SARS-CoV-2のNTDをターゲットとする中和抗体の特性について

Israel Institute for Biological Researchらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のNTDに対する12種類の中和抗体の特性について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33937725/

12種類のSARS-CoV-2 NTDをターゲットとする抗体 (BLN1 ~ BLN14) は効果的にSARS-CoV-2を中和化することができ、そのIC50は、最も低い中和活性のBLN8で54.9 µg/ml、最も高い中和活性を示すBNL1やBLN12で0.008 µg/ml、に分布しました。 これらすべての抗体の特異性は、NTDをターゲットとするELISAにて検証され、より詳細には、S1タンパク質の配列から作られたペプチドアレイによるエピトープマッピングにて検証されました。 そしてまた、NTDの糖鎖修飾の抗体への影響については、糖鎖アレイ、及び糖鎖を阻害剤として用いる競合アッセイによって評価されました。糖鎖アレイの実験では、これら抗体は、ほとんどの糖鎖に対して非常に弱い結合しか示しませんでしたが、LacNAcとそのα2-3Sia修飾については強く結合しました。これらの結果から、BLN4とBLN12は、NTDのアミノ酸配列のみでなく、N-型糖鎖もその結合に関与している可能性が指摘されました。

SARS-CoV-2においては、ACE2が主たる感染受容体として考えられていますが、C型レクチン(L-SIGN, DC-SIGNなど)も感染受容体として機能することが報告されています。そこで、代表的な抗体がSARS-CoV-2とL-SIGNの結合を阻害できるかどうかについての実験が行われました。 阻害効率は、BLN14の25%からBLN4の50%に分布しました。この阻害効果は、抗体のNTDの糖鎖に対する直接的な結合によって引き起こされるものではなく、L-SIGNとの立体障害によって引き起こされているものだと考えられました。

ACE2の発現が低い組織の細胞の場合に、L-SIGNやDC-SIGNがSARS-CoV-2に対する第二の感染受容体となるのであれば、NTDをターゲットとする抗体がSARS-CoV-2の感染を抑え込むために有効であると考えられ、結果として、RBDをターゲットとする抗体とNTDをターゲットするカクテル抗体がSARS-CoV-2の治療に有効であるはず、と結論しています。