NK細胞表面からSiglec-7を取り除くことで、腫瘍細胞に対する免疫治療の効果を改善させる

Department of Chemical Biology, School of Pharmaceutical Sciences, Peking University, Chinaらのグループは、腫瘍細胞への免疫治療の効果を改善するために、NK細胞表面のSiglec-7の発現を酵素反応的に変化させる方法を示しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8393205/

シアル酸にアフィニティーを持つ免疫グロブリン様のレクチン(シグレック:Siglec-7など)が免疫細胞(NK細胞やT細胞ら)に存在し、それが糖鎖に関連した免疫チェック分子となっていることが分かっています。

しかしながら、腫瘍細胞の免疫治療の抑制に関して、そのメカニズムは詳細に分かっているとは言えません。
著者らは、NK細胞が腫瘍細胞に接触することが、Siglec-7に対するリガンド(シアル酸修飾を伴う糖鎖)の腫瘍細胞における蓄積のトリガーとなることを示しました。NK細胞と腫瘍細胞が相互作用すると、2時間以内に腫瘍細胞のシアル酸修飾を伴う糖鎖の発現が急速に発生しました。これは、NK細胞からターゲットの腫瘍細胞にシアル酸修飾を伴う糖鎖が転移されることと、腫瘍細胞での新たなシアル酸修飾を伴う糖鎖の合成が進むことによるものです。

癌治療において、免疫療法の有望な方法として、拡張された同種NK細胞の移植という方法があります。
著者らは、酵素的にcytidine-5′-monophospho (CMP)-FTMCNeu5AcとST6Galを用いることでNK細胞表面上にSiglec-7に対して高いアフィニティーを持つシアル酸修飾を伴う糖鎖を発現させることによって、NK細胞表面がターゲットの腫瘍細胞によって活性化される時に、Siglec-7が培養上清中にリリースされ、結果としてNK細胞のエフェクター機能が増強され免疫治療が効果的に行えることを示しました。