バチルス菌の接種とスクロースの施肥で薬草ダイオウ(大黄)・ルバーブの成長が促進された

Gansu Gaolan Field Scientific Observation and Research Station for Agricultural Ecosystem, Northwest Institute of Eco-Environment and Resources, Chinese Academy of Sciences, Lanzhou 730000, Chinaらのグループは、バチルス菌の接種とスクロースの施肥で、フサリウム菌を抑制しつつ、大黄の成長が促進されることを示しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8835959/

植物成長促進微生物(PGPM)として機能する多くの細菌および真菌種が知られていますが、その中でもバチルス菌は、多様な方法で植物成長を促進できるものとして知られています。バチルス菌は、宿主植物の根にコロニーを形成し、シアン化水素(HCN)、キチナーゼ、およびシデロフォアなどの抗生物質を産生することによって害虫や病原体から植物を防御し、植物ホルモンであるインドール-3-酢酸(IAA)、スペルミジン、2,3-ブタンジオールなどのバイオ化合物を産生することによって植物の成長を促進します。

一般的に言って、土壌は炭素化合物の存在量が制限された状態であり、そのような条件下で活性状態にあるのは土壌細菌全体の5%未満にしかすぎません。炭素源、特に最も一般的なスクロースは、成長に必要な直接的なエネルギー源として細菌に影響を与える可能性があります。そこで、本研究においては、バチルス菌がスクロースなどの低分子炭素化合物の添加によってどのように反応し、PGPMとして根圏の生態系にどのような共効果を及ぼすかについて検討が行われました。

バチルス amyloliquefaciens EZ99接種における3種の濃度(LB = 1.0×105、MB = 1.0×106、およびHB = 1.0×107コロニー形成単位(CFU)/mL、3種のスクロース濃度(LS = 0.15、MS = 1.5、およびHS = 15 g/L)の組み合わせを用いて、大黄の成長と収量が比較されました。

HB処理は、コントロール(CK)と比較して大黄の成長(植物の長さ、樹冠の重さ、葉の長さ、葉の重さ)を増加させましたが、高濃度のスクロース処理(HS)との組み合わせでは逆に成長が抑制され、高濃度のスクロース(15 g/L)処理が、高濃度のバチルス菌接種(1.0×107 CFU/mL)による植物成長促進機能を抑制したことを示しています。そして更に、大黄の根の生重量は、LB + LSおよびLB + MS処理下で最も有意に促進されていました(下図参照)。

本実験で見られた特徴的な違いは次のようにまとめられます:

  • ルバーブの主成分である8種類のアントラキノンの蓄積量がぞれぞれの処理下で異なっていました。LB + LS処理において、高レベルのオーランチオオブツシン-6-O-グルコシドとトラクリソン-8-O-グルコシドの蓄積が見られ、トラクリソンとラッカイン酸Dのレベルが低下していました。LB処理のルバーブにおいては、2-アセトキシメチル-アントラキノンのみが蓄積していました。
  • LB + LS処理において、土壌養分の総含有量に有意な変化はありませんでしたが、土壌中でのカリウムと養分循環の生物学利用能を仲介する可能性のある総カリウムの含有量が大幅に増加していました。
  • 根圏細菌叢に関しては、スクロース添加はLS処理下においてほとんど影響を与えませんでしたが、LB + LS処理では、バチルス菌の接種によってその多様性に変化が見られました。
  • 真菌細菌叢に関しては、子嚢菌門とモルティエロ菌門が2つの最も豊富な門であり、真菌全体の相対的な存在量の92.5%以上を占めていました。最も豊富な子嚢菌門は、コントロールで最も濃縮されており(79.1%)、LB + LS処理で最も減少していました(71.6%)。属レベルでは、コントロールと比較して、最も優勢な真菌属であるフサリウムが減少し、2番目の優勢な真菌属であるモルティエラがすべての処理で増加しており、LB + LS処理で最も増加していました。