2024年のノーベル物理学賞に甘利俊一先生が入っていないのは変だ

2024年のノーベル物理学賞をニューラルネットワークに貢献した2名の科学者が受賞したのは周知の事実です。
自分が富士通に在籍していた時期、ニューラルネットワークの先駆けとなる甘利俊一先生の論文を読み、将来のコンピューターとしての可能性を熱く仲間と語り合っていたことを思い出し、甘利先生が受賞者に入っていないことにとても違和感を覚えました。
因みに、当時のパソコンの能力では、ニューラルネットワークをソフトウェアーとして実現するには無理があり、ハードウェアーとしての構築を仲間とともに考えていました(笑)。

甘利先生の先駆的な研究:
1.A Theory of Adaptive Pattern Classifiers、1967年
2.Characteristics of randomly connected threshold-element networks and network systems、1971年
3.Learning Patterns and Pattern Sequences by Self-Organizing Nets of Threshold Elements、1972年
4.Characteristics of Random Nets of Analog Neuron-Like Elements、1972年

ヒト内在性レクチンマイクロアレイ

Department of Life Sciences, Imperial College London, London, United Kingdomのグループは、ヒト内在性レクチンマイクロアレイについて報告しています。
https://www.jbc.org/article/S0021-9258(24)02371-8/fulltext

7つの異なる構造グループから、39個の異なる糖鎖結合性ドメインを持つヒト内在性レクチンマイクロアレイがこのグループによって開発されました。
次が搭載されているレクチンのグループとリストです。
MBP, SP-A, SP-D, Colk1
MMR CRD4, Langerin, DC-SIGN, DC-SIGNR, Prolectin, LSECtin, Endo180 CRD2, Mincle, Dectin-2, BDCS-2, Dectin-1
ASGPR1, ASGPR2, MGL, SRCL
Galectin-1, Galectin-2, Galectin-3, Galectin-7, Galectin-4N, Galectin-4C, Galectin-8C, Galectin-9N, Galectin-9C
Siglec-1, Siglec-3, Siglec-5, Siglec-7, Soglec-9, Siglec-11
Intelectin-1, Intelectin-2
MMR-CR, Ficolin-1, Chl3-L2

がん幹細胞をレクチンでより効果的に特定する

UMR INSERM 1308 CAPTuR, Faculty of Medicine, University of Limoges, Limoges, Franceらのグループは、より正確にがん幹細胞を検出する新しい方法について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41416-024-02839-9

植物レクチンの組み合わせ (MIX: UEA-1 および GSL-1) が、不均一な非小細胞肺がん (NSCLC) 集団からがん幹細胞を検出するための新しいアプローチとして検証されています。

がん幹細胞上に発現した糖鎖修飾パターンを認識するレクチンの組み合わせは、CD133よりもがん幹細胞の検出と選別においてより効率的であることが実証されています。
CD133は既知のがん幹細胞マーカーとして知られています。

ガレクチン-8は大腸がん細胞におけるTGF-β反応を非正規的に変化させることができる

Genomics Research Center, Academia Sinica, Taipei, Taiwanのグループは、糖鎖結合性タンパク質によってTGF-βシグナル経路が変調され、大腸がんの転移に変化が起こると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11375092/

本研究は、ガレクチン-8は、TGF-βの正規なリガンドではありませんが、大腸がん細胞におけるTGF-β応答を非正規的に変化させることができ、大腸がんの進行を抑制することを実証しています。

詳細には、ガレクチン-8の非存在下では、TGF-βはtype II TGF-β receptor (TβRII)に結合し、それによって上皮間葉転換(EMT)を促進します。
ガレクチン-8 の存在下では、ガレクチン-8 はガラクトシル化N-型糖鎖を介して TβRII に結合し、その結果 TGF-β シグナル伝達媒介EMTが減少します。
大腸がんの進行中にガレクチン-8の発現が下方制御されることも示されました。
ガレクチン-8の発現は、T1 期に比べてT4 期で著しく低下していました。

高粘液粘性 (HMV) および非HMV 肺炎桿菌臨床分離株の表面糖鎖エピトープの違いをレクチンで見える化する

Department of Biological Physical Chemistry, Instituto de Química Física Blas Cabrera, Consejo Superior de Investigaciones Científicas, Madrid, Spainらのグループは、肺炎桿菌臨床分離株の自然免疫レクチン、シグレックやガレクチンを用いた認識について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11324429/

肺炎桿菌は、鼻咽頭や胃腸管に頻繁に定着する日和見細菌で、他の組織に侵入すると、特に免疫不全の人に重篤な感染症を引き起こす場合があります。
下図に示すように、シアル酸、ガラクトース、およびマンノースに特異的なレクチンによるこれらの細菌の認識には顕著な違い認められました。

