侵襲性の癌には、α-GalNAcが高発現している

University of Oulu, Faculty of Biochemistry and Molecular Medicine, Oulu, Finlandらのグループは、Helix Pomatia agglutinin (HPA)レクチンによって認識されるα-GalNAcの発現レベルが、癌の侵襲性と顕著に相関していると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8751650/

著者らは、レクチンマイクロアレイを用いら糖鎖プロファイリングを使用して、侵襲性の異なる9つの癌細胞株の糖鎖プロファイルを比較解析しました。

レクチンマイクロアレイに搭載されている43個のレクチンの内、5個のレクチン( HPA、PTL-1、AJA、MAL I、PWM )のみが癌の侵襲性と正または負の相関を示すことが分かりました。多変量線形回帰分析からは、これらの5つのレクチンが癌細胞の侵襲性表現型で観察された変動の97%を占め、HPAのみも変動の58%を占め、PTL-1とHPAを合わせると変動の76%を占めることが示されました。残りのレクチン(AJA、MAL I、PWM)は負の相関を示し、それぞれ7%の寄与でした。従って、癌細胞におけるHPA結合型性の糖鎖エピトープ(O-結合型α-GalNAc)の発現の増加が、癌細胞の侵襲性を促進する主な要因であると考えられました。

次に、HPA結合性タンパク質をHPAレクチンでプルダウンし、LC-MS/MSで同定しました。

これらのうち、HPAで免沈した糖タンパク質( EGFR、MMP-14、β4-、β1-、α2-、およびαVインテグリン)は、低侵襲性細胞と比較して高侵襲性細胞で著しく濃縮されており、これらのタンパク質で末端α-GalNAcの修飾レベルが増加していることが分かります。これら糖タンパク質の内、 EGFRおよびα2インテグリンが癌の侵襲性と有意に相関していることも判明しました。