パルミトイルエタノールアミド(PEA)がCOVID-19の優れた補助療法になる可能性がある

Retrovirus Center, Department of Translational Research and New Technologies in Medicine and Surgery, University of Pisa, 56100 Pisa, Italyらのグループは、パルミトイルエタノールアミド(PEA)は、COVID-19の現在の治療法、更にはコロナウイルスと同様な感染増殖経路を持つ新規のRNAウイルスに対する有望な補助療法となるでしょうと報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35632821/

SARS-CoV-2に対する阻害分子の候補の1つに、N-アシルエタノールアミンファミリーのメンバーの1つであるPEAがあります。PEAは、末梢炎症および肥満細胞の脱顆粒を阻害するだけでなく、ラットおよびマウスにおいて神経保護および抗侵害受容効果を発揮することが分かっています。最近、このPEAの抗炎症作用がアナンダミドと同じ経路をたどらないことが発見されました。PEA誘発性の鎮痛および抗炎症活性は、ペルオキシソーム増殖因子受容体アルファ(PPAR-α)の活性化によって媒介され、PPAR-αは、ミトコンドリアおよびペルオキシソーム内のベータ酸化の活性化、およびミクロソーム内のオメガ酸化の同時刺激による脂肪滴の破壊につながるシグナル伝達カスケードを発動します。細菌およびウイルス感染の予防または治療に対して、PEAの有効性も散見されることから、本研究においては、PEAがSARS-CoV-2の感染増殖を阻害するために使用できるかどうかについて検討が行われています。

PEAの細胞毒性ですが、PEAがHuh-7および293T細胞に100μMもの高濃度でアプライされた場合でも、その毒性は検出されませんでした。Huh7細胞を用いたSARS-CoV-2の感染実験において、1μMの濃度のPEAをSARS-CoV-2と同時にインキュベートした場合には、感染72時間後のqRT-PCRで測定にて、SARS-CoV-2ゲノムの量は約64%減少していました。

PEAの効果が、SARS-CoV-2の2つの主要な変異株(デルタおよびオミクロン)に対して評価されました。10および1μMのPEA前処理Huh-7細胞では、デルタ変異株のウイルスゲノムの数が62.4%および51.2%、オミクロン変異株では、43.4%および77.3%減少することが示されました。興味深いことに、PEAに曝露されたSARS-CoV-2デルタおよびオミクロン変異株においては、10μM PEAで、ウイルスゲノムが最大65%近くの減少を示しました。また、PEAを細胞とウイルスの両方に同時にアプライした場合では、1μMで投与されたPEAは、ウイルスゲノムが大幅に減少し、デルタおよびオミクロン変異株で、それぞれ75.3%および72.5%となりました。