SARS-CoV-2に対するワクチンを未接種な場合、オミクロンに感染しても他の変異株に対する中和抗体の交差反応性は低い

Gladstone Institutes, San Francisco, CA, USAらのグループは、SARS-CoV-2のワクチン接種を受けていないヒトの場合、オミクロン変異株の感染は、他の変異株に対して有効な交差中和抗体を引き出さないが、ワクチン接種を受けたヒトでは、オミクロン感染は効果的にそれ自身のみでなく、他の変異株に対する中和活性も強化されると報告しています。 https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.13.22269243v1.full-text SARS-CoV-2の異なる株(WA1、アルファ、ベータ、デルタ、およびオミクロン)の感染によって誘発される免疫応答を決定するために、感染したマウスの血清を収集し、SARS-CoV-2に対する中和活性が評価されました。デルタ感染マウスの血清は、変異株に対して最も広範な交差反応性を示し、ベータを除くすべての系統を効果的に中和しました。比較して、オミクロン感染はオミクロン自体を効果的に中和しましたが、他の変異株に対しては限定的な交差中和を示すに留まりました。 WA1に感染したマウ […]

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抗がん剤であるシスプラチンに抵抗性を示す精巣腫瘍には特徴的な糖鎖構造が存在する

Institute of Chemistry, Slovak Academy of Sciences, Bratislava, Slovakiaのグループは、抗がん剤であるシスプラチンが効く精巣腫瘍と抵抗性を示す精巣腫瘍にの間に、興味深い糖鎖修飾構造の違いがあることを報告しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35044085/ 精巣腫瘍は、15〜34歳の若い男性の中で最も頻度の高い種類のがんであり、男性のすべてのがんの種類の1.5%、泌尿器腫瘍全体の5%を占めています。 シスプラチンは、最初の金属ベースの抗がん剤のひとつとして、精巣腫瘍を含むさまざまな種類の癌の患者を治療するために今でも広く使用されています。この抗がん剤は、精巣腫瘍の治療に効果的であり、最大90%の治癒率と最大95%の一般生存率を示します。シスプラチンが精巣腫瘍の治療に非常に効果的に作用する理由は、そのような細胞が胚性幹細胞を産生するためだと考えられます。損傷した胚性幹細胞は、突然変異を次世代に受け継がないようにするために、アポトーシスによって排除されなければなりませんが、それに […]

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金属酸化物のナノ粒子(CuO, ZnO, そしてFeO)を使ってトマトの青枯病を制御する

Key Laboratory of Biology of Crop Pathogens and Insects of Zhejiang Province, Institute of Biotechnology, Zhejiang University, Hangzhou 310058, Chinaらのグループは、金属酸化物のナノ粒子を使って、トマトの青枯病(TBW)を抑制することができることを示しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35008839/ トマトの青枯病は、世界で最も感染性の高い土壌伝染性の細菌性疾患です。 原因菌である青枯病菌は、深刻な植物病原体として認識されています。 金属酸化物のナノ粒子である(CuONP、FeONP、およびZnONP)の適用により、コントロールと比較して、トマト植物の長さがそれぞれ24.3%、54.6%、および30.8%増加しました。同様に、金属酸化物ナノ粒子(CuO、FeO、およびZnO)で処理された青枯病感染植物は、コントロールと比較して、新鮮重量が32.8%、78.3%、および30.6%増加し、乾燥重量が […]

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HIVウイルス特異的な糖鎖抗原を発現させたナノ粒子ワクチンの免疫増強効果

Koch Institute for Integrative Cancer Research, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA 02139, USAらのグループは、糖鎖抗原を発現させたナノ粒子をワクチンとして用いる方法を提案しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35021101/ 著者らは最近、糖鎖修飾を受けたHIV免疫抗原含有ナノ粒子が、マンノース結合レクチン(MBL)によって媒介されるプロセスでリンパ節濾胞内に蓄積し、ナノ粒子表面への補体沈着、濾胞樹状細胞への輸送、および獲得免疫で要となる胚中心の増強を引き起こすことを報告しました。 これらナノ粒子の平均糖鎖修飾数をナノ粒子あたり0個から240個の高マンノース型糖鎖修飾と増加させて滴定すると、in vitroでのMBL結合とin vivoでの濾胞樹状細胞局在が着実に増加しました。しかし、増やしすぎると逆に落ちてきます(下図参照)。これらの実験から、MBL結合を開始するために必要な最小糖鎖修飾密度の推定値を計算すると、この […]

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SARS-CoV-2 オミクロン株のマウスやハムスターへの感染で見られる感染能と病因

the collaborative network of the SARS-CoV-2 Assessment of Viral Evolution (SAVE) program of the National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)のグループは、SARS-CoV-2 オミクロンは、マウスやハムスターの肺で減少していることが明らかとなり、ヒトの臨床データと合致していると報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8722607/ 幾つかの最近の研究(このブログでも紹介されています)は、オミクロンのSpikeタンパク質の変異がマウス宿主への適応を促進することを示しており、オミクロンの前駆細胞がヒトからマウスにジャンプし、次にヒトに戻ったと推測されます。これを支持するように、Wuhan-1 のRBDはマウスACE2に結合せず、オミクロンのRBDはマウスACE2に結合します。ハムスターはまた、SARS-CoV-2感染の影響を非常に受けやすく、COVI […]

