アーカイブ: 2022年9月8日

ミルク中のラクトースがロタウイルスによる子豚の下痢を押さえる

Laboratory of Virology, Faculty of Veterinary Medicine, Ghent University, Merelbeke, Belgiumらのグループは、ラクトースは、ロタウイルス感染を減らすことによる直接的な効果と、腸内環境のバランスをとることによってロタウイルスの感染を抑制することにより、子豚の下痢問題を改善することが出来ます、と報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9428151/

ロタウイルスは、動物やヒトに下痢を引き起こす主要な病原体です。高い罹患率と死亡率は、主に出生後の最初の数週間に観察されます。ロタウイルスには、6 つのウイルス構造タンパク質 (VP1-VP4、VP6、および VP7) と 6 つの非構造タンパク質 (NSP1-NSP6) をコードする 11 の二本鎖 RNA セグメントがあります。ロタウイルスは 10 種に分類されており、RVA、B、および C が、ヒトおよびブタを含む動物に感染する最も一般的な遺伝子型です。その中で、RVA 株はさまざまな種の中で最も有病率が高く、獣医界における下痢の主な原因となっています。

RBA の組換え VP8* タンパク質の糖結合特異性を、300 個の糖鎖を固定化した糖鎖アレイを用いて評価し、その結果、β-ラクトースに強く結合することがわかりました。
また、β-ラクトースが MA104 細胞のロタウイルス感染をドーズ依存的に減少させることも示されました。

ここで、13R054 G5P[7] と 12R046 G9P[23]は、RVA株です

小児の早発性1型糖尿病のバイオマーカーとして、補体C3の糖鎖プロファイルが使える

Faculty of Pharmacy and Biochemistry, University of Zagreb, Zagreb, Croatiaらのグループは、血漿中の補体C3のハイマンノース型糖鎖構造の変化をバイオマーカーとして使用することで、早発性1型糖尿病の子供を健常者からAUC 0.879で判別することが出来たと報告しています。
https://www.mcponline.org/article/S1535-9476(22)00215-8/fulltext

子供の1 型糖尿病は、補体C3のハイマンノース構造におけるマンノース単位の増加(すなわち長鎖のハイマンノース)と関連していました。
この実験では、ハイマンノース糖鎖修飾を受けた補体C3をConA レクチンで濃縮し、その糖鎖構造を LC-MS/MS で分析しました。補体C3には、Asn85とAsn939、にふたつの糖鎖修飾部位があり、高度にハイマンノース修飾された構造は、以下に示すように1 型糖尿病の発生と共により長鎖の構造になっていました。

タモキシフェン耐性乳がん細胞は、LacdiNAcの糖鎖修飾を持ち、WFAレクチンと強く反応する

順天堂大学医学部らのグループは、タモキシフェン耐性乳がん細胞がLacdiNACを認識するWFAレクチンと強く反応することを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9409572/

乳がんには、がん細胞の増殖にエストロゲン(女性ホルモン)を必要とするものがあり、乳がん全体の6~7割を占めています。このようなエストロゲンで増殖するタイプの乳がんに対してはエストロゲンの働きを抑える抗エストロゲン薬 (タモキシフェン) の効果が期待できるとされています。しかしながら、中には、タモキシフェンに耐性を持つ乳がん細胞が出現する場合があります。

糖鎖修飾は、糖転移酵素の逐次作用によるタンパク質の主要な翻訳後修飾であり、糖鎖修飾の変化は、発癌、悪性進行および転移と関連していることが良く知られています。
そこで、本研究においては、タモキシフェン耐性ヒト乳癌細胞の糖鎖プロファイルをレクチンマイクロアレイを用いて調査し、内分泌療法の予測バイオマーカーとしての糖鎖修飾の変化が使えるかどうかを検討しています。

結果として、タモキシフェン耐性乳癌細胞は、LacdiNAcの糖鎖修飾を持ち、WFAレクチンと強く反応することが示されました。

植物病原菌フサリウムを押さえるには、根圏バクテリアの多様性とシデロホアを産生するバクテリアが大切

Key Laboratory of Plant-Soil Interactions, China Agricultural University, Beijing, Chinaらのグループは、トウモロコシとそら豆の間作において、根圏バクテリアの多様性とシデロフォア産生菌が総合的に植物病原菌であるフサリウムを抑制すると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9389221/

