COVID-19回復期患者から選別された最も優れたSARS-CoV-2に対する中和抗体とは

Technische Universität Braunschweig, Institut für Biochemie, Biotechnologie und Bioinformatik, Abteilung Biotechnologie, Germanyらのグループは、COVID-19回復期患者の末梢血単核細胞(PBMC)から抗体ファージディスプレイ法を用いて、SARS-CoV-2に対する中和抗体を開発した結果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8260561/

抗体ファージディスプレイ法は、今日ターゲット疾患に対する治療用抗体の開発におけるin vitroな技術として広く使用されています。著者らは、6人のCOVID-19回復期患者から得た免疫ファージディスプレイを使用し、SARS-CoV-2 RBDに結合する抗体を選別することによってSARS-CoV-2に対する阻害・中和抗体を開発しました。

30 種類の抗体を、IgGとしての特性評価を行うために、細胞変性効果(CPE)ベースの中和スクリーニングアッセイでスクリーニングしました。 このアッセイは、250プラーク形成単位(pfu)/ウェルSARS-CoV-2および1μg/ mL(〜10 nM)scFv-Fcを使用して実施しました。 CPEは、SARS-CoV-2感染時に4日以内に位相差顕微鏡ではっきりと見える丸みと剥離を特徴とし、感染していない細胞は普通のコンフルエンシー単層を維持していました。最高の中和活性を示す 19 scFv-Fc を再クローニングし、50mLの培養スケールでヒトIgGとして生成しました。RBD、S1、またはS1-S2への結合の最大有効濃度の半分 EC50 値が決定されました。 STE90-C11、STE90-B2-D12、STE94-F6、STE94-H2と名付けられた抗体は、全ての抗原に対して0.2 ~ 0.5 nM の範囲の EC50 を示し、結果として、STE90-C11 抗体が最も優れた中和抗体であるとして選別されました。

驚くべきことに、STE90-C11 は、下図に示すように現存するほとんどの変異に対して許容範囲に入ります。特に、現在までに出現した B.1.429/B.1.427、B.1.526、B1.258Δ、B.1.535、B.1.617、B.1.1.33らの変異株に対して許容範囲にあることは特出すべきでしょう。

STE90-C11の中和メカニズムをさらに詳しく知るために、STE90-C11FabとSARS-CoV-2RBDの複合体を調製し、結晶化スクリーニングを行いました。得られた結晶から収集されたX線回折画像は、2.0Åの全体的な分解能限界に渡るデータセットをもたらしました。分子置換によって構造を解いた後、モデルが電子密度に組み込まれました。この結合領域の約60%がVHセグメント由来であり、同時に最大10個の水素結合を形成していました。残りの40%は、VLセグメント由来であり、更に8個の水素結合が相互作用を安定化させていました。 STE90-C11:SARS-CoV-2 RBD複合体のRBDとACE2:SARS-CoV-2 RBD複合体の重畳は、STE90-C11の中和活性のメカニズムは、ACE2結合サイトへの競合反応であり、SARS-CoV-2 RBDとSTE90-C11の相互作用界面はほとんどオーバーラップしていることを示します。