Tn-抗原(α-GalNAc)の高発現が癌の増殖を促進する

癌が進行すると、O-型糖鎖が刈り込まれてTn-抗原(α-GalNAc)が高発現するという変化が良く見られます。このTn-抗原の高発現と癌細胞の増殖や転移との関係については、まだ十分な研究がおこなわれているとは言えません。下記のグループは、マウスの直腸がん(MC38細胞)のモデルを使用し、CRISPR/Cas-9を用いて、Tn-抗原のT-抗原への伸長に関与する糖転移酵素(C1galt1c1)をノックアウトした細胞株MC38-Tn(high)を作ることで、Tn-抗原の昂進が如何なる遺伝子発現の変化を引き起こしているかについて検討しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fonc.2020.01622/full

結果として、1,348遺伝子に発現量の変化が起こり(log2 fold change)、641遺伝子がdown、707遺伝子がupしていました。包括的には、抗原提示に関係するシグナルパスやT-細胞活性化に関するシグナルパスが抑制されており、癌細胞の増殖や転移を促す方向に変化しているようです。