アーカイブ: 2023年2月25日

WFAの糖鎖結合特異性はVVAに酷似している

Department of Chemistry and Center for Diagnostics & Therapeutics, Georgia State University, Atlanta, GA, USAらのグループは、化学酵素合成法を用いて合成したO-型糖鎖マイクロアレイを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9931048/

WFAというレクチンは、診断用途で非常に有用なレクチンとして着目されています。
本研究によれば、WFAとVVAは、下図に示すように、Tn-抗原、core 5、sialyl-core 5、およびcore 7 を含む末端の未修飾GalNAc残基を持つすべての構造に強く結合するようです。

 24番は、Tn-抗原

BK ポリオーマ ウイルスの変異株と感染機構

Nantes Université, CHU Nantes, INSERM, Center for Research in Transplantation and Translational Immunology, Franceらのグループは、BKポリオーマウイルス変異株の感染力に関してその構造と機能の側面から解析した結果を報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36790933/

BKポリオーマウイルス (BKPyV) は、72個のカプソマーによって形成された20 面体キャプシドを持つ小型のエンベロープを持たない二本鎖 DNAウイルスであり、カプソマーは、VP1タンパク質の五量体からできています。 BKPyVは、ガングリオシドGT1bおよびGD1b を介して尿路上皮および腎臓上皮と相互作用することが知られていますが、還元末端から最初のガラクトースに結合したα2-8結合ジシアリル構造を特徴とする他のbシリーズのガングリオシドも介して相互作用することが知られています。 BKPyVは、世界人口の 80% が罹患している日和見ウイルスであり、通常、小児期に無症候性で発生し、その後、腎臓に潜伏します。

本研究では、VP1 タンパク質の4つの変異について議論しています。これらの変異は、ウイルスとシアル酸との直接的な相互作用に関与するVP1タンパク質のBC ループ領域に見られました。これらの変異には、二重変異体 K69N E82Q (N-Q)、E73Q 変異体、E73A 変異体、および三重変異体 A72V E73Q E82Q (VQQ) が含まれていました。細胞株293TTおよびRSを使用し、これらの変異体偽ウイルスおよび野生型(WT)サブタイプIb2偽ウイルスを用いて、その感染性が評価されました。両方の細胞株は、モノシアル化されたGM2およびGM3 aシリーズのガングリオシドと中性グロボシドを含むことが質量分析による構造解析で確認されました。さらに、2RS細胞は、α2-8 結合ジシアリル エピトープを有するb シリーズのジシアリル化ガングリオシドGD2およびGD3を特異的に発現していました。

以下の事柄が発見されました。
N-Q変異はすべてのガングリオシド結合活性を失いましたが、シアル酸非依存性経路を介して293TT細胞で感染性を保持しました。VQQ変異ではガングリオシド結合は強化されましたが、293TT細胞で感染性をほぼ完全に失いました。これらの観察結果のもっともらしい説明の一つは、VQQ変異体においては、N-Q変異体が293TT 細胞に感染するために使用する未知の侵入受容体と相互作用する能力を失った可能性があり、シアル酸結合に加えて、感染侵入にはこの相互作用が必要であるということになります。

酸化ストレスを受けるとフコース転移酵素(FUT8)の発現が高まり、糖鎖のコアフコース修飾が昂進する

大阪大学応用化学らのグループは、酸化ストレス下では、FUT8の発現が高まると報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0281516

遺伝子オントロジーのカテゴリーで定義される抗酸化応答には、典型的な抗酸化応答遺伝子である HMOX1 (ヘムオキシゲナーゼ 1) や GCLC (グルタミン酸-システインリガーゼ触媒サブユニット) など、441種類のヒト遺伝子が含まれています。これらの遺伝子の発現は、細胞内の酸化状態を低下させ、細胞を酸化ストレスから保護するのに役立つとされています。抗酸化応答によって糖鎖修飾に変化があるかどうかを確認するために、抗酸化物質であるとされる5-ヒドロキシ-4-フェニル-ブテノリド (5H4PB) とスルフォラファン (SFN)を投与した場合のヒト角化細胞細胞株 HaCaT におけるRNA発現解析が行われました。

本解析から、FUT8は両方の場合(5H4PBとSFN)で発現が高まることが示されました。これは、フコース結合性レクチンであるUEA-Iを用いたフローサイトメトリーによっても確認されました。.