排水処理で使用されるバクテリアが作り出すバイオフィルムについて

Department of Biotechnology, Delft University of Technology, The Netherlandsのグループは、排水処理で使用されるバクテリアが作り出すバイオフィルム(EPS)の解析について報告しています。
https://pubs.acs.org/doi/epdf/10.1021/acsestwater.4c00247

DNAの複製やそのタンパク質への翻訳とは異なり、糖鎖の生合成は既存のテンプレート分子によって指示されるわけではありません。糖鎖の生成は、生合成機構、利用可能な糖ヌクレオチド、細胞内および細胞外環境からのシグナル伝達など、幾つかの要因によって決定されます。 従って、糖鎖の存在は動的であり、遺伝的要因と環境的要因の両方の影響を受けるが故に、EPS の糖鎖組成を研究することは非常に困難です。

通常、環境サンプル中の糖タンパク質を研究するアプローチには、個々の糖鎖構造を同定し、質量分析でタンパク質を更に特徴付けることが含まれます。一方、レクチンマイクロアレイは、タンパク質表面上の糖鎖のハイスループットなプロファイリングが可能であり、考えられるタンパク質の糖鎖修飾パターンのより広範なスクリーニングを可能にします。
本研究では、両方のアプローチを組み合わせることによって、糖タンパク質の包括的な理解が可能となり、構造的特徴付けと機能的意味の間のギャップを埋めることができると結論付けています。

胚の着床には、胚と受容子宮内膜の糖鎖/レクチンの相互作用が必要

Shenzhen Key Laboratory of Metabolic Health, Center for Energy Metabolism and Reproduction, Shenzhen Institute of Advanced Technology, Chinese Academy of Sciences, Chinaのグループは、胚着床における糖鎖とレクチン相互作用の重要性について報告しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2090123224003060?via%3Dihub

栄養膜L-セレクチンと子宮内膜sLeX間の相互作用は、胚着床の根底にある糖鎖修飾依存性の接着機構として報告されていますが、ヒト胚の栄養外胚葉で発現するSiglec-6が、sTnで覆われた受容子宮内膜を認識し、胚着床を促進しているということも今回発見されたようです。

抗リン脂質症候群患者のIgGの糖鎖修飾変化をレクチンマイクロアレイで調べる

Department of Rheumatology and Clinical Immunology, Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical College, Beijing, Chinaらのグループは、抗リン脂質症候群(APS)患者のIgGの糖鎖修飾変化をレクチンマイクロアレイで調査した結果を報告しています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sji.13366

APS患者のIgG複合体は、健常者コントロールおよび疾患コントロールと比較して、GalNAc残基の発現量が有意に増加していることが判明しました。このことは、IgG上のGalNAc修飾の上昇がAPSの進行に関与していることを示唆しています。
ただし、N-型糖鎖修飾と比較して、O-型糖鎖修飾がIgGの構造および機能に及ぼす影響については、未だ解明されていません。

大腸がんから分泌されるエクソソームの糖鎖修飾変化をレクチンマイクロアレイで検査する

State Key Laboratory of Electroanalytical Chemistry, Changchun Institute of Applied Chemistry, Chinese Academy of Sciences, Changchun, Chinaのグループは、レクチンマイクロアレイを用いたエクソソームの糖鎖プロファイリングについて報告しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0003267024006202?via%3Dihub

この研究では、レクチンマイクロアレイを用いて、3つの大腸がん細胞株 (SW480、SW620、HCT116) と1つの正常結腸上皮細胞株 (NCM460) の間のエキソソーム表面の比較糖鎖プロファイリング解析が行われています。その結果、UEA-Iレクチンを使用することで、SW480大腸がん細胞由来のエクソソームの異常な糖鎖修飾を検出できることが示されました。

さらに、この実験では、UEA-I レクチンマイクロアレイの検出限界感度 (LOD) は 2.7 × 105個/mLと計算されました。

内皮細胞由来の細胞外小胞の糖鎖修飾の特徴

Shemyakin and Ovchinnikov Institute of Bioorganic Chemistry RAS, Moscow, Russiaのグループは、 内皮細胞由来の細胞外小胞の糖鎖修飾の特徴について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11171894/

下図に示すように、細胞外小胞の表面糖鎖と内皮細胞の表面糖鎖を比較すると、細胞外小胞の表面糖鎖はN-型糖鎖としてのα2-6-シアル化形態が大半を占めており、Man含有糖鎖のレベルが細胞外小胞で大幅に減少していることが明確に示されています。