グルタミン酸が根圏細菌叢を制御し、植物の病気を抑える:イチゴとトマトの研究から

Gyeongsang National University, Jinju, Koreaらのグループは、グルタミン酸が直接的にイチゴとトマトの根圏細菌叢を制御できると報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34930485/

植物の発達を通して、関連する細菌叢の構造は、特にバチルス、シュードモナス、ストレプトマイセスなどの善玉菌による病気の予防において、植物の健康に大きな影響を及ぼします。根圏細菌叢を制御するに際して、最も現実的な方法を見つけ出すことがとても大切です。

l-グルタミン酸がイチゴのアンソスフィア細菌叢の構造を制御できるかどうかを調べています。 3つの処理(未処理のコントロール、l-グルタミン酸、または最終濃度2%のl-アスパラギン、pH 6.5)が、2週間間隔で植木鉢ごとに1分間スプレーされました。エンテロバクターが、未処理のコントロール、l-アスパラギン処理で、2〜8週目に優勢となり、2〜4週目では、 l-グルタミン酸処理が優勢でした。 シュードモナスは2番目に豊富な細菌種であり、モラクセラがそれに続いていました。ストレプトマイセスの増加は、6週目と8週目のl-グルタミン酸処理でのみ発生しており、なんとコミュニティの99.9%と99.9%を占めていました(下図参照)。

次に、イチゴの花における灰色かび病、花枯れ病の発生頻度とストレプトマイセスの密度に対するl-グルタミン酸の影響が調べられました。発病率(DI)は2週間間隔で評価されました。同時に、l-グルタミン酸とl-アスパラギンを2週間間隔で4週目から8週目まで3回噴霧しました。0週目から4週目までの灰色かび病の発病率は、処理とは無関係に比較的低いままでした(10〜16%)。6週目で、未処理のコントロールは16.6%の発病率を示しました。 l-アスパラギンで処理された植木鉢の発病率は16%であり、l-グルタミン酸で処理された植木鉢の発病率は12.4%と大幅に低くなっていました。 8週目では、未処理のコントロールの発病率は34%に増加しましたが、l-グルタミン酸を噴霧した植木鉢の発病率は17%未満に維持されました(下図参照)。

この様にして、グルタミン酸が植物の細菌叢を再構成し、イチゴのアンソスフィアの機能的なコアの細菌であるストレプトマイセスの集団を豊かにすることが示されました。同様に、より複雑な細菌叢を持つトマトの根圏でも、グルタミン酸で処理すると、バシラス科とバークホルダーリアの個体数だけでなく、ストレプトマイセスの個体数も増加していました。同時に、ボトリチスとフサリウムによって引き起こされる病気は、大幅に減少していました。

3回目のSARS-CoV-2 ブースター・ワクチンの接種が、オミクロン変異株に対する中和力価を大幅に改善する

Department of Pathology, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USAらのグループは、ブースターとしての3回目のSARS-CoV-2ワクチンの接種がオミクロン変異株に対する中和抗体の活性を大幅に改善することを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8687472/

SARS-CoV-2 野生型、デルタおよびオミクロンの変異株に対する中和抗体の力価が、米国で承認された3つのワクチン(mRNA-1273、BNT162b2、またはAd26.COV2.S)のいずれかで完全にワクチン接種を受けた239人の血清を用いて評価されました (BNT162b2:Pfizer-BioNTech、mRNA1273:Moderna、Ad26.COV2.S:Janssen/Johnson & Johnson)。

オミクロン変異体の中和抗体は、いずれかのmRNAワクチンを3回接種した場合で顕著に高くなりました(mRNA-1273では19倍、BNT162bでは27倍のGMNT増加している)。興味深いことに、Ad26.COV2.Sワクチンは、mRNA-1273で追加免疫された場合に、Ad26.COV2.Sのみを投与された場合と比較して、野生型、デルタ、およびオミクロン変異株の中和力価が大幅に高くなっていました。

