アーバスキュラー菌根菌の共生に欠かせないプロモーターとは

CUHK Shenzhen Research Institute, No. 10 Yuexing 2nd Road, Nanshan, Shenzhen, Chinaらのグループは、イネのPhosphate Response Regulator 2(PHR2)は、アーバスキュラー菌根菌(AFM)による根のコロニー形成に欠かせないと述べています。 PHR2変異体の場合には、根のコロニー形成は、リン濃度が低い場合大幅に減少しますが、PHR2の発現を増加させると、リン濃度が高い場合での根のコロニー形成を部分的に救済します。
https://www.nature.com/articles/s41467-022-27976-8

植物が十分なリンを得ると、SPX(SYG1/PHO81/XPR1)タンパク質は、PHR2の核への転座、およびPHR2のアーバスキュラー菌根菌関連遺伝子を含むリン飢餓誘導遺伝子のプロモーターへの結合を阻害します。これにより、ストリゴラクトンの産出が少なくなり、Myc-Factors(転写因子群)の認識と真菌の侵入に必要な遺伝子の発現が低下し、共生の発達が妨げられます。

しかし、リンが不足すると、SPXタンパク質は分解され、その結果、PHR2は活性状態を維持することが出来、プロモーターのP1BSエレメントに結合して、根圏の真菌を活性化するためのストリゴラクトンの生合成に関与するCCD7などアーバスキュラー菌根菌にとって重要な遺伝子、アーバスキュラー菌根菌の共生確立やイネブラスト菌への耐性に必要なCERK1、真菌やバクテリアの認識に必要なSYMRK、転写因子NSP2、根のコロニー形成を促進するアポカロテノイドの生合成に関与するZAS、および真菌からのリンの取り込みに必要なアーバスキュラー菌根菌に特異的なリントランスポーター遺伝子PT11(アーバスキュラー菌根周囲の膜に局在する)らを活性化します。その結果、低リン濃度の状態では、根はストリゴラクトンの産生量を増やし、真菌の存在を感知することができ、真菌は根にコロニーを形成するように活性化され、アーバスキュラー菌根周囲の膜に局在する栄養素輸送体を介して植物とアーバスキュラー菌根菌の共生が機能するようになります。
このようにして、アーバスキュラー菌根菌の共生の確立は、PHR2によって調節されるリン飢餓応答の結果として可能になると考えられます。

Arb.: Arbuscules; Ves.: Vesicles; phr2(C): CRISPR-Cas9 generated phr2 mutant