マウスの N-アセチルグルコサミン糖転移酵素-IVa(murine GnT-IVa)のC-末端領域にレクチンドメインを発見した

大阪大学微生物病研究所らのグループは、マウスのN-アセチルグルコサミン糖転移酵素-IVa(MGAT4A: GnT-IVa)のC-末端領域にレクチンドメインを発見したと報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9296478/

N‐型糖鎖におけるGlcNAc分岐の生合成は、特定のN-アセチルグルコサミン糖転移酵素(GnT)、GnT-Iから-Vによって触媒されます。

著者らは、N-アセチルグルコサミン糖転移酵素-IVaに存在するレクチンドメインが、3つの短いα-ヘリックスを持つ9つのβ-ストランドで構成されるβ-サンドイッチフォールド構造を形成していることを発見しました。このドメインは、GlcNAcに特異的に結合するレクチンとして機能する細菌CBM32にみられるそれと構造的および機能的に類似しています。

更に、GnT-IVaに存在するこのレクチンドメインは、細胞内の糖タンパク質基質への効率的なN‐型糖鎖の生合成に必要であることが分かりました。

HIVに特異的に感受性のある細胞における糖鎖修飾の特徴:単一細胞レベルでの研究

Department of Urology, University of California, San Francisco, USAらのグループは、HIVは、細胞固有の方法で細胞表面のフコースとシアル酸の発現レベルを昂進させ、高レベルのフコースとシアル酸を共発現するメモリーCD4+T細胞はHIV感染に非常に敏感であると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9255966/

糖鎖修飾の状態が、HIV感染細胞の表面で変化していました。下図に示すように、シアル酸の総量(WGAによって認識され、N-アセチルグルコサミンにも結合する)とα2–3シアル酸(MAL-1によって認識される)の両方が、感染中にHIVによって発現昂進していました。

ここで、未感染 (UI)、前駆体 (PRE)、感染 (INF)

更に、下図に示すように、HIVは高レベルのフコース(AOL認識)とシアル酸(WGA認識)を共発現する扁桃腺およびPBMCからのメモリーCD4+T細胞に優先的に感染することが確認されました。

こここで、感染力はHSA陽性で評価された

脱フコシル化がマクロオートファジーの活性化に関係している

Tumour Cell Death and Autophagy Laboratory, Cancer Research UK Beatson Institute, Glasgow, UKらのグループは、脱フコシル化がマクロオートファジーを促進すると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9245654/

マクロオートファジーは長寿命タンパク質の分解の主要なメカニズムであり、オルガネラを分解する唯一のメカニズムであるため、オートファジーの異常は、神経変性疾患、炎症性疾患、糖尿病、癌などのさまざまな疾患につながる可能性があります。

糖鎖修飾を受けるタンパク質の割合が高いため、マクロオートファジーは、ポリペプチドを分解する酵素だけでなく、糖鎖を分解する酵素にも依存しているに違いないと容易に推測されます。

著者らは、糖鎖の分解、特に脱フコシル化がマクロオートファジーのプロセスに強く関与していることを発見しました。
本研究では、細胞および組織におけるリソソーム糖鎖加水分解酵素FUCA1の発現の喪失がオートファゴソームの蓄積を引き起こすことが示され、FUCA1が基礎オートファジーと刺激オートファジーの両方を調節することを示しています。更には、FUCA1はオートファゴソーム-リソソーム融合(FUCA1の喪失は融合プロセスの失速を引き起こす)とオートファジーのターンオーバー段階(FUCA1の喪失はベースライン条件下でLC3-IIレベルの増加を引き起こすが、プロセスのターンオーバー段階を完全にブロックするわけではない)の両方をサポートする、ことが明らかにされました。飢餓状態では、FUCA1の喪失によりオートファゴソームのクリアランス速度が低下し、マイトファジーの誘導時にミトコンドリアが分解されることがわかったことは注目に値し、これはFUCA1が、複数の状況で効率的なオートファジーフラックスに必要であることを示唆しています。

FUCA1の重要性は、先天性リソソーム蓄積症フコシドーシスにつながる遺伝子の突然変異によって例示されていますね。

小麦の根圏:干ばつ環境下では、バイオフィルムの形成能力がとても大切

Department of Soil Science, University of Maragheh, Maragheh, Iranらのグループは、乾燥草地で育つ野草の根圏から分離されたバイオフィルム形成能力に優れた根圏細菌を用いた小麦の成長促進効果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9283637/

