植物の病原菌感染で引き起こされる”Cry for Help”応答の裏側

State Key Laboratory of Efficient Utilization of Arid and Semi-arid Arable Land in Northern China, Institute of Agricultural Resources and Regional Planning, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing, Chinaらのグループは、如何にして病原菌を抑制し植物成長促進効果を生む根圏細菌叢の形成を誘起するのかという”Cry for Hlep”応答の背景について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41467-024-46254-3

良く知られたモデル病原菌株 Pseudomonas syringae pv.tomato (Pst) DC3000 とその非病原性誘導菌株 (D36E、D36EFLCおよびD36EHPM) を使用し、シロイヌナズナをモデル植物として一連の実験が行われています。

DC3000またはその誘導体の何れかによる処理により、根からの分泌物として長鎖有機酸 (LCOA) およびアミノ酸の相対含有量が増加していました。根圏細菌叢としては、いずれの場合でもプロテオバクテリア門 (32.1% ~ 38.3%) と放線菌門 (15.4% ~ 20.7%) が根圏で最も豊富な細菌グループであり、属レベルでは、D36E および D36EFLC 処理では Devosia属 (プロテオバクテリア門に属する) が増加していました。興味深いことに、Devosia属の存在量は、根滲出液中のL-リンゴ酸およびミリスチン酸と負の相関を示し、4-ヒドロキシピリジンとは正の相関を示しました。

最後に、D36EとD36EFLCの代謝産物だけでも、”Cry for Help”反応を誘発するのに十分であることが示されました。
従って、本研究は、非病原性菌株とそのmicrobe-associated molecular patterns (MAMPs)が病気を抑制する根圏細菌叢の形成を誘導するエリシターとして機能し、実際の農業応用に対する可能性を大いに示すものであると考えられます。