緑膿菌(シュードモナス・アルギノーザ)の慢性感染におけるC型レクチンの役割

School of Life Sciences, Faculty of Medicine and Health Sciences, University of Nottingham, Nottingham, UKらのグループは、緑膿菌バイオフィルムによる慢性感染時の免疫応答の調節におけるC型レクチンの潜在的な役割について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41522-021-00257-w

緑膿菌(シュードモナス・アルギノーザ)は、切り傷や火傷の後に急性感染症を引き起こし、持続性の肺疾患や免疫力が低下している患者に慢性感染症を引き起こす日和見病原菌です。

本研究で、幾つかの事柄が明確になっています。
(i) 緑膿菌が、DC-SIGN (CD209)によって強く認識され、MR (CD206) や Dectin-2によって弱く認識される、
(ii) 緑膿菌のバイオフィルムを構成する糖鎖、特に高分子量のそれに、DC-SIGN、MR、Dectin-2が結合する、
(iii) これらバイオフィルムが、DC-SIGN、MR、Dectin-2 の機能に影響を与え、そして
(iv) バイオフィルムの糖鎖が樹状細胞の表現型に影響を与える。
この研究の重要なメッセージは、緑膿菌が、C型レクチンの関与を通じて免疫に影響を与える可能性のある糖鎖をバイオフィルムとして生成しているということです。

バイオフィルムからの糖鎖を精製し、ゲルろ過クロマトグラフィーで分析した結果、バイオフィルムの糖鎖は、高分子量(> 45 kDa、HMW)と低分子量(<45 kDa、LMW)という大きく二つの画分に分けられました。更に、HMWとLMWの分子量の違いを詳細に分析した結果、LMW=15,370 Da、HMW-1とHMW-2はそれぞれ、182,300Daと132,670Daという二つの画分に分かれました。HMW-1の糖鎖のモノマー組成は、74.9%マンノース、14.7%グルコース、7.4%ガラクトース、および3.0%ラムノースであり、HMW-2の場合、80.9%マンノース、11.0%グルコース、2.3%ガラクトース、および5.7%ラムノースでした。