N-GlcNAcが植物成長促進効果を示す

State Key Laboratory of Food Nutrition and Safety, College of Food Science and Engineering, Tianjin University of Science and Technology, Tianjin, Chinaらのグループは、N-GlcNAcが植物の生長促進効果を示すことを報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35665438/

キチンは、セルロースに次いで、生物界で2番目に豊富な多糖類です。キチンとキトサンは生分解性で無毒であり、土壌と基質としての品質、植物の成長、植物の回復力を改善し、強化された持続可能な作物生産の開発に大きく貢献するものとして、ますます注目を集めています。キチンとその誘導体の添加は、多くの作物の新鮮収量重量を改善することができます。しかし、植物の成長促進、栽培、および農業環境の持続可能性におけるキチン・キトサンの機能に関する知識は限定的であり、収量の増加、植物防除の予測可能な活性化、収穫貯蔵寿命の延長、更には農産物およびそれらの細菌叢に対する肥料中の栄養素の徐放の改善らに対して更なる貢献を制限してしまっています。
N-アセチル-D-グルコサミン(N-GlcNAc)は、地球上で最も豊富な炭素-窒素バイオ化合物であり、節足動物の外骨格、糸状菌の主成分、および細菌の細胞壁であるキチン、キトサン、ペプチドグリカンのポリマーに含まれる誘導体化グルコースモノマーです。

トマトを対象として、N-GlcNAc自体が植物の成長を促進するという仮説の検証実験が行われました。予想通り、N-GlcNAcで処理された植物は、自然土壌でより高い草丈、より大きな全新鮮重量、およびより大きな茎重量を生み出しました。 N-GlcNAcに曝露された植物の草丈の増加は、1.29倍となり、植物の全体の新鮮重量は、1.33倍となりました。

N-GlcNAcに曝露された根圏土壌サンプルには、比較的豊富なProteobacteria、Actinobacteria、Planctomycetesを含む142の固有のOTUが含まれていました。 N-GlcNAcに曝露された植物の根圏土壌サンプルにおけるProteobacteriaとActinobacteriaの相対的な存在量は、コントロールよりもそれぞれ3.89%と45.82%増加していました。

興味深いことに、Bacillus cereusによって産生されたオーキシンインドール-3-酢酸(IAA)は、N-GlcNAc処理で増加し、LB培地で60 mmol/LのN-GlcNAcと共培養すると92.9mg/Lに達しました。 N-GlcNAcがIAA産生を活性化するこの能力は、P. mirabilisおよびP. putidaの菌株に対しては、外因性基質トリプトファンを供給することで増加しました。トリプトファンの添加はまた、B. cereus and S. thermocarboxydusの菌株におけるIAAの蓄積も促進しました。

このようにして、本研究は、フィールドでの植物生育促進根圏細菌の利点と安定性を理解して利用するための新しい方向性を提供し、微生物シグナル伝達分子として重要なキーとなるN-GlcNAcを明らかにしました。N-GlcNAcは、根圏細菌叢の再構成を促し、根圏細菌叢の代謝の変化を誘発し、それによって植物の成長を促進するのです。