世界の食料生産は様々な脅威にさらされており、土壌伝染性病原体が収量損失に与える影響は、約20% であると言われています。大量生産を目的とする集中的な大規模な単一栽培は、収量の損失を引き起こす病気の発生を起こし易いとされ、一方で、真菌病は、輪作や間作などの多様な作付システムを取ることで抑制されることも知られています。

この研究では、次の三つの植栽パターンが比較されました。
(1) 単一栽培トウモロコシ、
(2) 単一培養のそら豆、および
(3) トウモロコシとそら豆の間作。

その結果、間作により、単作よりもトウモロコシとそら豆の収量がそれぞれ21.3%と14.4%増加し、間作により、バルク土壌、根圏土壌、および根のエンドスフェアで、単作よりもフサリウムの遺伝子コピーが2.91、7.33、および9.56%と大幅に減少していました。また、フサリウムの抑制は、トウモロコシよりもそら豆で効果が大きいことが示されました。

根圏バクテリアの多様性と細菌叢の分析結果から、次のことが分かりました。
(1) 根圏バクテリアの多様性とその相互作用が間作で強化され、これは フサリウムの減少と相関していた、
(2) トウモロコシおよびソラマメの根圏におけるシデロフォア産生バクテリアの数は、フサリウムの存在量と逆相関していた。

α-Galエピトープに特異的なIgG1抗体が開発された

Technical University of Munich, School of Medicine, Neuherberg, Germanyらのグループは、α-Galエピトープに特異的なIgG1抗体を開発しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9391071/

α-Gal (α-Gal) エピトープは、アレルギーや異種移植に関連するヒトの糖鎖疫原です。興味深いことに、α-Galエピトープに対するさまざまなアイソタイプの抗体がヒトに非常に豊富に存在し、そのIgGレベルは総血漿 IgGの1% から0.1% の範囲であると推定され、被験者間のばらつきが大きく、血液型B抗原を保有する個人での存在量が最も少ないと推定されます。血液型B抗原の個人で存在量が少ないというのは、α-Galエピトープと血液型B抗原との間の構造的類似性によるものであり、B抗原では、最後の2番目のガラクトースにフコースが追加して含まれています。これらのヒト抗α-Gal抗体は、異種移植、特にブタの臓器移植時に課題をもたらしますが、GGTA1ノックアウト(KO)ブタの開発によりある程度克服されてきています。

この論文では、27H8と呼ばれるα-Galに対する新規IgG1抗体の開発が報告されました。この抗体は、合成および天然に存在するα-Galエピトープの両方に対して高度に特異的です。天然に存在するα-Galエピトープ決定構造Gal-α1,3-Galに特異的なモノクロナール抗体を生成するために、α-ガラクトシルトランスフェラーゼノックアウト(Ggta1 KO)マウスを、キャリアタンパク質としてオボアルブミンに結合したGal-α1,3-Gal-β1,4-GlcNAc(α-Gal-OVA)で免疫しています。

特異性を検証するために、27H8 モノクローナル抗体を バンデリア豆アイソレクチンB4 (BSI-B4: GSL-I B4) およびモノクローナルIgM抗体 M86(どちらも α-Gal エピトープの検出に広く使用されています)と比較しました。 BSI-B4は末端α-Galオリゴ糖に特異的であるため、血液型B抗原も認識します。これは、α-Galエピトープとは一つのフコース残基の付加のみが異なり、従って構造的に非常に類似しているからです。27H8が血液型 B抗原にも結合するかどうかを評価するために、B型ドナーからの全血のライセートをメンブレンにブロットし、検出のために抗体27H8およびM86 またはビオチン化BSI-B4 をアプライしました。 BSI-B4 は予想どおりB型血液検体に結合しましたが、27H8もM86 も結合しませんでした。次に、27H8が天然のα-Galエピトープにも結合するかどうかが調べられました。ブタの腎臓はもともとα-Galが豊富であり、α-Galアレルギー患者の反応は摂取後に深刻であるため、ドットブロットアッセイで27H8がブタ腎臓溶解物中のα-Galを認識するかどうかもテストされました。野生型 (WT) ブタ腎臓ライセートへの27H8結合は、強い染色強度で観察され、α-ガラクトシダーゼで消化されたWT腎組織サンプル(Dig. WT)では、全くドットが見られませんでした。

