骨髄性細胞に発現するC-Type lectin receptor 5A (CLEC5A) の発現と機能について

Cancer Immunology & Immune Modulation, Boehringer Ingelheim Pharma GmbH & Co. KG, Germanyらのグループは、骨髄性細胞に発現するC-Type lectin receptor 5A (CLEC5A) の発現と機能について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8896916/

骨髄性DAP12関連レクチン-1(MDL-1)としても知られるCLEC5Aは、病原体の表面に特異的に発現する糖鎖に優先的に結合する骨髄性Syk結合パターン認識受容体です。 CLEC5Aは主に骨髄細胞(単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞)で発現し、IFN-γによってさらに発現が昂進されます。 CLEC5Aが結合するリガンドは、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、そしてまたA型インフルエンザウイルスに発現する糖鎖の末端フコースおよびマンノース構造として同定されました。更に、CLEC5Aは、細菌の細胞壁(リステリア・モノサイトゲネスや黄色ブドウ球菌など)の二糖類(N-アセチルグルコサミンおよびN-アセチルムラミン酸)に結合することも分かっています。機能的には、デングウイルスまたは他の病原体によって引き起こされるCLEC5A受容体の活性化は、炎症誘発性サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、およびIL-17A)およびケモカイン(マクロファージ炎症性タンパク質-1α)、IFN-γ誘導タンパク質(IP-10/CXCL10)、およびマクロファージ由来ケモカイン(CCL22/MDC)の産生を誘導します。 CLEC5Aは、病原体関連抗原だけでなく、いくつかの内因性危険信号も認識し、その結果、無菌性炎症の病因に寄与する可能性があることも判明しています。

このレポートでは、単球由来マクロファージでのCLEAC5Aの発現状態と、α-CLEC5A AbによるCLEC5Aの選択的活性化による機能発現、および自己T細胞の活性化への影響が評価されています。

骨髄性細胞でのCLEC5Aの発現状態
CLEAC5Aの発現状態を幾つかの単球由来マクロファージ(MdM)間で比較しています。炎症性マクロファージ M1、中性マクロファージ M0、腫瘍形成性マクロファージ M2c、およびin vitro腫瘍関連マクロファージ(TAM)です。 CLEC5Aの発現は、単球および他のMdMサブセット(M0およびM2c)と比較して、M1 MdMで有意に上昇しましたが、TAMへの単球の分化はCLEC5Aの発現の低下をもたらしました。

CLEC5A活性化による機能発現
非感染性条件下でのCLEC5Aアゴニストの機能的効果を理解するために、M0 MdMのサイトカイン応答を評価しました。 α-CLEC5A Abに刺激されたM0 MdMにおいて、TNF-α、IL-6、IL-10、IL-1b、CCL22/MDC、CCL17/TARC、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP1)などのサイトカインおよびケモカインの産生が有意に昂進されました。興味深いことに、CLEC5Aの活性化は、CD80、PD-L1、CD206(MRC-1)、CD209(DC-SIGN)などの骨髄細胞特異的表面受容体の発現昂進をももたらしました。

最後に、無菌状態での骨髄細胞の選択的CLEC5Aを介した再プログラミングは、自家T細胞の活性化を促進するには不十分であるように見えました。

レクチンの細胞毒性

Institute of Physiology, University of Zurich, Zurich, Switzerlandのグループは、レクチンの細胞毒性について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8866831/

レクチンによる細胞表面糖鎖の標的化は癌治療の有望なアプローチですが、レクチンベースのアプローチ(レクチン単独または他の治療薬との組み合わせ)はまだ開発の初期段階にあります。糖鎖ターゲティングに基づく効率的な治療法の開発には、標的腫瘍細胞上のレクチンによって誘発される細胞死のメカニズムを深く理解する必要があります。特定のレクチンが異なるタイプの腫瘍細胞で異なるモードの細胞死を誘発することが知られています。たとえば、小麦胚芽レクチン(WGA)は、メラノーマと白血病細胞にアポトーシスを誘導し、パラトーシスのような細胞死によって頸部癌細胞を殺すことなどが知られています。

