SARS-CoV-2に対する抗体の母乳へのトランスファーは、IgAとIgMが主体である

Department of Biological Engineering, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA, USAらのグループは、SARS-CoV-2に特異的な抗体の母乳へのトランスファーは、IgAとIgMが主体であると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8531199/

以前の研究では、妊娠した女性の抗体のFcエフェクター機能は、胎盤を経由して子供にトランスファーされるということが分かっています。しかしながら、そのFcエフェクター機能の母乳へのトランスファーについては、良く分かっていませんでした。

当然でしょうが、SARS-CoV-2に感染した母親は、SARS-CoV-2に特異的な抗体を血中にも母乳の中にも持っていました。しかし、興味深いことに、母乳へのトランスファーは、IgAとIgMが主体であり、IgG1のトランスファーはかなり限定的であることが分かったのです(下図参照)。

サーファクチン型リポペプチドの重要性:根の表面のペクチンをバチルス菌が認識することで共生関係が深まる

University of Liège‐Gembloux Agro‐Bio Tech, Gembloux, Belgiumらのグループは、根圏細菌であるバチルス・ベレツェンシスは植物の根のペクチンを認識し、共生関係を深めていくとしています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34724831/

植物の根と根圏細菌が共生関係を開始する初期の段階での分子間相互作用については、良く分かっているとは言えません。著者らは、善玉菌の一種であるバチルス・ベレツェンシスが、植物の根の細胞表面のペクチンを根からの滲出液とのシナジーの中において認識することによって、バチルス菌の初期のコロニー化の過程で共生関係を深める重要な分泌物としてサーファクチン型リポペプチドの分泌が非常に高まることを示しました。

実際、下図に示すように、homogalacturonan low methylated (HGLM)(ペクチンのこと)を根からの滲出液を模した培地(REM)に加えることでサーファクチンの産生が8倍増加することが示されました。しかしながら、バクテリアは、HGLMよりも低分子のオリゴマーは認識しない様であり、下図に示すように、oligogalacturonides(OGs)を添加してもサーファクチンの産生には何の影響も見られませんでした。 このことは、長鎖のポリマーは、バクテリアのコロニー形成に適した健康な植物の存在を意味し、短鎖のポリマーは共生関係を築くには不適切な死んだ根っこである、ということをバクテリアが見抜いているからなのかも知れません。


homogalacturonan low methylated (HGLM), DP of >150; oligogalacturonides (OG), DP of 15; galacturonic acid (GA), DP of 1; DPはdegree of polymerizationの略

しかし、この論文においては、植物の分子パターンとしてのペクチンのバックボーンを認識するバクテリアのレクチン様タンパク質については一切の情報がなく、今後の課題であります。

ヒトのマンノース特異的レクチンのそれぞれを狙い撃ちするマンノシル化高分子の人工合成

Department of Chemistry, Massachusetts Institute of Technology, MS, USAらは、ヒトのマンノース特異的レクチンの各々に特異的なマンノシル化高分子を開発しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8549053/

糖鎖結合性タンパク質(レクチン)は、病原菌に結合し自然免疫を活性化するように、多様な細胞認識、シグナリングに重要な役割を果たしています。レクチンをターゲットにする、特に免疫細胞表面に発現するそれらをターゲティングするということは、免疫や創薬に大きく貢献する可能性があります。レクチンは多量体を形成していることが多く、それ故、結合するリガンドのほとんどは多価であります。レクチンをターゲティングする場合の有効な方法は、ポリマーをバックボーンとして単一の糖鎖エピトープを多重に乗せることであります。しかしながら、このような多価のリガンドの欠点というのは、単糖特異性を共有するレクチンのそれぞれを区別することが出来ないという事です。例えば、マンノース単糖特性を持つレクチンには、DC-SIGN、DC-SIGNR、MBL、SP-D、langerin、dectin-2、mincle、DEC-205などがあります。

著者らは、これらのマンノース特異的レクチンをより正確にターゲティングできるようなマンノシル化高分子を開発しました。

ターゲットのマンノシル化糖高分子を生成するために、(R)-または(S)-グリシジルプロパルギルエーテル(GPE、> 99%ee)から始まる反復指数関数的成長(IEG)サイクルを実行して、正確に8、16、または32のアリル側鎖を持つ高分子を作り上げます。この時に、すべて(R)(アイソタクチック)、すべて(S)(アイソタクチック)、および交互(R-alt-S)(シンジオタクチック)の3つの異なる高分子構造を作り上げました。そして、この高分子にマンノース残基を付加するために、これらをUV光(λ= 365 nm)下でβ-チオマンノースナトリウム塩と反応させました。

