SARS-CoV-2 オミクロン株の変異は、CD8+ T-cell応答にどの程度影響するのだろうか

National Institute of Allergy and Infectious Diseases, National Institutes of Health, Bethesda, MD, USAらのグループは、SARS-CoV-2 オミクロン変異株の既存のCD8+ T細胞免疫に対する影響を調べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8669839/

この研究では、52人のCD8 + T細胞が標的とする以前に同定されたSARS-CoV-2ウイルスのエピトープが、新たな変異株オミクロンで変異しているかどうかを調べています(n = 50 変異)。何故ならば、オミクロン株がどの程度まで既存の獲得免役応答に感受性があるかどうかを見極めることが非常に重要だからです。
T細胞関連の免疫反応は、個々人においても幅広く適応性のある応答であり、個人間のHLAハプロタイプという多様性もあることから、一般的に言って、ウイルスがそう簡単にT細胞免疫から逃れられるものではありません。

本被験集団においては、オミクロン変異体(n = 50)に関連する変異のうち、Spikeタンパク質(T95I)のひとつだけがCD8+ T細胞エピトープ(GVYFASTEK)と重複していることがわかりました
オミクロン変異株には、Spikeタンパク質にかなりの数の変異がありますが、この被験集団では、Spikeタンパク質からの1つの低有病率CD8+ T細胞エピトープのみがひとつのアミノ酸変化を含んでいました。以前に同定されたSARS-CoV-2に対するT細胞エピトープに関連する他の変異はありませんでした。これらのデータは、既存の抗SARS-CoV-2 CD8+ T細胞応答を持つほぼすべての個人がオミクロン変異株を認識するはずであり、SARS-CoV-2はこの時点で広範なT細胞エスケープ変異を得るまでには至っていないということは言えそうです。