浸潤性の膀胱がんは、VVAレクチンで特異的に認識される

岐阜大医学部泌尿器科らのグループは、浸潤性の膀胱がんに見られる特異的な糖鎖マーカーについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10806140/

本研究では、VVL(VVAレクチン)が浸潤性膀胱がん癌の症例に存在することが判明しました。浸潤性膀胱がんでは、非浸潤性膀胱がんよりも強いVVL染色が観察されました。

VVLは、ポリペプチドTn抗原内のセリンまたはスレオニンに結合したGalNAc残基を認識します。 Galβ1,3GalNAc-α-Ser/Thr (T抗原) や GlcNAcα1,6-GalNAc-α-Ser/Thr (末端 α1,4- および β1,4-結合 GalNAc を含む) などの他の糖鎖構造にもVVLは結合しますが、その親和性は低くなります。

本研究成果から、VVLが将来の臨床研究におけるDDSの有望なターゲットとして機能する可能性が在ることが示唆されました。

下水などの廃水処理プロセスに使用される好気性粒状汚泥中の細菌が作り出すEPSの糖鎖変化をレクチンマイクロアレイで調べる

Department of Biotechnology, Delft University of Technology, Van der Maasweg 9, 2629 HZ Delft, The Netherlandsらのグループは、好気性粒状汚泥中の糖鎖組成の変化について、レクチンマイクロアレイとGC-MSらを用いて評価した結果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10788855/

好気性粒状汚泥は廃水処理に使用され、単一の汚泥システム内で炭素、窒素、リン、およびその他の汚染物質を除去することができる微生物凝集体です。本研究では、好気性粒状汚泥から抽出した幾つかの細胞外高分子物質(EPS)サンプルの糖鎖プロファイルの動的変化をレクチンマイクロアレイとGC-MSらを用いて評価しています。

EPS は、排水処理リアクターの運転開始後、海水条件への適応中のさまざまな段階、即ち、運転開始初期、運転開始後18日目、および 30日目で収集されました (EPSt0、EPSt18、および EPSt30と略す)。

レクチンマイクロアレイの適用により、EPS中に糖タンパク質の存在が確認され、海水条件への適応に伴う糖タンパク質の変化がレクチンマイクロアレイにより見事に補足されました。更に、レクチンマイクロアレイの結果は、GC-MSらによって実行された他の分析の結果と一致しており、レクチンマイクロアレイが、粒状汚泥などの微生物凝集体中の糖タンパク質のハイスループットな糖鎖プロファイリングに適したプラットフォームであることを示唆しています。

興味深いことに、EPSt18にはEPSt0およびEPSt30よりも多くの糖タンパク質が存在しており、EPSt18の糖鎖修飾パターンは著しく多様です。これは、環境変化、つまり塩分濃度の増加に応答して、微生物の適応戦略のひとつがタンパク質の糖鎖修飾の量と多様性を変化させる可能性があることを示しています。

妊娠しているかいないかを尿の糖鎖修飾変化で読み取る

Shaanxi Key Laboratory for Animal Conservation, College of Life Sciences, Northwest University, Chinaらのグループは、尿中の糖鎖修飾変化から妊娠しているかいないかを診断する可能性について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10783609/

本研究では、レクチンマイクロアレイを使用して、ゴールデンスナブノーズサル (GSM) の尿中の糖鎖修飾パターンの違いが調査されています。 N-型糖鎖の種類、量、構造、N-型糖鎖のシアリル化とフコシル化の割合は、妊娠女性と非妊娠女性、および(非妊娠)女性と男性の間で異なることが示されています。この方法は、妊娠の診断や性別識別のための参考情報を提供し、動物の管理に役立つかも知れません。

ここで、pregnant (P)、non-pregnant (NP) females, および females (F)、males (M)であることを示す

耐塩性を持つアルファルファの根圏細菌叢には、バチルス、エンシファー、そしてシュードモナスが多く存在する

Key Laboratory of Grassland Resources of the Ministry of Education and Key Laboratory of Forage Cultivation, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot, China, らのグループは、耐塩性を示すアルファルファに見られる特徴的な根圏細菌叢について報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2023.1324333/full