水不足は、2050年までに地球の耕作地の50%以上で作物に深刻な問題を引き起こすと予想されています。地球規模の気候変動の進行に伴い、干ばつの期間の深刻さ、頻度、期間はさらに増えると予測されています。従って、水の利用可能性が限られた条件下での植物の生存と成長を改善することは、現代の植物科学において非常に重要な課題であり、効率的な植物生産を実現するための前提条件となっています。

本研究の主な目的は、干ばつ環境下で植物の成長を促進し、栄養素を可溶化することによって植物の栄養をサポートし、植物の成長を促進し、バイオフィルムを形成する細菌を分離することでした。干ばつに強い根圏細菌の多様なコレクションを得るために、イランの東アゼルバイジャンの低水分土壌の自然の草地で成長した5つの野草(イネ科)の根から根圏細菌が分離されました。そして、それら単離された細菌株の成長促進能力を、2つの小麦品種を用いて、ポッド実験が行われました。


at three levels of water availability and without (B0) or with the rhizobacteria strain 16-1 (B1), strain 38-2 (B2) and, strain 54-1 (B3).

乾燥した生態系の野草の根圏から細菌を分離し、複数の植物成長促進特性を持つバイオフィルム形成細菌に優れた根圏細菌をスクリーニングすることにより、小麦の収量改善のための3つの有望な候補株を得ることができました。予想通り、これらの細菌のプラス効果は、中程度および/または重度の干ばつストレス下で明らかであり、東アゼルバイジャン草原の暑く乾燥した気候が干ばつ耐性を持つ植物成長促進細菌の進化を促したことを示唆しています。

Galectin-4と肥満

Department of Clinical Sciences, Lund University, Jan Waldenströms gata, Malmö, Swedenらのグループは、Galectin-4と肥満の間における興味深い相関性について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9250274/

肥満(BMI≥30kg/ m2)は、健康上の合併症を引き起こし、平均余命を最大約20年短縮します。これは主に、2型糖尿病、心血管疾患、特定の種類の癌など、多くの非感染性疾患を発症するリスクが大幅に増加しているためです。

Gal-4は、健康な人の胃腸管でほぼ例外なく発現していて、腸の炎症を制御する役割を果たします。腸粘膜での炎症性サイトカインの産生を減少させ、Gal-4ペプチドをノックダウンすると、結腸直腸癌の発癌率が高くなります。これは、Gal-4が炎症性腸疾患と結腸直腸癌の両方の発症の病態生理学において重要な役割を果たしていることを示唆しています。ただし、Gal-4の生理学的役割は多面的であり、さらに、頂端側タンパク質の輸送、脂質ラフトの安定化、腸の創傷治癒、細菌性病原体との免疫反応が含まれます。疫学データはまた、心血管疾患へのGal-4の関与を強く示唆しており、心血管疾患および糖尿病の発症の予測バイオマーカーと見なされる可能性があることを示唆しています。

本研究においては、肥満の入院患者と肥満の非入院患者を比較すると、Gal-4レベルは、完全に調整されたロジスティック回帰モデルにおいて、強く肥満の入院患者と相関していることが分かりました(OR 1.72; CI95%1.16–2.54; p = 0.007)。

面白いですね!?

神経膠腫幹細胞の成長と代謝の再プログラミングにおけるGalectin-1の役割

Department of Cancer Biology and Pharmacology, University of Illinois College of Medicine at Peoria, IL USAらのグループは、Gal-1が神経膠腫幹細胞の成長と代謝の再プログラミングに大きく関わっていることを示しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9247167/

ガレクチン1(Gal-1)とガレクチン3(Gal-3)は、神経膠腫に関連して良く研究されています。 Gal-1は、細胞表面および細胞外マトリックス上のβ-ガラクトース分子に結合します。過去の多くの研究は、Gal-1の発現が腫瘍(結腸癌、乳癌、肺癌、頭頸部癌、前立腺癌、および神経膠腫)の増殖や浸潤と言った攻撃性の高さと悪性度の進行と相関していることを示しており、Gal-1が癌において重要な役割を果たしていることを示唆しています。

本研究はは、Gal-1が低酸素症の診断マーカーである炭酸脱水酵素IX(CA-IX)によって媒介されるメカニズムを通じて、神経膠腫幹細胞(GSC)代謝において重要な役割を果たしていることを強調しています。 Gal-1はHIF-1αの転写制御下にあり、Gal-1はCA-IXとの物理的結合を介して代謝に影響を及ぼします。Gal-1をサイレンシングすると、CA-IXの発現が減少するため、ワールブルク効果が逆転します。従って、Gal-1/CA-IXシグナル伝達経路を標的とすることは、神経膠腫におけるワールブルク効果を逆転させ、神経膠腫幹細胞誘発性の癌増殖の進行を阻害するための新しい戦略を提供します。


where, GAPHD: Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase; NPC: neural progenitor cells