土壌のダメゾット燻蒸処理後の微生物含有有機肥料添加の効果について

Pest Integrated Management Key Laboratory of China Tobacco, Tobacco Research Institute of Chinese Academy of Agricultural Sciences, Qingdao, Chinaらのグループは、土壌のダメゾット燻蒸処理後の微生物含有有機肥料添加の効果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9891460/

作物を連作すると、土壌中の病原体が増えやすくなります。例えば、なすの連作は青枯病の深刻な発生につながり、スイカの連作は萎凋病の深刻な発生につながり、ショウガの連作はショウガの深刻な伝染病につながる可能性があります。これは、土壌の栄養バランスを崩すだけでなく、土壌の生物学的特性を悪化させ、結果として土壌の細菌叢を崩壊させ、作物の収量と土壌環境に深刻な害をもたらすからです。燻蒸後に生物的防除剤または有機肥料を使用すると、土壌細菌叢の回復を促進し、土壌の微生物的な肥沃さを改善することで、燻蒸剤の悪影響を排除できます。このようにして、燻蒸材処理に加えての微生物含有有機肥料の施肥は、この分野で注目されている研究テーマとなっています。

本研究では、ダゾメット燻蒸後に、Junweinong および Junlisu 微生物含有有機肥料を施肥し、その効果について研究しています。ダゾメット燻蒸後のこれら二つの微生物含有有機肥料の施肥は、根圏土壌の利用可能なリン、利用可能なカリウム、および有機物含有量を大幅に減少させました。これは、植物がこれらの栄養素をより多く吸収できた結果であることを意味します。燻蒸後に微生物含有有機肥料を施肥することで、土壌のpHが上昇しました。土壌のpH は、土壌の健康に影響を与える重要な要因であり、例えば、たばこの黒根腐れ病は、pH 4.8 ~ 5.8 で発生率が高くなし、アブラナ科植物のリゾクトニア病および菌核病は、酸性土壌で発生しやすく、土壌酸性度を変化させた後のpH 7.2 ~ 7.4ではほとんど発生しません。
燻蒸後にこれら部生物含有有機肥料を施肥した場合、微生物の多様性に大きな影響を与えることなく、根圏細菌の存在量を増加させました。具体的には、Gaiella、norank_f_Vicinamibacteraceae、Flavisolibacter などの細菌や、Peroneutypa、Olpidium、Microascus などの菌類が大幅に増加し、根圏細菌叢の組成が変化していました。これらの微生物は、植物の病気に対する耐性を高め、栄養摂取を促進する上で重要な役割を果たします。更に、ダゾメット燻蒸後の微生物含有有機肥料の施肥は、根圏土壌における13種類のアミノ酸代謝、ピルビン酸代謝、TCAサイクル、およびペントースリン酸経路に関する機能遺伝子の相対的発現量を増加させていました。

フコイダンを食すると腸内細菌叢におけるシュードモナス・アルギノーザの割合が減少し、免疫力が改善する

Molecular Infectious Disease Research Center, Chang Gung Memorial Hospital, Taoyuan, Taiwanらのグループは、フコイダンを食することで、シュードモナス・アルギノーザの病原性因子と腸内ムチンの相互作用を阻止し, 腸内のバクテロイドを増殖させることでシュードモナス・アルギノーザを抑制し、結果として免疫力が改善すると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9896862/

シュードモナス・アルギノーザの腸内保菌率は、免疫力が低下したヒトや入院患者で有意に高く、結果として感染症および抗生物質関連の下痢のリスクが高くなります。腸内微生物叢は病原体に対するバリアとして機能しますが、シュードモナス・アルギノーザは、一連の病原性因子を産生することにより、腸内微生物叢と自然免疫系によって誘発されるコロニー形成に対するバリヤー機能を突破します。シュードモナス・アルギノーザは、TPSファミリーに属する大きなタンパク質システムを持ち、このTPSには保存されたヘマグルチニン (HA) ドメインがあります。 TPS システムのエフェクターは、グラム陰性病原菌(因みに、シュードモナスはグラム陰性です)における有益で主要な病原性決定因子であると考えられています。

Fucus vesiculosus (FV) および Ascophyllum nodusum (AN) 由来の栄養グレードのフコイダン 0.5% (w/v) を、マウスの飲料水に19日間添加する実験が行われました。14日間フコイダンを与えられたマウスでは、二つのパターンが観察されました。(1) シュードモナス・アルギノーザが、時間の経過とともにより多くのマウスから除菌されました、(2) しかし、その他のマウスでは、シュードモナス・アルギノーザは、残留持続し、時間の経過とともに減少する傾向を示しました。注目すべきは、フコイダンを与えられたグループの中で15日目と30日目には、除菌されたマウスの割合が60%に増加したということでしょう(P < 0.05)。