これらの結果は、3回目のワクチン・ブースターの接種がオミクロン変異株の感染を阻止するために非常に有効であることを示しています。

SARS-CoV-2感染抑制に対するヘパリンの三つの役割

Molecular and Cellular Modeling Group, Heidelberg Institute for Theoretical Studies (HITS), 69118 Heidelberg, Germanyらのグループは、分子動力学シュミレーションを用いて、ヘパリンのSARS-CoV-2感染抑制には、3つの役割があると述べています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34929169/

ヘパリンのSARS-CoV-2感染抑制には、以下の3つの働きがあります。


(1) ヘパリンは、両方のコンフォメーション(OPENとCLOSE)でSpikeのS1/S2-ヘパリン結合ドメイン(HBD)に結合し、フューリンの切断を防ぐ、
(2) Close状態のSpikeのOpen化と活性化を妨げる、
(3) RBD-HBDを直接マスキングしながら、RBDの動きを止める。

小麦の遺伝子型と根圏細菌叢の関係性について

Department of Plant Pathology, Washington State University, Pullman, WA, USAらのグループは、小麦の遺伝子型とその成長段階が根圏細菌叢の形成に影響し、病原菌R.solani AG-8の土壌抑制効果が大幅に変わることを示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34925393/

近年、根圏細菌叢は大きな注目を集めており、持続可能な農業システムを強化する為に、これら根圏細菌叢を操作することに焦点を当てた多くの研究が行われています。これに関連して、植物の遺伝子型が様々な農業生態系で特定の結果を誘因する細菌を引き付けるであろうというアイデアから、植物遺伝子型特異的な根圏細菌叢の制御という考え方が着目されています。

この研究では、植木鉢での実験条件下において、6種類の冬小麦遺伝子型(Eltan、Madsen、Hill81、Lewjain、PI561725、PI561727)の根圏細菌叢における変化が評価され、培養日周期の増加とともに、小麦遺伝子型に特異的な変化が根圏細菌叢に現れることが示されました。160日周期で、PI561725とPI561727の微生物叢は、他の遺伝子型の細菌叢と明確に区別されました(下図参照)。

結果として、Burkholderiales OTU、特にPI561727およびPI561725の土壌におけるJanthinobacterium属の存在量の違いは、根の病気の減少と小麦の成長の改善に関連していることが示されました。 Burkholderiales OTUは、病原体R.solani AG-8に対する拮抗作用を持つことが知られています。このような事から、適切な小麦の遺伝子型を使用して根圏細菌叢を制御することで、土壌伝染病を管理するための持続可能なアプローチを提供できる可能性があることが示されました。

IL-6/リンパ球比が、COVID-19の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の予測には最も優れている

Internal Medicine II, San Giuseppe Hospital, Empoli, Italyらのグループは、IL-6に対するリンパ球数の比(IL-6/Lym)が。SARS-CoV-2感染に起因する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴う重症化予測に高い能力を持っていることが確認されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8660176/

SARS-CoV-2に起因する肺炎におけるIL-6/Lym比のAUC(0.797、95%CI:0.738–0.848)は、分析された他のすべてのバイオマーカーと比較して最も高く、IL-を除いてその有意差は顕著でした。

COVID-19のARDSの正確な病態生理学的メカニズムはまだ不明確なままですが、多くの研究により、高レベルのIL-6と低リンパ球数がCOVID-19のサイトカインストームと免疫応答のバイオマーカーであることが示されています。この2つのバイオマーカーをそれらの間の比率として使用することで、それらを単独で用いるよりもより高い予測力を得ることができます。
COVID-19患者では、好酸球/リンパ球(Neu/Lym)比、血小板/Lym比、Lym/CRP比、リンパ球/単球比、好酸球/リンパ球比というような形でリンパ球数が多用されています。一方で、最近、IL-6/Lym比が、COVID-19患者の興味深い予後マーカーとして提案されてきていました。

COVID-19回復期患者の血清のSARS-CoV-2 オミクロン変異株に対する中和活性の低下

Division of HIV/AIDS and Sex-transmitted Virus Vaccines, Institute for Biological Product Control, National Institutes for Food and Drug Control, Beijing, Chinaらのグループは、SARS-CoV-2 オミクロン変異株に対するCOVID-19回復期患者(28名)の血清の中和活性を評価しました。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/22221751.2021.2017757

