小麦の根圏:長期間にわたる施肥で、根圏真菌叢がどのように変化するか

State Key Laboratory of Soil and Sustainable Agriculture, Institute of Soil Science, Chinese Academy of Sciences, Nanjing, Chinaらのグループは、小麦の圃場における長期間の施肥が根圏真菌叢に如何なる変化をもたらしているかについて報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35266812/

この論文では、小麦の圃場での長期にわたる5種類の施肥実験(35年以上)から得られた新しい発見が報告されています。NPK肥料のみ、NPKと牛糞混合(NPK+CM)、NPKと豚糞混合(NPK+PM)、NPKと麦わら混合(NPK+WS)、および肥料なしのコントロール間の比較です。

門レベルでは、子嚢菌、担子菌、およびモルティエロ菌が、処理や生息地に関係なく、真菌叢を支配し、得られた全遺伝子配列読取の80%以上を占めていました。興味深いのは、他の処理と比較して、NPK+PM処理において、子嚢菌の相対的な存在量が最も高くなっているということです(根内圏、根圏土壌、およびバルク土壌でそれぞれ96.9%、87.1%、および91.1%)。

次に、真菌叢のα多様性と物理化学的変数(合計P、合計C、合計N、合計K、P、Ca、Mg、Na、Fe、Mnなど)との相関関係が分析されました。ランダムフォレスト分析により、PとZnは常に、根内圏、根圏土壌、およびバルク土壌におけるα多様性の変化に対する最良の予測因子であることが明らかになりました。特に、根圏のPとα多様性の間、および根圏土壌とバルク土壌のZnとα多様性の間には有意な相関関係がありました。PおよびZn濃度が高いほど、根圏真菌叢のα多様性は低くなります
これは次のように考えることができます。豚糞は牛糞よりもP含有量が高く、豚糞を添加した後の土壌と小麦の根のP含有量は牛糞添加よりも有意に高くなっています。従って、長期の豚の糞尿の施肥は、土壌全体から根が適切で容易にアクセスできるPおよびP様栄養素の供給量が増えることとなり、それによって小麦の真菌叢への依存が減少し、それによっておそらく真菌全体の多様性が減少したものと考えられます。Pの場合と同様に、Znを巡る真菌間の資源と生存の競争を、Znに誘起された根圏真菌叢の多様性の変化に関連付けることは合理的だと考えられます。