サポニンを用いて根圏細菌叢を制御する

京都大学生存圏研究所らのグループは、サポニンを用いて、根圏細菌叢を制御できると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8538258/

植物の根からの代謝物は、根の滲出液と呼ばれており、光合成による炭素固定の約40%を占めると考えられています。根の滲出液に引き寄せられて集まった根圏バクテリアは、植物の成長を助け、各種の環境変動に対して植物を強くします。しかしながら、これらの根の滲出液と根圏バクテリアの関係については、まだ良く分かっていないというのが実情です。
サポニンは、そんな根の滲出液の成分の一つであり、被子植物に広く見られるものです。サポニンは、生物学的及び薬理学的な活性を示し、例えば、抗バクテリア作用、抗菌作用、そして、溶血性や細胞毒性という側面も持っています。

サポニン類(α-Solanin、dioscin、soyasaponins、glycyrrhizin)の処理によって、下図に示すように、バークホルデリア、メチロフィルス、ロドシクルス、モラクセラ、シュードモナス、P3OB-42、カウロバクター、ステロイドバクター、ゲオバクター、スフィンゴモナス科のバクテリアが増加していました。

例えば、バークホルデリア科のバクテリアは、植物の免疫反応に関わる遺伝子の発現上昇、揮発性硫黄化合物やシデロホアの産生を通じて植物病原菌を抑制したり、スフィンゴモナス科のバクテリアは、植物ホルモンの産生、重金属毒性の軽減、乾燥耐性の強化、植物病原菌の抑制らを通じて、植物の生長を促進することが知られています

サポニンを産生分泌する植物は、それ故、これらバクテリアを根圏に引き付けることによって利を得ていると考えることは非常に尤もらしいと言えるでしょう。