小麦の遺伝子型と根圏細菌叢の関係性について

Department of Plant Pathology, Washington State University, Pullman, WA, USAらのグループは、小麦の遺伝子型とその成長段階が根圏細菌叢の形成に影響し、病原菌R.solani AG-8の土壌抑制効果が大幅に変わることを示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34925393/

近年、根圏細菌叢は大きな注目を集めており、持続可能な農業システムを強化する為に、これら根圏細菌叢を操作することに焦点を当てた多くの研究が行われています。これに関連して、植物の遺伝子型が様々な農業生態系で特定の結果を誘因する細菌を引き付けるであろうというアイデアから、植物遺伝子型特異的な根圏細菌叢の制御という考え方が着目されています。

この研究では、植木鉢での実験条件下において、6種類の冬小麦遺伝子型(Eltan、Madsen、Hill81、Lewjain、PI561725、PI561727)の根圏細菌叢における変化が評価され、培養日周期の増加とともに、小麦遺伝子型に特異的な変化が根圏細菌叢に現れることが示されました。160日周期で、PI561725とPI561727の微生物叢は、他の遺伝子型の細菌叢と明確に区別されました(下図参照)。

結果として、Burkholderiales OTU、特にPI561727およびPI561725の土壌におけるJanthinobacterium属の存在量の違いは、根の病気の減少と小麦の成長の改善に関連していることが示されました。 Burkholderiales OTUは、病原体R.solani AG-8に対する拮抗作用を持つことが知られています。このような事から、適切な小麦の遺伝子型を使用して根圏細菌叢を制御することで、土壌伝染病を管理するための持続可能なアプローチを提供できる可能性があることが示されました。