32個の変異すべてを含むSARS-CoV-2 オミクロン Spike(PV-オミクロン)を発現する新しい疑似型ウイルスを構築し、このPV-オミクロンに対する回復期患者の血清(28名のCOVID-19患者からの回復期血清)の中和活性が測定されました。中和活性のED 50、および参照株D614Gと比較した結果も評価されました(下図参照)。デルタ株に比べるとオミクロン株は、中和活性が5.4倍ほど下がっているようです。

SARS-CoV-2 オミクロン株の変異は、CD8+ T-cell応答にどの程度影響するのだろうか

National Institute of Allergy and Infectious Diseases, National Institutes of Health, Bethesda, MD, USAらのグループは、SARS-CoV-2 オミクロン変異株の既存のCD8+ T細胞免疫に対する影響を調べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8669839/

この研究では、52人のCD8 + T細胞が標的とする以前に同定されたSARS-CoV-2ウイルスのエピトープが、新たな変異株オミクロンで変異しているかどうかを調べています(n = 50 変異)。何故ならば、オミクロン株がどの程度まで既存の獲得免役応答に感受性があるかどうかを見極めることが非常に重要だからです。
T細胞関連の免疫反応は、個々人においても幅広く適応性のある応答であり、個人間のHLAハプロタイプという多様性もあることから、一般的に言って、ウイルスがそう簡単にT細胞免疫から逃れられるものではありません。

本被験集団においては、オミクロン変異体(n = 50)に関連する変異のうち、Spikeタンパク質(T95I)のひとつだけがCD8+ T細胞エピトープ(GVYFASTEK)と重複していることがわかりました
オミクロン変異株には、Spikeタンパク質にかなりの数の変異がありますが、この被験集団では、Spikeタンパク質からの1つの低有病率CD8+ T細胞エピトープのみがひとつのアミノ酸変化を含んでいました。以前に同定されたSARS-CoV-2に対するT細胞エピトープに関連する他の変異はありませんでした。これらのデータは、既存の抗SARS-CoV-2 CD8+ T細胞応答を持つほぼすべての個人がオミクロン変異株を認識するはずであり、SARS-CoV-2はこの時点で広範なT細胞エスケープ変異を得るまでには至っていないということは言えそうです。

根圏細菌から分泌されるグルコン酸がリン化アルミニウム(Al-P)を可溶化する

Institute of Soil Science, Chinese Academy of Sciences, Nanjing, Chinaらのグループは、酸性土壌の場合には、リン(P)の可溶化善玉菌(PSB)として、Nguyenibacter sp. L1がとても有効だと述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8637293/

リン(P)は、植物の成長と生産性に必要な必須の主要栄養素です。 Pが豊富な土壌でも、Pの80%以上は植物が取り込める形になっていません。Pは、主に無機物および有機物として様々な形で土壌に存在し、その割合は土壌に依存しています。無機Pの形態は、土壌のpHに依存した形で変化します。アルカリ性土壌では、無機Pは主にリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸八カルシウムの形で存在し、風化作用の強い酸性土壌では、酸化鉄(Fe)とアルミニウム(Al)がPを強く吸収して、Fe-P、Al-Pという形で固定されています。

土壌中の固定化されたPの植物利用を改善する有望な方法のひとつは、土壌中のPSBを強化したり、新たにPSBを接種するなどの方法によって土壌を改善し、不溶性しているPの利用化率を上げることです。

この研究では、Al-P可溶化活性を持つPSB株、Nguyenibacter sp. L1を、酸性土壌で成長したL.bicolorの根圏土壌から単離しています。 Nguyenibacter sp. L1によるAl-Pの可溶化は、炭素源としてのグルコースの存在下でのグルコン酸の分泌に関連しています。グルコン酸は、植物に対するAlの毒性を軽減することもできます。

炭素源としてグルコースを加え、Nguyenibacter sp. L1を接種することによって、大量のグルコン酸が産生され、より高い利用可能なP濃度得られることが培地を使った実験で示されました。
更に、グルコン酸がAlを解毒できるかどうかを調べるために、グルコン酸の存在下または非存在下でのイネの根の伸長に対するAlの阻害効果を比較しました。イネの根の伸長は、0.05 mMグルコン酸の有無にかかわらず、50μMのAlによって著しく阻害されましたが、この阻害効果は、0.5、2.5、または7.6mMのグルコン酸の存在下で消失しました。この結果は、グルコン酸の外部添加が植物の根へのAl毒性を軽減したことを示しています。