結合アフィニティーは、サンプル間で数ケタ以上変わっていました。例えば、DC-SIGNのKA値は、(S)-8merに対して 1 × 104 から(R)-16merに対して、1 × 108 にまで変化しています。Dectin-2の場合でも、1 × 104 から1 × 108に変化していますし、DEC-205の場合には、すべての高分子に 1 × 106 から 1 × 109で強く結合し、(R)-32merの場合で最も強いアフィニティー 2.2 × 109を示しました。

このように、同じマンノース単糖特性を持つレクチンに対して、広いレンジのアフィニティーを実現できていることは驚異的です。

ヘビ毒であるホスホリパーゼA2(PLA2s)がSARS-CoV-2に対して高い抗ウイルス活性を示す

Department of Molecular Neuroimmune Signalling, Shemyakin-Ovchinnikov Institute of Bioorganic Chemistry, Russian Academy of Sciences, Moscow, Russiaらのグループは、バイペラ・ニコルスキーというヘビの毒(ホスホリパーゼA2(PLA2)の二量体)が、SARS-CoV-2に対して高い抗ウイルス活性を示すと報告しています。.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34714362/

バイペラ・ニコルスキーから得た二種のヘビ毒(HDP-1、HDP-2)とそのサブユニット(HDP-2I、HDP-2P)を天然の抗ウイルス剤として評価しました。
Vero E6細胞を用いたSARS-CoV-2の感染実験において、HDP-2Pは、わずかに0.1 µg/mlの濃度でさえ、完全に感染を押さえることが出来ました。
一方、そのHDP-2PのVero E6細胞に対する細胞毒性は、100 μg/ml という濃度で、51%ほど細胞の生存率を下げるに留まるという結果でした。

これらの結果は、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬を開発する上において、PLA2が天然物として高いポテンシャルを持つものであることを示しています。

サポニンを用いて根圏細菌叢を制御する

京都大学生存圏研究所らのグループは、サポニンを用いて、根圏細菌叢を制御できると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8538258/

植物の根からの代謝物は、根の滲出液と呼ばれており、光合成による炭素固定の約40%を占めると考えられています。根の滲出液に引き寄せられて集まった根圏バクテリアは、植物の成長を助け、各種の環境変動に対して植物を強くします。しかしながら、これらの根の滲出液と根圏バクテリアの関係については、まだ良く分かっていないというのが実情です。
サポニンは、そんな根の滲出液の成分の一つであり、被子植物に広く見られるものです。サポニンは、生物学的及び薬理学的な活性を示し、例えば、抗バクテリア作用、抗菌作用、そして、溶血性や細胞毒性という側面も持っています。

サポニン類(α-Solanin、dioscin、soyasaponins、glycyrrhizin)の処理によって、下図に示すように、バークホルデリア、メチロフィルス、ロドシクルス、モラクセラ、シュードモナス、P3OB-42、カウロバクター、ステロイドバクター、ゲオバクター、スフィンゴモナス科のバクテリアが増加していました。

例えば、バークホルデリア科のバクテリアは、植物の免疫反応に関わる遺伝子の発現上昇、揮発性硫黄化合物やシデロホアの産生を通じて植物病原菌を抑制したり、スフィンゴモナス科のバクテリアは、植物ホルモンの産生、重金属毒性の軽減、乾燥耐性の強化、植物病原菌の抑制らを通じて、植物の生長を促進することが知られています

サポニンを産生分泌する植物は、それ故、これらバクテリアを根圏に引き付けることによって利を得ていると考えることは非常に尤もらしいと言えるでしょう。

ACE2を発現するiPS細胞を用いたSARS-CoV-2の感染実験から、TMPRSS2とCathepsin Bの同時ノックダウンが有効であることが示された

京都大学)iPS細胞研究所のグループは、SARS-CoV-2の感染を阻害するためには、TMPRSS2とCathepsin Bの両方を阻害することが必要であると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8527102/pdf/main.pdf

本実験においては、ACE2を安定に発現するiPS細胞が使用され、TMPRSS2 と CTSB (Cathepsin Bをコードする遺伝子)をCRISPRA干渉システムを用いて、1%以下の発現に抑制しました。