マウスモデルにおいて、Gal-1のサイレンシングが生存率を大きく改善することが示されています。

アーバスキュラー菌根菌の共生に欠かせないプロモーターとは

CUHK Shenzhen Research Institute, No. 10 Yuexing 2nd Road, Nanshan, Shenzhen, Chinaらのグループは、イネのPhosphate Response Regulator 2(PHR2)は、アーバスキュラー菌根菌(AFM)による根のコロニー形成に欠かせないと述べています。 PHR2変異体の場合には、根のコロニー形成は、リン濃度が低い場合大幅に減少しますが、PHR2の発現を増加させると、リン濃度が高い場合での根のコロニー形成を部分的に救済します。
https://www.nature.com/articles/s41467-022-27976-8

植物が十分なリンを得ると、SPX(SYG1/PHO81/XPR1)タンパク質は、PHR2の核への転座、およびPHR2のアーバスキュラー菌根菌関連遺伝子を含むリン飢餓誘導遺伝子のプロモーターへの結合を阻害します。これにより、ストリゴラクトンの産出が少なくなり、Myc-Factors(転写因子群)の認識と真菌の侵入に必要な遺伝子の発現が低下し、共生の発達が妨げられます。

しかし、リンが不足すると、SPXタンパク質は分解され、その結果、PHR2は活性状態を維持することが出来、プロモーターのP1BSエレメントに結合して、根圏の真菌を活性化するためのストリゴラクトンの生合成に関与するCCD7などアーバスキュラー菌根菌にとって重要な遺伝子、アーバスキュラー菌根菌の共生確立やイネブラスト菌への耐性に必要なCERK1、真菌やバクテリアの認識に必要なSYMRK、転写因子NSP2、根のコロニー形成を促進するアポカロテノイドの生合成に関与するZAS、および真菌からのリンの取り込みに必要なアーバスキュラー菌根菌に特異的なリントランスポーター遺伝子PT11(アーバスキュラー菌根周囲の膜に局在する)らを活性化します。その結果、低リン濃度の状態では、根はストリゴラクトンの産生量を増やし、真菌の存在を感知することができ、真菌は根にコロニーを形成するように活性化され、アーバスキュラー菌根周囲の膜に局在する栄養素輸送体を介して植物とアーバスキュラー菌根菌の共生が機能するようになります。
このようにして、アーバスキュラー菌根菌の共生の確立は、PHR2によって調節されるリン飢餓応答の結果として可能になると考えられます。

Arb.: Arbuscules; Ves.: Vesicles; phr2(C): CRISPR-Cas9 generated phr2 mutant

SARS-CoV-2 オミクロン BA.4/BA.5株とBA.1株の間には、その重症化リスクに差異はない

Health Intelligence, Western Cape Government: Health and Wellness, South Africaらのグループは、SARS-CoV-2 オミクロン BA.4/BA.5株の重症度について報告してます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9258293/

BA.4/BA.5に感染した3,793人の患者と以前の流行株の190,836人の患者の間でそのリスクを比較した結果、重度の入院/死亡のリスクはBA.4/BA.5株とBA.1株で類似しており(調整済みハザード比[aHR] 1.12; 95%信頼区間[CI] 0.93; 1.34)、両方のオミクロン株は、以前の株(ベータやデルタ株など)よりも深刻な結果のリスクが低いことが分かりました。

イネの根圏:アルスロバクター属が優れた植物成長促進細菌となる

Department of Life Science, Dongguk University-Seoul, Goyang 10326, Koreaのグループは、アルスロバクター GN70をイネの根圏に接種することで、シュートの長さ、根の長さ、新鮮な植物重量、および乾燥した植物重量が有意に増加したと報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9228311/

この研究では、培養法で504株の根圏細菌を分離し、各株の植物成長促進特性がテストされました。IAAの産生量、植物成長促進特性、および病原性微生物に対する拮抗作用の観点から、アルスロバクター GN70が、実験室および温室条件下でですが、イネへの接種に最適として選択されました。GN70菌は根に効率よく定着し、細胞外高分子マトリックスを生成し、イネの成長、側根、および重量を促進しました。また、このGN70菌は、植物およびヒトの病原体に対して拮抗作用を示すことも分かりました。

