬開発に向けてクラウドファンディング

自分もこの新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化機構の解明とその治療薬開発に参画しています。
糖鎖とレクチンに関する経験や知恵を駆使して、研究開発を推進します。本活動に、宜しくご支援お願い申し上げます。

 

https://readyfor.jp/projects/glycotechnica_covid19research/announcements/150515

新型コロナウイルス(COVID-19)の死亡率を下げるには、IL-10が重要なターゲットになり得るかも知れない

新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化とは、非常に重い肺炎と多臓器不全にあります。これは、SARS-CoV-2ウイルス感染の結果として誘発されるサイトカインストームの結果であるとされています。サイトカインストームを抑えるために。IL-6, IL-1, GM-CSFらサイトカインの阻害剤が検討されていますが、死亡率を下げるには更なる改善が必要とされています。
下記のグループは、これに加えてIL-10の重要性を見直すべきではないか?という論調を出しています。
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S1471-4906%2820%2930256-8

IL-10というサイトカインは、一般的には抗炎症性サイトカインとして認識されています。しかし、IL-10の機能と言うのは多面的で、メラノーマ、腎細胞癌、肺非小細胞癌らの治療において、IL-10がしばしば炎症性サイトカインとして作用する例が報告されています。COVID-19においては、ウイルスに感染し重症化が進むについれて、各種サイトカインの中でもIL-6とIL-10が非常に高発現し、重症化を予測するための共変量となっています。
感染初期の段階では、IL-10は炎症の進展に伴うバランサーとしての抗炎症性サイトカインとして機能しているのかも知れませんが、重症化が進んだ時には炎症性サイトカインとして機能している可能性があります。その為、投与時期はクリティカルですが、IL-10の阻害剤をIL-6らの阻害剤と合わせて投与することが有効かも知れないとしています。

実証はこれからの作業になります。

欧州における新型コロナウイルスの第三波には、SARS-CoV-2のS-タンパク質にA20.EU1という変異が入っている

新型コロナウイルス(COVID-19)の第二波の感染拡大の背後には、SARS-CoV-2のS-タンパク質におけるD614Gという変異が関係しているという報告があります。D614Gの変異が入ったことで、ACE2に対するRBDのopen配位の確率が上昇し、感染率を押し上げたとされています。
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)31229-0

新型コロナウイルスは、現在第三波に入ったと言って良い状況ですが、この感染拡大においては、S-タンパク質のNTDにA222Vという変異が追加されているという報告があります。この変異が第三波の感染拡大の直接的な原因になっているかどうかについては、まだ不明です。また、フランスでは、同じくS-タンパク質のNTDにS477Nの変異が入った株の割合が高いとのことです。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.25.20219063v1

新型コロナウイルス(COVID-19)に見られる小児多臓器系炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children)は、SARS-CoV-2のS-タンパク質に存在する細菌性スーパー抗原が関与している

SARS-CoV-2に感染した小児での川崎病に似た炎症性疾患が報告されており、WHOは この疾患を「小児多臓器系炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children:MIS-C)」と名付けています。
この疾患の原因について考察した研究成果があり、その中で、MIS-Cは、毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome:TSS)とよく似た症状を示し、細菌性スーパー抗原の存在をほのめかしています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.11.09.372169v1

MIS-Cの重症度及びサイトカインストームとT-細胞受容体のβ-可変領域遺伝子(T-cell Receptor Beta variable gene: TRBV)11-2の展開が強く相関していることが確認されました。このTRBV11-2を含むT-細胞受容体とMHCIIがSARS-CoV-2のS-タンパク質に存在する細菌性スーパー抗原様の構造(polybasic insert PRRA周辺のE661からR685にかけての領域)と強く結合した複合体を作ることを分子動力学的に確認しています。このことによって、T-細胞を非特異的に多数を活性化させ、多量のサイトカインが放出されることになると考えられます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると多くの免疫抑制受容体が影響を受けている

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると、多くの免疫抑制受容体が影響を受けているらしいというレポートがあります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33200082/

SARS-CoV-1, Influenza A virus, Respiratory syncytial virusに比べて、SARS-CoV-2では、以下の免疫抑制受容体の発現が大きく昂進しています。
CEACAM1
SIGLECS
LILRB3
LILRB4
LILRB5
CLEAC12A
これらの阻害剤もCOVID-19の治療薬候補になり得ると締めくくっています。

