新型コロナウイルス(COVID-19)にレクチンと糖鎖の相互作用を生かして立向かう

Universidade CEUMA, Brazilらのグループは、エンベロープを持つウイルスとの戦いに糖鎖とレクチンの相互作用を用いた過去の事例をレビューし、SARS-CoV-2への挑戦に触れています。
https://academic.oup.com/glycob/article/31/4/358/5934657

COVID-19に立ち向かうに際して、ウイルス・エンベロープの糖タンパク質の存在は、レクチンを用いる方法について、いろいろな可能性を与えてくれます。レクチンは、ウイルス・エンベロープの糖鎖と結合し、ウイルスの宿主細胞への感染を阻害することができるという意味において、新しい抗ウイルス薬の開発のリード高分子になり得ます

SARS-CoV-2の糖鎖修飾の概要は次のようです。SARS-CoV-2のspikeタンパク質には、22個のN-型糖鎖修飾部位、6個のO-型糖鎖修飾部位があります。 oligomannose-型の糖鎖は、2ケ所(N234 and N709)、複合型糖鎖は、主に14ケ所(N17, N74, N149, N165, N282, N331, N343, N616, N657, N1098, N1134, N1158, N1173 and N1194)、更に6ヶ所は、oligomannose-型と複合型が混在しています(N61, N122, N603, N717, N801, N1074)。最も普通にみられるoligomannose-型糖鎖は、 Man5GlcNAc2であります。一方、O-型糖鎖は短鎖にて、Tnやcore1構造が主であります(T73, T76, T478, T676, T678, T1076)。

このレビュー論文で触れられている抗ウイルス薬として評価された典型的なレクチンは(FRAIL, GRFT, Cyanovirin-N, BanLec, MVN, Avaren)であります。これらのレクチンの糖鎖結合特異性は、ほとんどがoligo及び high mannoseでありますが、これは過去にターゲットとされたウイルス(HIV, HCV, influenza, Ebora)のエンベロープは、強くmannose修飾を受けていたことに関係します。これらウイルスに比較すると、SARS-CoV-2の糖鎖修飾は幾らかパターンが異なっているということができますし、従って、これらのレクチン以外に、SARS-CoV-2と戦うにはより優れたレクチンが存在する可能性があるでしょう。

ともあれ、抗ウイルス薬としてレクチンを使う場合の大きな制限は、ターゲット以外の望ましくない体細胞に結合してしまう可能性があるということにあります。例えば、レクチンを投与することで、凝集反応細胞増殖を招いてしまうというような事柄があります。従って、レクチンを使うことによるそういった副作用を抑えながら、SARS-CoV-2に対する特異的な抗ウイルス薬としてのみ働くようにレクチンをタンパク質工学を用いて工夫してやることが必要です。おそらくそのキーワードは、融合タンパク質を作るということではないでしょうか?例えば、Fab融合, Fc融合, PEG化、などなどです。