ウイルス感染において、NK細胞は重要な役割を果たしています。University of Ferraraのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染において、NK細胞が如何なる振る舞いをしているかについて研究した結果をもとに、抗-NKG2A抗体を用いた治療法を提案しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32859121/
新型コロナウイルスのSタンパク質(Spike 1 Protein, Spike 2 Proteinそれぞれ)を肺上皮細胞に感染させ、NK細胞と共培養することによって、GATA3(転写因子)、HLA-E(ヒト白血球抗原のEクラス)、NKG2A/CD94(NK細胞抑制性受容体)、CD107a(脱顆粒マーカー:細胞障害因子の放出)、そしてIFN-γの発現状態を調べました。その結果、下記のような発現変動が起こっていることが分かりました。
- GATA3の昂進
- HLA-Eの昂進
- NKG2A/CD94の昂進
- CD107aの減少
- IFN-γの減少
これらの変化は、Sタンパク質のSP1(Spike 1 Protein)によって引き起こされています。SP1の感染によって、転写因子であるGATA3が活性化され、SP1ペプチド(8mer)がHLA-Eによって細胞表面に提示されます。HLA-EとNKG2A/CD94が結合することにより、NK細胞に抑制性の信号が入ります。同時に細胞障害因子の放出も抑制され、IFN-γの放出も抑制され、ウイルス排除の免疫機能が弱まっていることが示されています。
従って、結論として、感染初期において、抗-NKG2A抗体(monalizumab)を投与することが免疫活性を増強する手段として有効ではないか?としています。