レンズ豆レクチンがSARS-CoV-2変異株に対して広範な抗ウイルス活性を示す

National Institutes for Food and Drug Control (NIFDC), Beijing, China, らのグループは、レンズ豆レクチンが、SARS-CoV-2の変異株に対しても有望な抗ウイルス活性を持っていると報告しています。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/22221751.2021.1957720

Huh7細胞とあらかじめレクチンで前処理したSARS-CoV-2の疑似ウイルスを用いてレクチンの中和活性を評価しました。WGA、lentil lectin、PHA-L、PHA-E らがSARS-CoV-2疑似ウイルスに対して非常に優れた抗ウイルス活性を示し、そのIC50は 8.5 μg/mL から 22.0 μg/mLの範囲でありました。

レクチンによる血球凝集と細胞毒性は、レクチンの応用においては常に課題となります。 PHA-L と PHA-E は、血液凝集を 3.91 μg/mLで示し、WGA は7.81 μg/mLでした。レンズ豆レクチンは、最も弱い血球凝集を示し、その値は高濃度の 1 mg/mLでありました。一方、細胞毒性はHuh7或いは293Tを使用し、37℃で24時間インキュベートして測定されました。これらすべてのレクチンは、500 μg/mLの濃度でも細胞毒性を示しませんでした。

これらのことを考慮すると、レンズ豆レクチンがSARS-CoV-2阻害には最も適していると考えられます。

レンズ豆レクチンの場合には、SARS-CoV-2 Spikeの個々のN-型或いはO-型糖鎖を除去してもその中和活性には影響はありませんでした。このことは、レンズ豆レクチンがSARS-CoV-2 Spikeの多くの糖鎖修飾サイトに結合できることを示唆しているようです。レンズ豆レクチンは、oligomannose-型糖鎖 (Man-5 ~ Man-9)に強く結合し、還元末端がGlcNAcの複合型やハイブリッド型糖鎖にも結合します。

RBDの周辺には、N165、N234、N343 に糖鎖修飾サイトがあります。これらサイトの糖鎖にはレンズ豆レクチンは結合することができます。特にN234は、完全なoligomannose-型なので、効果的に結合することができます。興味深いのは、これら3つの糖鎖修飾サイトのどれか一つを除去してもレンズ豆レクチンの中和活性には影響がなく、残った二つのサイトで十分なレンズ豆レクチンの中和活性を維持できることを示しています。

現在までに、多様なSARS-CoV-2変異株が出現しているのですが、N165、N234、N343 は 100% 保存されており、これらのことを考慮すると、レンズ豆レクチンの使用は、SARS-CoV-2変異株に対する中和活性の許容範囲の広さから、とても優れた選択肢なのかも知れません。