本研究においては、マウス腺癌細胞(MC-38)と若い成体マウス結腸細胞(YAMC)を使用して、レクチン(MAL I、MAL II、SNA、AAL、WGA、およびECL)処理によって誘起される様々な細胞死経路(アポトーシス、ネクロトーシス、パイロトーシス、パラトーシス、およびオートファジー依存性細胞死)が評価されました。レクチンの細胞毒性によって誘導される細胞死を媒介するシグナル伝達経路を判別するために、細胞死応答に関与する様々な遺伝子をノックアウトしたMC-38細胞のパネルを使用しています。

ノックアウトされた遺伝子は次の通りです:
アポトーシス促進タンパク質BCL2アンタゴニスト/キラー1(BAK1)およびBCL2関連X(BAX)は、内因性アポトーシスを媒介します、内因性アポトーシスのシグナル経路は、DNA損傷などのさまざまな内部細胞ストレス因子に応答して活性化されます。

Fas結合デスドメインタンパク質(FADD)は、外因性アポトーシスを媒介します、外因性アポトーシス経路は、細胞死受容体の活性化に応答して誘導され、その後、 FADDとプロカスパーゼ-8を含む細胞死誘導シグナル伝達複合体を形成し、カスパーゼ-3を切断します。

腫瘍ネクローシス因子受容体1型結合デスドメインタンパク質(TRADD)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ3(RIPK3)、混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)およびカスパーゼ-8(CASP8)は、カスパーゼ非依存性ネクロトーシスを媒介します。

カスパーゼ-1(CASP1)とガスデルミンD(GSDMD)は、パイロトーシスを媒介します、CASP1は、様々な微生物感染や非感染性の刺激に応答してインフラマソームによって活性化されます。この経路はGSDMD切断につながり、これが原形質膜に埋め込まれて細孔ができることで、イオン勾配を乱して水の流入を促進し、細胞の腫れと浸透圧溶解を引き起こします。

結果:
BAX/BAK1複合体の不活性化は、WGA、MAL I、およびAAL処理によって誘発される細胞毒性反応を減少させました。細胞毒性の50%以上の減少は、アポトーシスの古典的なトリガーであるシスプラチンで処理された細胞でみられる効果と同様でした。対照的に、FADDの不活性化は、WGA、MAL I、およびAALによって媒介される細胞死に影響を与えませんでした。

腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)の下流のアポトーシスとネクロトーシスの活性化に必要な別のアダプター分子であるTRADDの不活性化は、MAL Iで処理した細胞の細胞死を減少させましたが、WGAとAALの場合には減少しませんでした。 MLKLの低下が、WGA、MAL I、およびAALの細胞毒性効果を減少させることから、これらレクチンによって誘発される細胞死にネクロトーシス経路が寄与していることが示唆されます。

CASP1またはGSDMDのいずれかの不活化は、MAL Iを介した細胞毒性のわずかな減少のみを示し、MAL I処理に応答したパイロトーシスの部分的な関与を裏付けています。 CASP1の不活化は、MALおよびAALによって誘発される細胞毒性の低下をもたらしました。

アポトーシスの誘導に加えて、多くのレクチンはオートファジーを昂進させ、オートファジー依存性の細胞死を引き起こすことがあります。 LC3-IIはオートファゴソーム膜に関連していまが、レクチンで6時間処理した細胞からの溶解物において、MAL I、AAL、およびWGA処理でLC3-IIの発現が昂進していました。 LC3-IIの増加は、MAL I、AAL、およびWGAによって誘導される細胞死が、古典的なアポトーシスミトコンドリア経路ではなく、オートファジー/リソソーム応答の活性化によって開始された可能性があることを示しています。実際、飢餓によって誘発されるオートファジーを阻害することが知られているシクロヘキシミド(CHX)を添加することにより、3つのレクチンの細胞毒性反応が大幅に低下しました。

小麦の根圏:小麦の進化とともに、その根圏細菌叢も変化している

Plant Breeding and Biotechnology, Faculty of Agriculture, University of Tabriz, Tabriz, Iranらのグループは、小麦の進化に伴って根圏細菌叢も変化していることを示しています。小麦の祖先であるT. uratu とAe speltoides種(1.5から2百万年前)から現在の栽培種であるT. turgidum や T. aestivumに至る系統学的な見地からの進化の歴史とその根圏細菌叢の特徴について、成長期、生殖期での違いも含めて分析しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8881823/

アクチノバクテリアやプロテオバクテリアに属する多くの細菌(科)が、祖先種である (T. urartu, Ae. speltoides)と比べて、栽培種 (T. turgidum and T. aestivum)で顕著に増加していることが分かります(下図参照)。