緑膿菌(シュードモナス・アルギノーザ)の慢性感染におけるC型レクチンの役割

School of Life Sciences, Faculty of Medicine and Health Sciences, University of Nottingham, Nottingham, UKらのグループは、緑膿菌バイオフィルムによる慢性感染時の免疫応答の調節におけるC型レクチンの潜在的な役割について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41522-021-00257-w

緑膿菌(シュードモナス・アルギノーザ)は、切り傷や火傷の後に急性感染症を引き起こし、持続性の肺疾患や免疫力が低下している患者に慢性感染症を引き起こす日和見病原菌です。

本研究で、幾つかの事柄が明確になっています。
(i) 緑膿菌が、DC-SIGN (CD209)によって強く認識され、MR (CD206) や Dectin-2によって弱く認識される、
(ii) 緑膿菌のバイオフィルムを構成する糖鎖、特に高分子量のそれに、DC-SIGN、MR、Dectin-2が結合する、
(iii) これらバイオフィルムが、DC-SIGN、MR、Dectin-2 の機能に影響を与え、そして
(iv) バイオフィルムの糖鎖が樹状細胞の表現型に影響を与える。
この研究の重要なメッセージは、緑膿菌が、C型レクチンの関与を通じて免疫に影響を与える可能性のある糖鎖をバイオフィルムとして生成しているということです。

バイオフィルムからの糖鎖を精製し、ゲルろ過クロマトグラフィーで分析した結果、バイオフィルムの糖鎖は、高分子量(> 45 kDa、HMW)と低分子量(<45 kDa、LMW)という大きく二つの画分に分けられました。更に、HMWとLMWの分子量の違いを詳細に分析した結果、LMW=15,370 Da、HMW-1とHMW-2はそれぞれ、182,300Daと132,670Daという二つの画分に分かれました。HMW-1の糖鎖のモノマー組成は、74.9%マンノース、14.7%グルコース、7.4%ガラクトース、および3.0%ラムノースであり、HMW-2の場合、80.9%マンノース、11.0%グルコース、2.3%ガラクトース、および5.7%ラムノースでした。

SARS-CoV-2 D614G変異株のN型糖鎖プロファイルの変化について

Division of Laboratory Sciences, National Center for Environmental Health, Centers for Disease Control and Prevention (CDC), Atlanta, GA USAらのグループは、wild typeのSARS-CoV-2(S-614D)とその変異株(S-614G)の間でのN型糖鎖プロファイルの変化について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8651636/

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質における22個の潜在的なN型糖鎖修飾サイトの内、21箇所について、糖鎖修飾サイト特異的な不均一なN型糖鎖の分布とぞの存在量を、α溶菌プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシンの組み合わせによって切断された糖ペプチドの質量分析にて評価しています。

S-614G変異体の分析により、幾つかのN型糖鎖修飾サイトにおいて、S-614Dで見られるものとは異なるN型糖鎖が発現していることが分かりました。 21個の検出および定量化されたN型糖鎖修飾サイトのうち、N17、N61、N74、N331、N343、N657、N1074、N1158、およびN1173を含むこれらのN型糖鎖修飾サイトの内9つは、S-614GとS-614Dの間で個々の糖鎖と糖鎖タイプの両方の分布にほとんど、または全く有意な変化がありませんでした。 しかし、N122、N165、N234、N282、N603、N616、N709、N717、N801、N1098、およびN1134を含む11個のN型糖鎖修飾サイトでは、変化が起こっていました。

複合型糖鎖の相対存在量は、S-614G糖タンパク質のN型糖鎖が変化した修飾サイトで最大45%減少し、対照的に、ハイマンノース型糖鎖の含有量は最大33%増加していました。

これは、糖鎖の観点からすると、S-614G変異株では、糖鎖の異種抗原性が増加していることを意味すると思われます。