フコイダンがその保護効果を媒介するメカニズムは、二つあると考えられます。一つは病原性因子TPSとムチンとの相互作用の阻害、二つは善玉菌であるバクテロイデスの増殖を選択的に促進することです。因みに、FV フコイダンおよび ANフコイダンによるTPSと腸管ムチンとの相互作用のIC50 は、1 μg/mL 未満でした。

土壌の栄養状態と農業気候条件・気象要因によって最適な善玉根圏細菌の組み合わせが異なる

Soil and Environmental Biotechnology Division, National Institute for Biotechnology and Genetic Engineering College, Pakistan Institute of Engineering and Applied Sciences (NIBGE-C, PIEAS), Punjab, Pakistanらのグループは、土壌の栄養状態や農業気候条件/気候要因によって、最適な善玉根圏細菌の組み合わせが変化すると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9878846/

持続可能な農業を実現する上において、バイオスティミュラントの重要性はその言を待たないのですが、気候条件/気象要因および土壌栄養状態という複雑な環境条件下にある農業システムにおいて、競争力のあるリン酸可溶化細菌 (PSB)の接種とはどうあるべきなのか?という問題に対する統合的な解決策は未だに開発されていません。

本研究で使用された細菌株は、パキスタンのさまざまな農業生態学的ゾーンで栽培された小麦の根圏土壌から分離されたPSBの大規模なコレクションのサブセットであります。本研究で使用されるすべての菌株は、複数の植物成長促進属性、すなわちリン酸塩可溶化、亜鉛可溶化、インドール酢酸生産、および有機酸生産を持っていることが確かめられているものです。

この大規模な根圏細菌のコレクションの中から3種類の異なった根圏細菌の組み合わせが設計されました。
組合せ-1, Enterobacter spp. ZW32, Ochrobactrum sp. SSR, Enterobacter spp. ZW9.
組合せ-2, Enterobacter spp. D1, Ochrobactrum sp. SSR, Pantoea sp. S1
組合せ-3, Bacillus sp. TAYB, Ochrobactrum sp. SSR, Pseudomonas sp. TJA

興味深いことに、これら根圏細菌の組み合わせは、それぞれ異なった土壌・気候条件下でさまざまな小麦の生育パラメーターを改善しました。
例えば、最大収量 (5,390 kg/ha) は、サイト2 での組合せ-1接種の結果として観察され、サイト3 (5,240 kg/ha) とサイト1 (4,806 kg/ha) がそれに続きました。組合せ-2の場合では、最大収量 (5,324 kg ha-1) が組合せ-2をサイト6に接種した場合で得られ、続いてサイト5 接種した結果となりました (4,806 kg/ha)。組合せ-3の効果は、組合せ-1および組合せ-2と比較してそれほど有意ではありませんでした。しかし、20%減肥料した状態に比べるとその効果は明白に出ています。

このように、農薬の広範な使用によって引き起こされる土壌汚染を削減するためには、PSBの接種効果の維持とそれによるP栄養素の取り込みの強化を発揮させることが必要であり、この目的を実現するために、本研究は、土壌の根圏細菌を含む生物学的健康状態と農業気候条件を統合して理解する必要性を初めて示した一例となっています。

心臓の部位によって糖鎖修飾が異なり、老化に伴う糖鎖構造の変化も異なっている

東京都健康長寿医療センター研究所)心血管老化再生医学研究らのグループは、心臓の部位ごとに異なる糖鎖修飾とその老化に伴う糖鎖構造の変化について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9841240/

マウスの心臓組織から、左心室壁 (腹側と背側)、乳頭筋心室中隔らを含む8箇所の組織切片の糖鎖修飾の状態を、三つの年齢層(2か月、12~14 か月、23~25 か月)に対して、レクチンマイクロアレイを用いて解析しています。

生後2か月のマウスの心臓の8箇所の糖鎖修飾の違いを、主成分解析を用いて詳細に検討しました。興味深いことに、糖鎖プロファイルが心臓組織の各領域で異なることが分かりました。例えば、乳頭筋と心室中隔は、シアル酸によって特徴付けられ、腹側左心室壁はO-型糖鎖と多分岐のアシアロ型N-型糖鎖によって特徴付けられました。

また、部位によって糖鎖修飾の変化率は異なりますが、加齢と共にシアル酸の残基量が減少することも示されています。

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