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侵襲性の癌には、α-GalNAcが高発現している

University of Oulu, Faculty of Biochemistry and Molecular Medicine, Oulu, Finlandらのグループは、Helix Pomatia agglutinin (HPA)レクチンによって認識されるα-GalNAcの発現レベルが、癌の侵襲性と顕著に相関していると述べています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8751650/ 著者らは、レクチンマイクロアレイを用いら糖鎖プロファイリングを使用して、侵襲性の異なる9つの癌細胞株の糖鎖プロファイルを比較解析しました。 レクチンマイクロアレイに搭載されている43個のレクチンの内、5個のレクチン( HPA、PTL-1、AJA、MAL I、PWM )のみが癌の侵襲性と正または負の相関を示すことが分かりました。多変量線形回帰分析からは、これらの5つのレクチンが癌細胞の侵襲性表現型で観察された変動の97%を占め、HPAのみも変動の58%を占め、PTL-1とHPAを合わせると変動の76%を占めることが示されました。残りのレクチン( […]

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小麦の根圏:塩害耐性を強化するバチルス・ベレチェンシスの接種効果

Key Laboratory of Biochemistry and Molecular Biology in University of Shandong Province, Weifang University, Weifang, Chinaらのグループは、小麦の塩害耐性を高めるために、バチルス・ベレチェンシスの根圏接種について報告しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34987493/ 塩害は、世界的な農業問題のひとつです。現在、世界の耕作地の少なくとも20%は、さまざまな程度の塩害によって脅かされているとされています。 この研究では、バチルス・ベレチェンシス JC-K3の菌株が、塩性土壌で育てられた小麦から分離されました。この菌株は、強い耐塩性と耐アルカリ性を示しただけでなく、IAA、シデロホア、プロリン、可溶性糖、プロテアーゼ、セルラーゼ、およびグルカナーゼらを生成することで、植物の耐塩性を改善し、環境変化に対する植物の耐性を改善します。実際、本実験でテストされた塩分ストレス下で(耐塩性(12%NaCl、w/v)、1-アミノシクロプロパ […]

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SARS-CoV-2 オミクロンは、2020年初頭に分岐し、独自の進化を遂げた?

Research Institute of Public Health, Nankai University, Tianjin, PR Chinaらのグループは、SARS-CoV-2 オミクロン株の起源について仮説を提唱しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35005525/ オミクロン株には53個を超える多数の突然変異があるにもかかわらず、既知の公開データベース(GISAID database)からは、これらの突然変異が時間の経過とともにゆっくりと蓄積したことを示唆する証拠は見つかりませんでした。さらに、系統樹の解析からは、オミクロン株の進化において、中間分岐が存在しないことが示されました。 オミクロン株がデルタ変異株から進化した場合、それらは共通の変異プロファイルを共有するはずです。しかし、GISAID databaseからの分析は、オミクロン変異体が、デルタ変異体から進化しなかったことが示されました。系統発生分析は、オミクロン変異体がガンマ変異体を姉妹群として単系統群を形成し、オミクロンとガンマの系統が2020年の前半に分岐した可能性が高い […]

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キメラ抗原受容体(CAR)-NK細胞をSARS-CoV-2感染の治療に使用する

The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USAらのグループは、SARS-CoV-2感染の治療のための糖タンパク質標的キメラ抗原受容体(CAR)-NK細胞を使用した新しいアプローチを提案しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8732772/ NK細胞は免疫系の自然免疫リンパ球であり、ウイルス感染の制御に重要な役割を果たしており、CAR-T細胞およびCAR-NK細胞は、癌や感染症に対する非常に有望な新しい免疫療法として着目されています。 通常、NK細胞表面に発現された合成受容体は、ターゲット細胞の表面タンパク質に結合するように設計されています。この研究では、ターゲットとなる糖鎖修飾に対する結合特性を持つユニークな細胞膜外発現分子(即ち、レクチン)を利用してCARを設計しました。糖タンパク質、特にN-型糖鎖をCARで標的化することはまれです。本研究は、SA […]

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小麦の根腐れ病と根圏における菌類との関係性について

Hubei Key Laboratory of Crop Disease, Insect Pests and Weeds Control, Wuhan, Hubei Province, Chinaらのグループは、小麦の根腐れ病と根圏の真菌の存在量との関係性について報告しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8675258/ 健康なグループ(H54とH5)と根腐れ病のグループ(D4とD5)の間で、根圏土壌の真菌の存在量に有意差がありました(下図参照、PCA分析を使用)。 前記グループ間で存在量に有意な違いがある属は、Alternaria、Apodus、Epicoccum、Scytalidium、およびChaetomiumでした。 Alternaria: 根腐れ病で減少、 Apodus: 根腐れ病で増加、 Epicoccum: 根腐れ病で減少、 Scytalidium: 根腐れ病で増加、そして Chaetomium: 根腐れ病で増加。 病原菌の存在は小麦の根腐れ病に確かに必要な条件なのですが、病原菌の存在量の豊富さのみが決定的 […]

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