(A)栽培化された小麦種と(B)野生の小麦種(祖先)における科レベルでの存在量の違いを成長段階ごとに色で示す。オレンジ=成長期、青=生殖期、および緑=両方のステージに共通であることを示す。

COVID-19における重症化に補体の活性化が大きく係わっている:検死サンプル(肺、腎臓)からの知見

Department of Nephropathology, University Hospital Erlangen, Friedrich-Alexander-University (FAU) Erlangen-Nürnberg, Erlangen, Germanyらのグループは、補体の活性化がCOVID-19における重症化に補体の活性化が大きく係わっていると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8884149/

SARS-CoV-2による炎症性サイトカインの過剰産生に関与する可能性のある1つの経路は、補体系の活性化です。自然免疫系に属するこのシステムは、病原体や損傷した細胞が食細胞に取り込まれたり、白血球を引き付けて活性化したり、膜侵襲複合体(MAC)を介して細菌や細胞を直接溶解したりすることにより、感染に対する防御の重要な要素として機能します。

補体経路については、古典的経路レクチン経路、および代替経路の3つの異なる経路が知られています。
古典的経路は、免疫複合体(抗原-IgMおよび抗原-IgG複合体)およびC1qに結合する他の多くの自己および非自己分子によって活性化され、コンフォメーション変化を引き起こし、セリンプロテアーゼであるC1sおよびC1rを活性化します。
レクチン経路は、血中を循環するレクチン(マンナン結合レクチンやフィコリンなどのコレクチン)によって活性化され、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれる微生物表面の特異的な糖鎖パターンを認識し、MAPS-1およびMAPS-2を活性化し、C4をC4aおよびC4bに切断します。
代替経路は常に低レベルでアクティブであり、C3の自発的な加水分解によって開始されます。加水分解されたC3は、セリンプロテアーゼ因子D(CFD)の基質として作用する因子B(CFB)に結合し、C3コンバターゼを形成します。
最終的に、3つの補体経路すべてがC3コンバターゼの活性化につながり、C3をC3aとC3bに切断し、同じ経路を辿ってMACの形成を引き起こします。

この研究では、COVID-19で死亡したヒトと、非COVID-19で死亡したヒトとの検死サンプル(肺、腎臓)との比較研究を通じて、重度のCOVID-患者の肺と腎臓の両方でレクチン経路が活性化されたされていることが示されました。 レクチン経路の活性化は、C4bの分解物であるC4dがMASP-2と同じ局在性を示すことによって確認されました。このようにして、補体の活性化がCOVID-19の全身性悪化に関与している可能性があることが強く示唆されました。

COVID-19重症化の病因:血中のsCLEC-2レベルがCOVID-19重症化と強く関係している

三重県立総合医療センターのグループは、COVID-19重症化の病因として、SARS-CoV-2 Spikeタンパク質が直接的に血小板を活性化する経路の重要性を指摘しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8877880/

COVID-19患者の重症化の根底にある幾つかのメカニズムとして、例えば、サイトカインストーム、原発性肺血栓症、血管内皮損傷、および血小板活性化らが提案されています。 COVID-19の臨床的特徴の1つは、脳卒中や虚血性心疾患などの動脈血栓症の有病率が高いことです。従って、血小板の活性化が病因に関与していると強く推測されます。一方、可溶性C型レクチン様受容体2(sCLEC-2)は、血小板活性化の新しいバイオマーカーとして発見されています。

この研究では、COVID-19の46人の患者のsCLEC-2やD-ダイマーなどの血漿バイオマーカーのレベルを測定し、他の感染症の127人の患者のレベルと比較して、COVID-19の悪化の根底にあるメカニズムを探っています。

血漿sCLEC-2レベルは、細菌感染症の患者よりもCOVID-19感染症の患者で有意に高くなっていました。一方、血漿D-ダイマーレベルは、COVID-19感染よりも細菌感染の患者で有意に高くなっていました。これらの発見は、COVID-19感染が血小板の活性化を促進する傾向があるのに対し、細菌感染はフィブリンの生成を促進する傾向があることを示唆しています。

考えられるCOVID-19重症化の病因:
SARS-CoV-2スパイクタンパク質が、リンパ球のアポトーシスを介して血小板を直接的に活性化し、血栓症を誘発するのではないか!?

SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の糖鎖結合特異性について

Department of Medical Laboratory Science and Biotechnology, College of Medicine, National Cheng Kung University, Tainan 70101, Taiwanらのグループは、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の糖鎖結合特異性についてAlphaScreen法を使った解析結果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8880561/

アッセイ:
ドナービーズ(500 ng/ウェル)およびビオチン化PAA-糖鎖(20 ng/ウェル)をSARS-CoV-2スパイクタンパク質S1またはS2サブユニット(10〜20 ng/ウェル)と混合し、室温で1時間インキュベート。アクセプタービーズ(500 ng/ウェル)とウサギ抗羊IgG Fc抗体(10 ng/ウェル)の混合物を反応液に加え、最終溶液を25μLとする。すべての反応は暗所で行い、2時間のインキュベーション後、AlphaScreenTM検出プログラムを使用して、結合シグナルを測定および分析。

結果:
SARS-CoV-2スパイクタンパク質S1サブユニットは、血液型A抗原に(強く)およびB抗原に(弱く)、スパイクタンパク質S2サブユニットはLewisa抗原に特異的に結合することが示されました。しかし、ブログ管理者の目には、これら以外の糖鎖構造にアフィニティーを持たないという訳ではなく、特にS2サブユニットの特異性はそれほど顕著ではないと映ります。

SARS-CoV-2に対する感染阻害剤として、Pentosan Polysulfate及びMucopolysaccharide Polysulfateが非常に有望

Department of Chemical and Biological Engineering, Center for Biotechnology and Interdisciplinary Studies, Rensselaer Polytechnic Institute, Troy, NY 12180, USAらのグループは、硫酸化糖鎖や強く負に帯電した化合物がSARS-CoV-2に対して強い抗ウイルス活性を示すことを実証しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8875565/

ヘパリン、フコイダン、ラムナン硫酸らがSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示すことは従来より良く知られています。本研究においては、pentosan polysulfate (PPS)やmucopolysaccharide polysulfate (MPS)を代表例として、硫酸化糖鎖や強く負に帯電した化合物を含むライブラリーを用いて、そのSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性が評価されています。

in vitroでのSARS-CoV-2疑似型ウイルスに対するPPSおよびMPSの中和効果を評価した結果、SARS-CoV-2 WTおよびDelta変異株に対するPPSのIC50値は0.45および0.07 µg/mL、WTおよびDelta変異株に対するMPSのIC50値は0.42およびそれぞれ0.28 µg/mLとなり(下記参照)、抗ウイルス薬としての可能性が示されました。

非常に乾燥した砂漠の地中深くの細菌叢はどうなっているか?:アタカマ砂漠の例

Departamento de Ingeniería Química, Universidad Católica del Norte, Antofagasta, Chileらのグループは、アタカマ砂漠の非常に乾燥した土壌細菌叢がどのような状態にあるのかを報告しています。根圏細菌叢ではありませんが、乾燥した土壌の細菌叢を理解する上で参考になると思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8859261/

非常に乾燥したアタカマ砂漠の土壌において、その深部も含め、土壌細菌の生態がどのようになっているか非常に興味があります。
本研究では、(i)表面ゾーンA(0〜60 cm)、(ii)中間ゾーンB(60〜220 cm)、(iii)深部ゾーンC(220〜340cm)と深さ方向にゾーンニングすることで調査が行われました。
なお、土壌の含水率は、ゾーンAからゾーンCと深くなるにつれて、2〜11%に変化していました。

土壌細菌叢は、調査されたすべての深度ゾーンで、プロテオバクテリア、アクチノバクテリア、バクテロイデス、およびファーミキューテスによって支配されていました。ただし、土壌細菌叢の構成は土壌の深さによって異なってます。
その特徴をまとめると、

  • ファーミキューテスは、ゾーンCよりも表面ゾーンAでわずかに高い検出頻度を示しましたが、ゾーンBでは検出されませんでした。ファーミキューテス内では、LachnospiraceaeとBacillaceaeの検出はゾーンAに限定されていましたが、オシロスピアとSalisediminibacterはゾーンC(より含水慮の多い条件)でのみ検出されました。
  • アクチノバクテリアも異なるニッチを示し、SporichthyaceaeはゾーンBとCの層でのみ検出されましたが、IllumatobacteraceaeはゾーンAにでのみ検出されました
  • 最深部は、プロテオバクテリア、特に、ComamonadaceaeとMarinobacteraceaeによって支配されていました。
  • プロテオバクテリアのSphingomonadaceaeは、ゾーンBのいくつかの層で高い存在量を示しましたが、ゾーンCでは低い存在量を示しました。
  • 注目すべきは、Cyanobacteriaが、土壌プロファイル全体に渡り、低い存在率ですが検出されたということです。