 詳細な解説は本文を参照ください。

骨髄細胞におけるシアル酸修飾の変化

Baltimore Veterans Affairs Medical Center, Research Service, Baltimore, MD, USAらのグループは、ヒトの骨髄細胞がアポトーシスや分化を受ける場合のシアリダーゼ(シアル酸分解酵素)の発現変化について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-022-18448-6

成熟ヒト好中球 (PMN) および HL60 前骨髄球性白血病細胞株におけるシアリダーゼ/ノイラミニダーゼ (NEU) 活性と発現に着目し、アポトーシスを受ける PMNで起こる変化、およびHL60がPMN 様細胞へ分化する場合に生じるシアルサン修飾の変化が観察されました。

PMN は、侵襲的な原核病原体に対する宿主防御のフロントラインにいます。骨髄前駆細胞は、骨髄内で成熟PMNへと成熟します。PMNは大きく細胞形状を変化させることができ、これらの細胞が微小血管系と内皮細胞間接合部を通過して血管外組織に侵入し、そこで細菌を捕捉して、その食作用により細菌を殺傷します。HL60 前骨髄球性白血病細胞株は、骨髄造血のモデル細胞として良く使用されているものです。

以下に示すように、プロアポトーシスPMNでは、NEU2の発現が30倍以上も増加しました。つまり結果としてシアル酸修飾が激減します。

以下に示すように、分化した HL60 (dHL60) 細胞の総 NEU 活性は、未分化細胞と比較して劇的に減少しました。即ち、分化細胞ではシアル酸修飾が増加します。

SARS-CoV-2の金ナノ粒子(AuNPs)と金ナノロッド(AuNRs)を用いたSPR検出の比較

Department of Chemistry, University of Warwick, Gibbet Hill Road, Coventry, U.K.らのグループは、SARS-CoV-2の金ナノ粒子(AuNPs)と金ナノロッド(AuNRs)を用いたSPR検出の比較について報告しています。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsmacrolett.1c00716

2,3-シアリルラクトースをAuNPsおよびAuNRsに固定化し、SPR検出法を用いてSARS-CoV-2を検出しました。

異方性粒子 (ナノロッドなど) の重要性を強調するために、球状の金ナノ粒子と金ナノロッドを互いに比較しました。
(1)AuNPs (40 nm) は ~520 nm で最大吸収を示し、AuNRs (10 × 38 nm) は ~780 nm で最大吸収を示しました。
(2)AuNPs(凝集によりシグナルを生成する)は、このスパイクタンパク質では有意なスペクトル変化を示しませんでしたが、AuNRsはスパイクタンパク質の濃度の増加とともにスペクトル変化を示しました。
(3) 一次臨床サンプルを使用した AuNRs からのシグナル出力は、RT-PCR からの Ct (サイクル閾値) 値と相関していました。

このようにして、AuNRsを使った方が検出能力が向上することが示されています。

ヒト界面活性タンパク質D(human SP-D)は、SARS-CoV-2の結合とDC-SIGN発現細胞への侵入を手助けする

College of Health, Medicine and Life Sciences, Brunel University London, Uxbridge, UKらのグループは、ヒト界面活性タンパク質D(human SP-D)は、SARS-CoV-2の結合とDC-SIGN発現細胞への侵入を手助けすると報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2022.960733/full

ヒトSP-D の組換えフラグメント(rfhSP-D) が、SARS-CoV-2 の DC-SIGN 発現細胞への結合を媒介する能力が評価されました。 DC-SIGN細胞表面発現を誘導するために、全長ヒトDC-SIGNのDNA配列を含むプラスミドをHEK 293T細胞にトランスフェクトして、DC-HEK細胞を作成し、その細胞をrfhSP-D (20μg/ml)で処理したSARS-CoV-2疑ウイルスに暴露しました。処理されたサンプル(DC-HEK + SARS-CoV-2疑ウイルス + rfhSP-D)では、未処理のサンプル(DC-HEK + SARS-CoV-2疑ウイルス)と比較して、約50%の結合効率が増加していました。
同様の実験を、PMA および IL-4 で処理することでネイティブ DC-SIGN の発現を誘導した THP-1 細胞を用いて行なったところ、rfhSP-D 処理は、未処理のコントロールと比較して、DC-SIGN を発現する THP-1 細胞へのSARS-CoV-2疑ウイルスの結合効率を約 25% 増加させることが分かりました。

