ACE2, TMPRSS2の発現とCOVID-19の呼吸器不全との間にはいかなる関係があるのか?

Universidade Federal do Rio de Janeiroらのグループは、COVID-19の重症度とACE2及びTMPRSS2の発現の間に如何なる関係があるのか?について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-88944-8

ACE2とTMPRSS2のふたつが、SARS-CoV-2が宿主細胞に感染する場合の主要なプレーヤーであると考えられています。しかしながら、これらの要素の発現レベルがCOVID-19の重症度と相関しているのかについては、依然として明確な結論はありません。angiotensin-converting enzyme 2 (ACE2) は、SARS-CoV-2の感染受容体であり、transmembrane serine protease 2 (TMPRSS2) は、感染プロセスにおける重要な起爆剤となる酵素と考えられています。

鼻腔RT-PCR検査でSARS-CoV-2の感染が確認された213名を含む症例対照研究が行われました。ACE2とTMPRSS2の発現レベルは年齢と正に相関し (ACE2に対して、r = 0.20; p = 0.03 、TMPRSS2に対して、r = 0.21; p = 0.01)、性別間差はありませんでした。
ACE2のトランスクリプション・レベルは、感染者の方が健常者よりも顕著に低く、TMPRSS2のそれは両グループ間に差異がなく、結果、TMPRSS2/ACE2 比は、感染者の方が健常者より有意に高くなっていました。ACE2の発現量がSARS-CoV-2の感染に対して防御的に働き、TMPRSS2のそれは無関係であり、結果、TMPRSS2/ACE2比がCOVID-19の重症度と相関するというのは面白くはありますが、それを解釈するにはブログ管理人の観点からは無理があります。それよりもACE2/TMPRSS2という感染パスの背後に隠れて存在する何らかの感染メカニズムが疑われます。