GN70と命名されたアルスロバクターは、Sphingomonas、Ideonella、Burkholderia、およびAgromycesを含む他の植物成長促進細菌の中で、最も高いIAAの産生量(50.3 µg/mL)を示しました。
アルスロバクター GN70は、下図に示すように、イネの根の表面に効率よく定着し、コロニーを形成します。

(a) アルスロバクターのコロニー形成, (b) コントロール

アルスロバクター GN70は、細胞外高分子マトリックスを産生し、これは、水分を保持したり、土壌の水分保持能力を高めて、水不足のストレス下でバクテリアや植物の根を助けることができます。バイオフィルムを形成する能力は、細菌の生存を強化し、さまざまな植物成長促進細菌の持つ関連メカニズムを通じて植物の成長も強化します。 GN70は、植物成長促進剤、植物病原菌の抑制剤、および水不足ストレスの緩和剤として利用できます。GN70の抗真菌活性は、イネの小穂腐敗病を引き起こすFusarium proliferatum KACC 44025に対して優れた拮抗作用を示しました。

アルスロバクター GN70を接種したイネの種子の場合、植物成長促進効果は顕著であり、t検定に基づいて評価した結果、シュートの長さ、根の長さ、新鮮な植物重量、および乾燥した植物重量がそれぞれ143.5%、83.5%、112.1%、および256.7%と大幅に増加していました。

Gal-7と自然免疫の関連性について

Joint Program in Transfusion Medicine, Department of Pathology, Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USAらのグループは、自然免疫レクチンであるガレクチン-7(Gal-7)が、様々な異なる微生物に結合し、これらの微生物はすべて、血液型のような抗原の特徴を共有してると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9218387/

ガレクチン-3(Gal-3)、ガレクチン-4(Gal-4)、およびガレクチン-8(Gal-8)を含むガレクチンファミリーの幾つかのメンバーは、血液型Aおよび血液型Bに高いアフィニティーを持って結合することが知られています。以前の研究では、Gal-3、Gal-4、およびGal-8が血液型のような分子模倣を利用する微生物に結合して殺傷することが示されましたが、ガレクチンファミリーの他のメンバーがどの程度同様に血液型の分子模倣に対して自然免疫を示すのかという事に関しては、まだ完全には分かっていません。

本研究においては、Gal-7は、血液型の分子模倣を有する微生物に結合して殺傷する能力を持っていることが実証されました。但し、Gal-3、Gal-4、およびGal-8とは異なり、Gal-7は哺乳類のA抗原およびB抗原に対してほとんどアフィニティーを示しません。それにも関わらず、Gal-7は、血液型のような特徴を持つ糖鎖を発現する複数の微生物に対して高い特異性を示しました。これらの結果は、ガレクチンファミリーメンバー間の抗菌活性がGal-3、Gal-4、およびGal-8に限定されず、Gal-7も同様に血液型様抗原を発現する微生物に結合して殺傷する能力を持っていることを示しています。

CFG糖鎖アレイを使用したマイクロアレイ研究から、0.04μMで、Gal-7は600種類近くの糖鎖構造の内のわずかに3つ、タイプ2(Galβ1-4GlcNAc)血液型A構造、および2つのH抗原でキャップされた構造を含むポリラクトサミン(polyLacNAc、i血液型)にアフィニティーを示しました。 3.3μMでは、Gal-7は、血液型B抗原を含む幾つかの糖鎖を含む糖鎖構造へのアフィニティーを示しました。 10μMでは、Gal-7は、2分岐N-型糖鎖やポリ-N-アセチルラクトサミン(polyLacNAc)構造を持つものなど、他のガレクチンファミリーメンバーによって認識される糖鎖構造を含む一般的な非血液型にもアフィニティーを示しました。広範囲の濃度に渡るGal-7の選択的糖鎖結合特異性は、他のガレクチンに関する以前の報告とは区別され、Gal-3、Gal-4、およびGal-8とは異なり、Gal-7は血液型陽性微生物にそう簡単には関与しない可能性を示しています。

Gal-7や他のガレクチンが微生物を殺傷するメカニズムは不明なのですが、この研究結果は、哺乳類で発現する古代の糖鎖結合性タンパク質ファミリーが存在し、それが血液型糖鎖抗原の特徴を利用するさまざまな微生物を自然免疫的に標的とすることができるということを示しています。