バチルス菌の接種とスクロースの施肥で薬草ダイオウ(大黄)・ルバーブの成長が促進された

Gansu Gaolan Field Scientific Observation and Research Station for Agricultural Ecosystem, Northwest Institute of Eco-Environment and Resources, Chinese Academy of Sciences, Lanzhou 730000, Chinaらのグループは、バチルス菌の接種とスクロースの施肥で、フサリウム菌を抑制しつつ、大黄の成長が促進されることを示しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8835959/

植物成長促進微生物(PGPM)として機能する多くの細菌および真菌種が知られていますが、その中でもバチルス菌は、多様な方法で植物成長を促進できるものとして知られています。バチルス菌は、宿主植物の根にコロニーを形成し、シアン化水素(HCN)、キチナーゼ、およびシデロフォアなどの抗生物質を産生することによって害虫や病原体から植物を防御し、植物ホルモンであるインドール-3-酢酸(IAA)、スペルミジン、2,3-ブタンジオールなどのバイオ化合物を産生することによって植物の成長を促進します。

一般的に言って、土壌は炭素化合物の存在量が制限された状態であり、そのような条件下で活性状態にあるのは土壌細菌全体の5%未満にしかすぎません。炭素源、特に最も一般的なスクロースは、成長に必要な直接的なエネルギー源として細菌に影響を与える可能性があります。そこで、本研究においては、バチルス菌がスクロースなどの低分子炭素化合物の添加によってどのように反応し、PGPMとして根圏の生態系にどのような共効果を及ぼすかについて検討が行われました。

バチルス amyloliquefaciens EZ99接種における3種の濃度(LB = 1.0×105、MB = 1.0×106、およびHB = 1.0×107コロニー形成単位(CFU)/mL、3種のスクロース濃度(LS = 0.15、MS = 1.5、およびHS = 15 g/L)の組み合わせを用いて、大黄の成長と収量が比較されました。

HB処理は、コントロール(CK)と比較して大黄の成長(植物の長さ、樹冠の重さ、葉の長さ、葉の重さ)を増加させましたが、高濃度のスクロース処理(HS)との組み合わせでは逆に成長が抑制され、高濃度のスクロース(15 g/L)処理が、高濃度のバチルス菌接種(1.0×107 CFU/mL)による植物成長促進機能を抑制したことを示しています。そして更に、大黄の根の生重量は、LB + LSおよびLB + MS処理下で最も有意に促進されていました(下図参照)。

本実験で見られた特徴的な違いは次のようにまとめられます:

  • ルバーブの主成分である8種類のアントラキノンの蓄積量がぞれぞれの処理下で異なっていました。LB + LS処理において、高レベルのオーランチオオブツシン-6-O-グルコシドとトラクリソン-8-O-グルコシドの蓄積が見られ、トラクリソンとラッカイン酸Dのレベルが低下していました。LB処理のルバーブにおいては、2-アセトキシメチル-アントラキノンのみが蓄積していました。
  • LB + LS処理において、土壌養分の総含有量に有意な変化はありませんでしたが、土壌中でのカリウムと養分循環の生物学利用能を仲介する可能性のある総カリウムの含有量が大幅に増加していました。
  • 根圏細菌叢に関しては、スクロース添加はLS処理下においてほとんど影響を与えませんでしたが、LB + LS処理では、バチルス菌の接種によってその多様性に変化が見られました。
  • 真菌細菌叢に関しては、子嚢菌門とモルティエロ菌門が2つの最も豊富な門であり、真菌全体の相対的な存在量の92.5%以上を占めていました。最も豊富な子嚢菌門は、コントロールで最も濃縮されており(79.1%)、LB + LS処理で最も減少していました(71.6%)。属レベルでは、コントロールと比較して、最も優勢な真菌属であるフサリウムが減少し、2番目の優勢な真菌属であるモルティエラがすべての処理で増加しており、LB + LS処理で最も増加していました。