ピロリ菌の根絶前後での胃粘膜の糖鎖修飾の変化:レクチンマイクロアレイを用いた研究

大分大医学部らのグループは、ピロリ菌根絶前後での胃粘膜の糖鎖修飾の変化をレクチンマイクロアレイを用いて評価した結果を報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35238778/

胃前庭部のJacalinおよびMPAのシグナルは、ピロリ菌無感染群の胃粘膜よりも、ピロリ菌感染群で有意に低く、ピロリ菌の根絶から1年後には、そのシグナルレベルは、無感染で見られる値に戻っていました。
胃のLTL、SNA、SSA、およびTJA-Iシグナルは、ピロリ菌感染群で有意に増加し、ピロリ菌の根絶後1年で無感染で見られたレベルに戻りました。

MPAとJacalinは85%の相同性があり、これらのレクチンは、ヒトの癌腫の85%以上で発現するTF抗原に対して特に高い特異性を持っています。
LTLはLewisx、LewisyおよびH-抗原Type IIに結合し、膀胱癌細胞株における癌進行のマーカーであると報告されています。
SNAは、結腸直腸癌、膵臓癌、および肝細胞癌らの診断、転移、および予後のマーカーであると報告されています。 SNAは、肺炎の診断マーカーおよび糖尿病性腎症の進行の予測マーカーでもあると報告されています。 SNA、SSA、およびTJA-Iは、α2-6Siaに対する糖鎖結合特異性を持っています。

この研究の結果は、ピロリ菌感染に起因する糖鎖修飾へのレクチン結合のシグナルレベルが、ピロリ菌の根絶の結果として、無感染で見られるレベルに戻ることを示しています。つまり、このデータは、糖鎖修飾が可逆的であることを示しているという点で興味深いものです。