SARS-CoV-2の感染を抑止するために天然物でオートファジーのプロセスを阻害する

Università del Piemonte Orientale, Department of Health Sciences, Novara, Italyらのグループは、SARS-CoV-2の感染が、ベルベリン、バイカリン、レスベラトロール、カテキン、プロシアニジンと言った天然物でオートファジーを阻害することによって抑えられると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8516241/

SARS-CoV-2が細胞に入り、細胞内で複製し、細胞から出るメカニズムは次のように考えられています。
(1)簡単に言うと、ウイルス侵入の主な経路は、クラスリン介在性またはクラスリン/カベオラ非依存性エンドサイトーシスです。エンドサイトーシスされたウイルスは、分解のためにオートファジー・リソソームに送り届けられるのですが、カテプシンLを介したSのプロセシングおよびウイルスエンベロープ-膜融合の際に、ウイルスRNAはエンドサイトーシス小胞から脱出し、細胞質中にエスケープする場合があります。
(2)さらに、ウイルスは、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜の融合によっても細胞に侵入します。 ACE2を発現する細胞は、Sタンパク質RBDとの強い相互作用を介してSARS-CoV-2感染の標的となります。
(3)細胞に入る経路が上記のどちらであっても、エンドソームカテプシンL、フューリン、トリプシン、膜貫通プロテアーゼセリンプロテアーゼ2(TMPRSS-2)、またはトリプシン様プロテアーゼは、Sタンパク質をS1およびS2サブユニットに切断し、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜(エンドソームまたはプラズマメンブレン)との融合を行うことで、ウイルスゲノムの宿主細胞質中への放出を可能にします。

従って、このウイルスタンパク質分解ステップの阻害は、細胞の感染ウイルス量を大幅に減少させます。以下は、この目的で使用することができる典型的な天然物です。

ベルベリン
ベルベリンはSARS-CoV-23CLPRO、Sタンパク質、およびACE2受容体と結合し、ベルベリンがウイルスの侵入と細胞膜融合を防ぎ、3CLPROを介したnsps4~16の生成に影響を与えることによって、オートファジープロセスと二重膜小胞の生合成を阻害します。

バイカリン
バイカリンはSARS-CoV-2 S、およびPLPRO、nsp4、および3CLPRO タンパク質と相互作用し、オートファジーの誘発を防ぎます。

レスベラトロール
レスベラトロールとその誘導体は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、PLPRO、RdRp、およびSタンパク質を強く阻害します。レスベラトロールはACE2受容体阻害剤として作用し、S1/ACE2複合体の形成とウイルスのエンドサイトーシス、および二重膜小胞の生合成を防ぐことができます。さらに、レスベラトロールは、PLPROを介したnspの生成を阻害することでオートファジープロセスに影響を与えます。

カテキン
カテキンは、3CLPRO、Sタンパク質RBD、ACE2、S/ACE2複合体、カテプシンL、nsp6、およびNタンパク質を中和することにより、SARS-CoV-2の感染と複製を阻害します。エピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCG)やテアフラビン3,3 ‘ジガレートなどの茶ポリフェノールは、3CLPRO、Sタンパク質、S/ACE2複合体、PLPRO、およびRdRpに結合して阻害できます。

プロシアニジン
プロシアニジンはSARS-CoV-2 3CLPRO、nsp1、nsp2、PLPRO、nsp4、nsp6、nsp7、nsp8、nsp9、nsp10、RdRp、ヘリカーゼ、エクソンN、NendoU、2′-O-MT、ORF3a、Eタンパク質、Mタンパク質、ORF6、ORF7a、ORF8、Nタンパク質、ORF10、ACE2、およびSタンパク質らに強く結合し阻害します。