著者らは、耐塩性のアルファルファ品種の根圏細菌叢には、バチルス、エンシファー、シュードモナスがより多く存在することが、その耐塩性の向上を決定する上で重要であるようだと報告してます。

干ばつと洪水が与えるトウモロコシの根圏細菌叢の変化について

Nanjing Agricultural University, Chinaらのグループは、干ばつと洪水が与えるトウモロコシの根圏細菌叢の変化について報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2023.1295376/full

以下のような結果が得られています。
(1) 放線菌とプロテオバクテリアの二つの門の合計が細菌全体の50%近くの存在量を占め、
(2) 干ばつ期と再潅水期には二つの干ばつ-洪水突然変化(DFAA)グループにおいて放線菌が最も優勢な門であり、洪水期と収穫期にはプロテオバクテリアが最も優勢な門となりました。
参考に、以下の図において、DFAA1グループは微量降雨から洪水の状態を意味し、DFAA2は継続的な干ばつから洪水の状態を意味します。

ここで, Aは干ばつ期を示し、Bは洪水期を示す

「土を育てる」ゲイブ・ブラウンが面白すぎる

この本が面白すぎます。
“土を育てる:自然をよみがえらせる土壌革命”

スマート農業とか、環境再生型農業とか、カーボン・ファーミングとか、次世代の農業を特徴づける幾つかのキーワードがあります。
スマート農業について、例えば、農林水産省が掲げる施策があります。
“スマート農業の展開について”

環境再生型農業という言葉は、割と実現したいことを的確に表現しているので、敢えて関連リンクを張ることはしませんが、地球環境を維持しながら持続可能な農業を実現するということです。
これがまさにゲイブ・ブラウンの「土を育てる」という本に書かれています。

カーボン・ファーミングという言葉はとても分かりにくいです。
例えば、同じく農林水産省の報告書があります。
“カーボン・ファーミングに関する報告書(最終版)”
これは同じく環境再生型農業と言っても、植物の生産性を上げるということ自体よりも、地球温暖化を抑え込むためのCO2の排出削減が主たる課題となっているものと理解しています。

スマート農業から話を始めましょう。
スマート農業というのは、農業の担い手の減少と高齢化の進行により労働力不足が深刻な問題となってきたというのが基本的な発端であり、農業の自動化を進めようというのが出発点です。
自動化を進めようとすると、第二次産業が見本ですが、作業の標準化とマニュアル化が必要になってきます。
それに比べて第一次産業である農業は、まだまだ「匠の技」の世界です。
従って、農業に関するあるとあらゆる現象を数値化してデータベース化し、そこに潜む関連性を作業のアルゴリズムに落とす必要があります。
最近のはやりで、そこをAIにやらしてしまえ~~というのがスマート農業の「スマート」の意味ですよね。

しかし、数値化するのは良いのですが、
本当に必要なものを数値化しているのか?
技術的に数値化しやすいものだけ数値化して満足してないか?
環境再生型農業の実現には最も大事なことなのに数値化が難しいからと細菌のそれを無視してないか?
というところに大問題があるのです。
この答えが、ゲイブ・ブラウンの「土を育てる」に書かれています。

植物と微生物の共生関係、ここをきちんと数値化できていないスマート農業なんて意味ありません。
ゲイブ・ブラウンは、土の5原則を示しています。
1.土を耕さない
2.土をカバークロップで覆う
3.あらゆる面で多様性を高める
4.土の中に生きた根を持つ
5.動物を組み込む
この意味は、この本を読むと良く分かります。

自分は、見えない根圏細菌・土壌細菌のON-SITEでの見える化を推進しています。
その時のキーワードは「安価、短時間測定、実用感度、簡単な操作」ということになります。
これ無くしては、スマート農業も環境再生型農業もカーボン・ファーミングも実現が遠のきます。

