サーファクチン型リポペプチドの重要性:根の表面のペクチンをバチルス菌が認識することで共生関係が深まる

University of Liège‐Gembloux Agro‐Bio Tech, Gembloux, Belgiumらのグループは、根圏細菌であるバチルス・ベレツェンシスは植物の根のペクチンを認識し、共生関係を深めていくとしています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34724831/

植物の根と根圏細菌が共生関係を開始する初期の段階での分子間相互作用については、良く分かっているとは言えません。著者らは、善玉菌の一種であるバチルス・ベレツェンシスが、植物の根の細胞表面のペクチンを根からの滲出液とのシナジーの中において認識することによって、バチルス菌の初期のコロニー化の過程で共生関係を深める重要な分泌物としてサーファクチン型リポペプチドの分泌が非常に高まることを示しました。

実際、下図に示すように、homogalacturonan low methylated (HGLM)(ペクチンのこと)を根からの滲出液を模した培地(REM)に加えることでサーファクチンの産生が8倍増加することが示されました。しかしながら、バクテリアは、HGLMよりも低分子のオリゴマーは認識しない様であり、下図に示すように、oligogalacturonides(OGs)を添加してもサーファクチンの産生には何の影響も見られませんでした。 このことは、長鎖のポリマーは、バクテリアのコロニー形成に適した健康な植物の存在を意味し、短鎖のポリマーは共生関係を築くには不適切な死んだ根っこである、ということをバクテリアが見抜いているからなのかも知れません。


homogalacturonan low methylated (HGLM), DP of >150; oligogalacturonides (OG), DP of 15; galacturonic acid (GA), DP of 1; DPはdegree of polymerizationの略

しかし、この論文においては、植物の分子パターンとしてのペクチンのバックボーンを認識するバクテリアのレクチン様タンパク質については一切の情報がなく、今後の課題であります。