キメラ抗原受容体(CAR)-NK細胞をSARS-CoV-2感染の治療に使用する

The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USAらのグループは、SARS-CoV-2感染の治療のための糖タンパク質標的キメラ抗原受容体(CAR)-NK細胞を使用した新しいアプローチを提案しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8732772/

NK細胞は免疫系の自然免疫リンパ球であり、ウイルス感染の制御に重要な役割を果たしており、CAR-T細胞およびCAR-NK細胞は、癌や感染症に対する非常に有望な新しい免疫療法として着目されています。

通常、NK細胞表面に発現された合成受容体は、ターゲット細胞の表面タンパク質に結合するように設計されています。この研究では、ターゲットとなる糖鎖修飾に対する結合特性を持つユニークな細胞膜外発現分子(即ち、レクチン)を利用してCARを設計しました。糖タンパク質、特にN-型糖鎖をCARで標的化することはまれです。本研究は、SARS-CoV-2のSpikeタンパク質に発現したNー型糖鎖を標的とする最初のCARであり、おそらく、前臨床試験で設計および機能的にテストされた最初のレクチンベースのCARでもあります。

レクチンは、何百万年にもわたって糖鎖に対して非常に強力で選択的な結合特性を持つように進化してきたものであり、H84T-BanLec CARは、ウイルスタンパク質の異常な糖鎖修飾パターン(この場合はハイ・マンノース)を標的とするという点で、まったく新しいアプローチです。ここで、BanLecは、ハイ・マンノース型糖鎖への結合特異性を有することが知られているレクチンであり、SARS-CoV-2 Spikeタンパク質の受容体結合ドメインの近くに存在することが分かっています。

SARS-CoV-2などのRNAウイルスにおいては、ゲノムの突然変異の影響を受けにくい受容体ターゲティングパターンを備えたCARを開発する必要性があり、N-型糖鎖はそのターゲットに成りうると考えられます。