カナバリン・ビローサの種子から得られた「Cvill」と名付けられたレクチンの構造と特性

Laboratory of Biochemistry and Glycobiology, Department of Biotechnology, Ghent University, Belgiumらのグループは、カナバリン・ビローサの種子から得られた「Cvill」と名付けられたレクチンの構造と特性について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10649158/

Cvillは、Canavalia villosa の種子から単離された ConA様マンノース特異的レクチンです。

レクチン構造は、他のConA 様レクチンと同様に、237アミノ酸残基で構成されています。

Cvillは、β サンドイッチとしても知られる典型的なマメ科植物のレクチン折り畳み構造を持ち、サンドイッチに似たふたつの重ねられたベータシートの存在を特徴とします。これらのベータシートは逆平行のストランドで構成されており、一方のベータシートは6本の長くて平らなベータストランドで構成され、もう一方のベータシートは7本の湾曲したストランドで構成されています。Cvillは、二量体と四量体構造を取り得ると予測されました。

糖鎖アレイの実験により、Cvillは末端α-マンノシル残基および N-型糖鎖のトリマンノシドコアに対して親和性を示すことが示されました。

Cvill は、試験したすべての細胞株に対して用量依存的な細胞毒性を示しましたが、この毒性は糖鎖を介したものです。 Cvillは、HeLa細胞について 48 時間のインキュベーション期間後に 97.0 μg/mLのIC50 値を示しました。 Cvillは線維肉腫 (HT1080 細胞) および NHDF 細胞の生存率にも影響を及ぼし、48時間のインキュベーション期間後のIC50 値は 116.08 μg/mL および 108.34 μg/mL でした。

肝細胞癌では、ラミニン受容体インテグリンα6β1のGal修飾が減少し、癌細胞の浸潤が加速する

Graduate Institute of Anatomy and Cell Biology, College of Medicine, National Taiwan University, Taipei, Taiwanらのグループは、ベータ 1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ (B4GALT) が肝細胞癌では発現が低下しており、アガラクト型のN-型糖鎖の発現を促進し、インテグリンα6およびインテグリンβ1のラミニン結合活性を強化して、肝細胞癌細胞の浸潤が促進されると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10618527/

ハイマンノースN-型糖鎖の増加は子宮内膜の脱落膜化を妨げ、妊娠不全の原因となる

Liaoning Provincial Core Lab of Glycobiology and Glycoengineering, Department of Biochemistry and Molecular Biology, Dalian Medical University, Chinaらのグループは、レクチンマイクロアレイを使用した研究により、早期妊娠女性と比較して、流産患者の脱落膜組織ではハイマンノースN-型糖鎖修飾が増加していることが分かりました。それに呼応してマンノシダーゼであるMAN1A1が減少していました。搭載レクチンの中でも、マンノース結合レクチンである、NPA、HHL、LCHA、CALSEPA、および GNAらが顕著な変化を示していました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10616321/

MAN1A1の発現低下による異常に昂進したハイマンノース化は、子宮内膜の脱落膜化を阻害しました。
Long non-coding RNA (LncRNA) のスクリーニングにより、流産患者の脱落膜組織でLncNEAT1 が増加していることが明らかになりました。
更に、LncNEAT1はNPM1-SP1転写複合体と相互作用し、MAN1A1発現を阻害することによって、子宮内膜の脱落膜化と胚の着床を妨げることが判明しました。

SARS-CoV-2とバクテリアの重複感染

Department of Experimental Immunology, Amsterdam UMC location University of Amsterdam, The Netherlandsらのグループは、SARS-CoV-2感染によって活性化されるヒト樹状細胞(DC)に発現する細菌に対する主要な受容体であるTLR4を抑制する新規経路を発見したと報告しました。
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1011735

SARS-CoV-2は、C-型レクチン受容体DC-SIGNと相互作用し、Raf-1を介したTLR4シグナル伝達の抑制を引き起こすようです。この結果として、SARS-CoV-2はDC-SIGNを介して樹状細胞の免疫機能を積極的に抑制してしまい、新型コロナウイルス感染症と細菌の重複感染が起こると、死亡率の上昇を引き起こすことになるということです。