COVID-19で高齢者が重症化するのは、T-細胞減少症が大きな原因だが、それは短くなったテロメアに原因がある

University of Washington, Seattle, USAらのグループは、年齢とともに短くなるT-細胞のテロメア長が、COVID-19の重症化に影響している可能性を指摘しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8282112/

一時的なリンパ球減少症は、急性呼吸器不全の感染症では一般的に見られます。急激で長引くCOVID-19のリンパ球減少症は、しかしながら、独特でT-細胞数の大幅な減少を見せます。このT-細胞減少症についてはまだその全体像が良く分かって居ないのですが、COVID-19でのT-細胞数の減少は、T-細胞の急速で大掛かりなクローン性増殖を必要とし、それはテロメア長(TL)に依存した事柄なのです。骨髄性細胞のテロメア長(HCTL)は、年齢とともに短くなります。その為、高齢者によっては、COVID-19のリンパ球減少症を補い、且つ復活させるに必要なT-細胞のクローン性増殖が行えない可能性が多分にあります。

急性な感染症がない場合には、T-細胞の抗体はゆっくりとしており、ナイーブT-細胞の半生は5年、メモリーT-細胞の半生は5カ月と言われています。しかしながら、SARS-CoV-2の感染に直面した場合には、高齢者における減少したTL依存のT-細胞クローン性増殖能力は、T-細胞の死亡と増殖の間で供給不足に陥ってしまいます。更には、SARS-CoV-2を排除する為にはより多くのナイーブT-細胞のクローン性増殖とSARS-CoV-2という抗原に対するエフェクター細胞やメモリー細胞への分化も必要になります。このようにして、ナイーブT-細胞の短いレロメアは、感染によって生じるT-細胞減少症が無くても、ウイルスと戦うための獲得免疫の能力を制限してしまうのです。

T-細胞の補充とT-細胞のクローンサイズ(CS)について、著者らのモデルでは下記のような仮定が置かれています:
(i) Tー細胞のTL依存の複製停止は、“telomeric brink” (TLB) として定義され、5 kbaseで複製は止まるものとする、(ii) 20歳におけるナイーブT-細胞のTL(TL20)は、TLBに達するまで、毎年0.03kbaseの割合gで短くなるものとする、(iii) 指数関数的な複製で、一個のナイーブT-細胞が20回の複製で(Nmax)で約100万個の最大クローンサイズ(CMS)に達するとする、(iv) クローン性増殖による最大のTL短鎖化量を Δmaxとする、(v) 年齢とともに減少するTL短鎖化によって、“age of onset” (XO)で、“telomeric onset” (TLO = 6.4 kb)に達するとする、(vi) ほとんどのメモリーT-細胞は、子供から青年期の間に新しい抗原に対して出来上がった。


TL20 = TL at age 20 years,
TLB = Telomeric brink, stopping cell replication,
TLO = TL at onset of clone size limitation,
XO = Age in years when TLO is reached,
MCS = Maximal clone size (~106 T cells),
Δmax = TL shortening required for achieving MCS (~1.4kb)

結果として、ナイーブT-細胞のクローン性増殖におけるテロメア長は、SARS-CoV2感染の症状に影響を与えろことが示唆されました、というのも、年齢とともにテロメア長が短くなることで、ウイルスと戦うに必要な十分量のT-細胞を供給できなくなるからなのです。