SARS-CoV-2のoligo-mannoseとS2のHR1ドメインを両睨みする二価タンパク質でSARS-CoV-2の感染を抑える

Hanghai Institute of Infectious Disease and Biosecurity, Fudan University, Shanghai, Chinaらのグループは、SARS-CoV-2の感染を抑える為に、SARS-CoV-2 Spikeタンパク質のoligo mannoseとS2サブユニットにあるHR1ドメインを両睨みする二価タンパク質を開発しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8264481/

宿主細胞に感染する為に、 SARS-CoV-2 はSpikeタンパク質のS1サブユニットに存在するRBDを介して宿主細胞表面のACE2と結合します。その後、プロテアーゼによる切断を受けて、SpikeのS2サブユニットの構造変化が起こり、HR1 と HR2ドメインの間にsix-helix bundle(6-HB)が形成され、膜融合に向けてウイルスと宿主細胞を橋渡しします。それ故、SARS-CoV-2の膜融合と侵入を阻害する為には、S1、S2両方のサブユニットが重要なターゲットとなり得ます。S2サブユニットの構造は、S1サブユニットよりも保存されている為、コロナウイルスの感染阻害に対しては、より適応性が高いと考えられます。

著者らは、抗ウイルス活性を示すレクチンであるGRFT(oligo mannoseに結合特異性を有する)と、HR1ドメインに対する阻害ペプチドであるEK1を含む二価タンパク質を作り上げ、SARS-CoV-2の変異株やその他コロナウイルスへの阻害効果を評価しています。3種の二価タンパク質(GRFT と EK1を含む)プラスミドを作り上げ、リコンビナントタンパク質を得ました。3種のそれは、GRFTとEK1の間のリンカー構造がその長さという点で異なっており、具体的には次のような3種のリンカー、L15 (GGGGS)3、L25 (GGGGS)5、(GGGGS)7 を使っています。出来上がった3種のリコンビナントは、次のように命名されました、GRFT-L15-EK1 (GL15E)、GRFT-L25-EK1 (GL25E)、GRFT-L35-EK1 (GL35E)。

評価の結果、GL25E 最も優れた阻害効果を持つことが示されました(下図参照)。