バチルス菌(Bacillus cabrialesii BH5)は、トマト灰色カビ病を抑えるのみでなく、トマトの成長も助ける

Department of Molecular Genetics, University of Groningen, Groningen, Netherlandsらのグループは、バチルス菌(Bacillus cabrialesii BH5)が、トマト灰色カビ病を抑えることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8441496/

今日、植物の成長を助ける根圏細菌(PGPR)を農業に応用するという研究例が益々増加傾向にあり、こういった手法が植物の疾患制御に対する正攻法として認知されつつあります。PGPRは、植物に必要な栄養素を土壌から利用できる形にしたり、植物のホルモン分泌を手助けするという作用のみならず、植物の各種の病原菌に対する免疫力強化を手助けしたり、抗菌物質を分泌することによって植物の成長にもプラスの影響を与えます。

本研究では、健康なトマトの根圏から単離されたバチルス菌(Bacillus cabrialesii BH5)が産生するfengycin Hと名付けされた抗菌物質が、トマト灰色カビ病など真菌病原菌に対する優れた抗菌作用を示すことが報告されています(下図参照)。

(BH5が産生した(fengycin H) による抗菌作用、灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対して優れた阻害効果を示すことが分かる)

更には、Bacillus cabrialesii BH5が、トマトのジャスモン酸シグナル経路を活性化し、Botrytis cinerea に対する耐性を強化することも示されました。ジャスモン酸シグナル経路は、植物の病原菌に対する免疫反応のひとつであります。実際、ジャスモン酸シグナル経路に関係するSlLoxD遺伝子が、fengycin HやBH5の処理によって、48~96時間後に顕著に発現上昇していることが確認されました。

バチルス菌(Bacillus cabrialesii BH5)の処理がトマトの成長に与える影響については、根のシュート長や重さを計ることによって確認され、コントロールに対して顕著に成長が増進していることも確認されました。