CTSBとTMPRSS2の両方が、ACE2-iPS 細胞へのSARS-CoV-2の感染に必要であることが示されました。TMPRSS2は、細胞膜表面に発現しており、CTSBはエンドソームに発現していることが知られています。つまり、TMPRSS2は、エンドサイトーシスに依存しない感染、CTSBは、エンドサイトーシスに依存した感染において、それぞれ重要な役割を果たしている訳です。

本実験において、TMPRSS2 と CTSB を両方同時にノックダウンすることで、ウイルス量が 0.036±0.021% に大幅に減少することが示されました。

WGAレクチンがSARS-CoV-2の感染を阻止できる

Institute of Virology, Friedrich-Alexander University Erlangen-Nürnberg, Erlangen, Germanyらのグループは、WGAレクチンがSARS-CoV-2の感染阻害に使用でき、そのIC50 は、10 ng/mL以下であると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8508056/

Vero B4細胞をSARS-CoV-2PR-1(武漢型)に1時間感染させた後、さまざまな濃度のWGAで処理しました。 3日後に細胞培養上清を回収し、ウイルス産生量を、qRT-PCRおよびウエスタンブロットを用いて分析しました。 WGAによる処理によって、SARS-CoV-2の複製は大幅に抑制されました。 10 µg/mL WGAの濃度で、細胞培養上清中のウイルスRNAコピーは完全に消失しました。この阻害効果はWGAのドーズに綺麗に依存しており、ウエスタンブロット分析による確認では、WGAでの処理によるウイルス産生量の減少はより強くWGAのドーズに依存していました。つまり、これらのデータは、WGAがVero B4細胞でSARS-CoV-2に対して強い抗ウイルス活性を示し、IC50が10ng/mL以下であるということを初めて示したものです。

WGAの細胞毒性を確認する為に、Vero B4とCalu-3細胞を用いて細胞毒性アッセイを評価しました。Vero B4細胞の場合で、TD50 は、凡そ 50 µg/mLであり、このことは三桁に渡る広い治療ウインドーが存在し、in vivoでWGAをSARS-CoV-2の感染を押さえるために使える可能性を大いに示しています。今後の臨床研究に期待しましょう。

サトウキビと大豆の間作で効果の出る品種と効果の出ない品種がある:根からの分泌物が大きく根圏細菌叢に影響する

College of Agronomy, Guangxi University, Nanning, Chinaらのグループは、間作が植物の生長とその根圏細菌叢に与える影響を、単作と比較しながら報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8515045/

二種の新しいサトウキビの品種(ZZ1 と ZZ9)およびローカルな大豆品種(GUIZAO2)が本実験で使用されました。二種類のサトウキビと大豆との間作(ZZ1J と ZZ9J)を各々の単作(ZZ1M と ZZ9M)と比較しています。

結果として、下表に示すように、ZZ9と大豆の間作がZZ1と大豆の輪作と比べても、顕著に植物の生長促進効果が出ていることが分かりました。

そしてまた、ZZ9と大豆の間作(ZZ9J)において、アルファプロテオバクテリアが ZZ1Jの場合よりも相対的に増えていることが大きな特徴であることが分かります(下図参照)。注意すべきは、アルファプロテオバクテリアは、数多くの共生的な窒素固定バクテリアを含んでいるということであります。

このようにしてみると、ここで見られた変化というのは、植物の根からの分泌物と密接な関係を持っていることが示唆され、その分泌物が根圏細菌と根との相互作用を介在していることが伺い知れます。

SARS-CoV-2の感染を抑止するために天然物でオートファジーのプロセスを阻害する

Università del Piemonte Orientale, Department of Health Sciences, Novara, Italyらのグループは、SARS-CoV-2の感染が、ベルベリン、バイカリン、レスベラトロール、カテキン、プロシアニジンと言った天然物でオートファジーを阻害することによって抑えられると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8516241/