日本における新型コロナウイルス(COVID-19)の第一波と第二波の違いについて

日本における新型コロナウイルスの第一波と第二波の違いについて調査した結果があります。
https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(20)30693-9/fulltext

第一波は、2020年4月にピークを迎え、第二波は同年8月にピークを迎えています。第二波では、D614Gの変異により感染力が上がったと言われていますが、重症化率は下がっていることが如実に示されています。但し、第二波では、第一波に比べて若年層の感染者が多いということもあり、それが重症化率を下げている原因になっている可能性もあります。

 

 

 

 

既に、現在は第三波に入っていると言われており、更にどのような変化が感染力や重症化に起こっているのかが注目されます。

妊娠している女性の重症化率はかなり高くなる:新型コロナウイルス(COVID-19)

新型コロナウイルスにおいて、COVID-19の重症化リスクは、本来女性は男性よりも低いのですが、妊娠している女性は重症化率がかなり高くなることが報告されています。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6944e3.htm?s_cid=mm6944e3_w

15歳から24歳の妊娠している女性は、侵襲的人工呼吸を受けなければならないリスクが3倍増加(95%CI: 1.6 – 5.7)、
35歳から44歳の妊娠している女性では、3.6倍に増加(95%CI: 2.4 – 5.4)する
とのことです。

新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化と各種免疫細胞の動き(CD4+ Tcell, CD8+ Tcell, NK Cellなど)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19の重症化が進むと、各種免疫細胞において、次のような変化が見られます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7591707/

健常者に比べて、
白血球と好中球が大幅に増加、
逆にリンパ球、好酸球、T細胞、NK細胞が減少します。

更に、T細胞やNK細胞のサブセットにも興味深い変化が現れ、
CD4+/CD8+比が大幅に増加し、
PD-1 NK細胞、CD244 NK細胞、PD-1 CD4+ T細胞、PD-1 CD8+ T細胞、CD244 CD8+ T細胞が増加、
逆にCD27 NK細胞、CD27 CD8+ T細胞が減少します。

このように、免疫細胞とそのサブセットの変化は、COVID-19の重症化のメカニズムにも関係していると思われますし、臨床的にも重症化のスクリーニングに役立つと考えられます。

N1H1インフルエンザウイルスにおける重症化と年齢の関係性の背後にHigh mannose糖鎖修飾の変化がある:フェレット・モデル

2009年のN1H1インフルエンザの大流行において、新型コロナウイルスと同様に、若年者は軽症であり、年齢が上がるに従って重症化するという傾向が見えていました。

下記のグループは、フェレットをモデルとして、N1H1インフルエンザの重症化と年齢の関係性に糖鎖修飾の変化が関わっているのではないか?という視点でレクチンマイクロアレイを用いた実験結果を報告しています。比較糖鎖プロファイリング解析のサンプルにはフェレットの肺を使用しています。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jproteome.0c00455

結果として、
年老いたフェレットでは、重症化とともにHigh mannoseが高発現しています。
離乳したばかりの若いフェレットでは、感染して3日から5日ではHigh mannoseの発現が上昇するものの、それ以降は健常時と同レベルにまで糖鎖修飾が回復し、軽症で済んでいます。
重症化に糖鎖修飾が深く関係していることを伺わせます。

Tn-抗原(α-GalNAc)の高発現が癌の増殖を促進する

癌が進行すると、O-型糖鎖が刈り込まれてTn-抗原(α-GalNAc)が高発現するという変化が良く見られます。このTn-抗原の高発現と癌細胞の増殖や転移との関係については、まだ十分な研究がおこなわれているとは言えません。下記のグループは、マウスの直腸がん(MC38細胞)のモデルを使用し、CRISPR/Cas-9を用いて、Tn-抗原のT-抗原への伸長に関与する糖転移酵素(C1galt1c1)をノックアウトした細胞株MC38-Tn(high)を作ることで、Tn-抗原の昂進が如何なる遺伝子発現の変化を引き起こしているかについて検討しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fonc.2020.01622/full

結果として、1,348遺伝子に発現量の変化が起こり(log2 fold change)、641遺伝子がdown、707遺伝子がupしていました。包括的には、抗原提示に関係するシグナルパスやT-細胞活性化に関するシグナルパスが抑制されており、癌細胞の増殖や転移を促す方向に変化しているようです。