潰瘍性大腸炎の抗TNF抗体治療効果を予測する新規バイオマーカーについて:IgGのJacalin結合性糖鎖修飾構造の変化

University of Pisa, Italyらのグループは、潰瘍性大腸炎における新しいバイオマーカーについて報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2021.654319/full/

潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: UC)は、自己免疫疾患であり、大腸上皮細胞に炎症が発生し、出血、下痢、腹痛が起こります。 腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor: TNF)の発現が潰瘍性大腸炎では上昇しており、 大腸粘膜に炎症を起こし、大腸上皮細胞にダメージを与えています。このようなことから、抗TNF抗体, infliximab (IFX) や adalimumab (ADA), が潰瘍性大腸炎の治療に使用されています。.

しかしながら、潰瘍性大腸炎の患者の30%は、この抗TNF抗体が効かない(non-responder)ということもあり、治療効果に対して早期に予測ができることが非常に重要になっています。著者らの研究は、抗TNF抗体治療に対する治療効果を予測する上で、IgGのJacalin(JAC)結合性糖鎖が非常に良いマーカーになると述べています。下図において、Aは治療前のJAC-IgGのベースラインを示し(NHS = 健常者, R = レスポンダー, NR = ノンレスポンダー)、Bは抗TNF抗体治療後のそれを示します。
Jacalinは、O型糖鎖を認識するレクチンであり、IgGのこの糖鎖修飾の違いがどのように抗TNF抗体の治療効果に関係しているのか?については不明ですが、治療効果に対するバイオマーカーには成り得るとしています。

多くの自己免疫疾患では、IgGの糖鎖修飾がアガラクトに変化することが知られており、FcγRIIaとの相互作用を介してマクロファージの活性化や、TNFα、IL-6ら炎症性サイトカインの産生を促すことが知られています。また、リューマチでは、ステロイドや抗TNF抗体を投与することで、IgGのシアル酸修飾が増加するという現象も知られています。