SARS-CoV-2が細胞に入り、細胞内で複製し、細胞から出るメカニズムは次のように考えられています。
(1)簡単に言うと、ウイルス侵入の主な経路は、クラスリン介在性またはクラスリン/カベオラ非依存性エンドサイトーシスです。エンドサイトーシスされたウイルスは、分解のためにオートファジー・リソソームに送り届けられるのですが、カテプシンLを介したSのプロセシングおよびウイルスエンベロープ-膜融合の際に、ウイルスRNAはエンドサイトーシス小胞から脱出し、細胞質中にエスケープする場合があります。
(2)さらに、ウイルスは、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜の融合によっても細胞に侵入します。 ACE2を発現する細胞は、Sタンパク質RBDとの強い相互作用を介してSARS-CoV-2感染の標的となります。
(3)細胞に入る経路が上記のどちらであっても、エンドソームカテプシンL、フューリン、トリプシン、膜貫通プロテアーゼセリンプロテアーゼ2(TMPRSS-2)、またはトリプシン様プロテアーゼは、Sタンパク質をS1およびS2サブユニットに切断し、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜(エンドソームまたはプラズマメンブレン)との融合を行うことで、ウイルスゲノムの宿主細胞質中への放出を可能にします。

従って、このウイルスタンパク質分解ステップの阻害は、細胞の感染ウイルス量を大幅に減少させます。以下は、この目的で使用することができる典型的な天然物です。

ベルベリン
ベルベリンはSARS-CoV-23CLPRO、Sタンパク質、およびACE2受容体と結合し、ベルベリンがウイルスの侵入と細胞膜融合を防ぎ、3CLPROを介したnsps4~16の生成に影響を与えることによって、オートファジープロセスと二重膜小胞の生合成を阻害します。

バイカリン
バイカリンはSARS-CoV-2 S、およびPLPRO、nsp4、および3CLPRO タンパク質と相互作用し、オートファジーの誘発を防ぎます。

レスベラトロール
レスベラトロールとその誘導体は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、PLPRO、RdRp、およびSタンパク質を強く阻害します。レスベラトロールはACE2受容体阻害剤として作用し、S1/ACE2複合体の形成とウイルスのエンドサイトーシス、および二重膜小胞の生合成を防ぐことができます。さらに、レスベラトロールは、PLPROを介したnspの生成を阻害することでオートファジープロセスに影響を与えます。

カテキン
カテキンは、3CLPRO、Sタンパク質RBD、ACE2、S/ACE2複合体、カテプシンL、nsp6、およびNタンパク質を中和することにより、SARS-CoV-2の感染と複製を阻害します。エピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCG)やテアフラビン3,3 ‘ジガレートなどの茶ポリフェノールは、3CLPRO、Sタンパク質、S/ACE2複合体、PLPRO、およびRdRpに結合して阻害できます。

プロシアニジン
プロシアニジンはSARS-CoV-2 3CLPRO、nsp1、nsp2、PLPRO、nsp4、nsp6、nsp7、nsp8、nsp9、nsp10、RdRp、ヘリカーゼ、エクソンN、NendoU、2′-O-MT、ORF3a、Eタンパク質、Mタンパク質、ORF6、ORF7a、ORF8、Nタンパク質、ORF10、ACE2、およびSタンパク質らに強く結合し阻害します。

膵管腺癌においては、ST6GAL1糖転移酵素とα2-6シアル酸が過剰発現している

Department of Chemistry, University of Alberta, Edmonton, AB, Canadaらのグループは、膵管腺癌においては、α2-6Sシアル酸とその糖転移酵素であるST6GAL1が重要なマーカーになり得ると述べています。
https://www.mcponline.org/article/S1535-9476(21)00132-8/fulltext

レクチンマイクロアレイ:
膵管腺癌においては、シアル酸の発現が顕著に増加しています。α2-6シアル酸(検出レクチン: SNA、TJA-I、PSL、平均増加率: ~ 2.7倍)、α2-3シアル酸(検出レクチン:diCBM40、SLBR-H、SLBR-B、SLBR-N、MAL-I、MAA、平均増加率:~ 3.4倍)。
コアフコース(PSA、LcH、~ 2.7倍)、bisecting GlcNAc(PHA-E、~ 2.2倍)、poly-LacNAc (WGA、DSA、LEA、∼ 2.1倍) らも健常者よりも増加しています。

糖転移酵素:
ST6GAL1 糖転移酵素が、内皮細胞、免疫細胞、膵管の癌化した領域で顕著に発現が上昇しています。加えて、ST6GAL1 の発現レベルが膵管腺癌の進行度とも相関しています。α2-3シアル酸の糖転移酵素である ST3GAL1 も多くの細胞で発現しているのですが、癌化した膵管領域では特に上昇していることはありません。

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