分子モデルを用いてSARS-CoV-2およびDC-SIGN結合複合体を生成するために、ブラインドドッキングアプローチが試みられました。上位にランク付けされた結合複合体の分析により、スパイク タンパク質の NTD(N 末端ドメイン)は、DC-SIGN の CRD ドメインと相互作用することが明らかになりました。更に、DC-SIGN と SP-D を Spike タンパク質とドッキングすることによって三者複合体が生成されました。ドッキングされた上位ふたつの結合複合体(C1 と C2)の分子間相互作用を詳細に解析したところ、C1複合体とC2複合体の両方で、DC-SIGN(CRD)はSpikeタンパク質のNTDドメインと相互作用しており、C1 では、Spike タンパク質と rfhSP-D の間に直接的な分子相互作用はありませんでした。しかし、C2 では、Spike タンパク質は SARS-CoV-2のRBD を介して rfhSP-D と相互作用しています。

SP-D は RBD と相互作用し、DC-SIGN は SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の NTD と相互作用していることが明確に示され、結論として、SP-D は DC-SIGN と SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の相互作用を安定化させることが示されました。

bisecting GlcNAc の糖鎖修飾を受けたセルロプラスミンが膵がんの優れたバイオマーカーとなり得る

College of Basic Medical Sciences, Dalian Medical University, Dalian, Chinaらのグループは、bisecting GlcNAc の糖鎖修飾を受けたセルロプラスミンが膵がんの優れたバイオマーカーとなり得ると報告しています。
https://www.mdpi.com/2073-4409/11/15/2453/htm

健常対照群 (NC)と比較して、bisecting GlcNAc、マンノース、およびフコースらの糖鎖修飾相対量は、膵がん群 (PC) で有意に増加していました。また、急性膵炎群 (AP) との比較では、bisecting GlcNAcとフコシル化の相対存在量が、膵がん群で大幅に増加していました。しかしながら、フコシル化の相対量は、健常対照群と急性膵炎群の間あまり変化していないようでした。

糖鎖のみを用いてバイオマーカーを開発することには困難が伴うため、bisecting GlcNAcを含む血清糖タンパク質をビオチン化 PHA-E レクチンおよびストレプトアビジン アガロース ビーズでプルダウンし、nano LC-MS/MS で分析しました。その結果、バイオマーカー糖タンパク質候補として、セルロプラスミン(Cp)、アポリポタンパク質E(Apo-E)、トランスフェリン(Tf)の三つの糖タンパク質が挙げられました。

これらの候補の中で、セルロプラスミンが最高の診断能力を示しました。健常対照群と急性膵炎群、健常対照群と膵がん群、および膵がん群と急性膵炎群の間のセルロプラスミンの AUC は、それぞれ 0.917、0.972、および 0.757 となりました。

バチルス菌のバイオフィルム形成能力が植物病原菌を押さえるには非常に大切

College of Food Science and Light Industry, Nanjing Tech University, Nanjing, Chinaのグループは、バチルス菌のバイオフィルム形成がバチルス菌の根圏におけるコロニー形成を促し、植物病原菌に対する生物的防除を高めると報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2022.972393/full

バチルス菌は植物病原体に対する生物防除剤として使用され、それらのほとんどは細胞外高分子物質のひとつとしてポリ-γ-グルタミン酸 (γ-PGA) を生成することができます。

本研究では、バチルス・アストロファーガス NX-12 (γ-PGA 収量: 16.8 g/l) と、その γ-PGA 合成遺伝子をノックアウトした株 NX-12Δpgs を抗真菌能の観点から比較しています。
予想外にも、γ-PGA 合成酵素欠損株 NX-12Δpgs (γ-PGA 収量: 1.65 g/l) の抗真菌能力は in vitro で改善されましたが、NX-12Δpgs の生物防除能力は in situ で逆に大幅に減少してしまいました。

NX-12 によって生成された γ-PGA は、バイオフィルム形成と根圏のコロニー形成に非常に重要であることが示され、これによって、生物防除能力が効果的に改善されたのです。つまり、根圏における生物防除剤としてのバチルス菌ですが、本研究によって、その効果的なコロニー形成(縄張り形成)が、生物防除機能の発現にとって非常に重要な要素であることが示されています。


NX-12Δpgs (pMA5-pgs) は、NX-12ΔpgsをpMA5-pgsBCAプライマーを使って回復させたものです、ここで pgsBCA というのは、NX-12が持つγ-PGA合成遺伝子です。

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