ヒト界面活性タンパク質D(human SP-D)は、SARS-CoV-2の結合とDC-SIGN発現細胞への侵入を手助けする

College of Health, Medicine and Life Sciences, Brunel University London, Uxbridge, UKらのグループは、ヒト界面活性タンパク質D(human SP-D)は、SARS-CoV-2の結合とDC-SIGN発現細胞への侵入を手助けすると報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2022.960733/full

ヒトSP-D の組換えフラグメント(rfhSP-D) が、SARS-CoV-2 の DC-SIGN 発現細胞への結合を媒介する能力が評価されました。 DC-SIGN細胞表面発現を誘導するために、全長ヒトDC-SIGNのDNA配列を含むプラスミドをHEK 293T細胞にトランスフェクトして、DC-HEK細胞を作成し、その細胞をrfhSP-D (20μg/ml)で処理したSARS-CoV-2疑ウイルスに暴露しました。処理されたサンプル(DC-HEK + SARS-CoV-2疑ウイルス + rfhSP-D)では、未処理のサンプル(DC-HEK + SARS-CoV-2疑ウイルス)と比較して、約50%の結合効率が増加していました。
同様の実験を、PMA および IL-4 で処理することでネイティブ DC-SIGN の発現を誘導した THP-1 細胞を用いて行なったところ、rfhSP-D 処理は、未処理のコントロールと比較して、DC-SIGN を発現する THP-1 細胞へのSARS-CoV-2疑ウイルスの結合効率を約 25% 増加させることが分かりました。

分子モデルを用いてSARS-CoV-2およびDC-SIGN結合複合体を生成するために、ブラインドドッキングアプローチが試みられました。上位にランク付けされた結合複合体の分析により、スパイク タンパク質の NTD(N 末端ドメイン)は、DC-SIGN の CRD ドメインと相互作用することが明らかになりました。更に、DC-SIGN と SP-D を Spike タンパク質とドッキングすることによって三者複合体が生成されました。ドッキングされた上位ふたつの結合複合体(C1 と C2)の分子間相互作用を詳細に解析したところ、C1複合体とC2複合体の両方で、DC-SIGN(CRD)はSpikeタンパク質のNTDドメインと相互作用しており、C1 では、Spike タンパク質と rfhSP-D の間に直接的な分子相互作用はありませんでした。しかし、C2 では、Spike タンパク質は SARS-CoV-2のRBD を介して rfhSP-D と相互作用しています。

SP-D は RBD と相互作用し、DC-SIGN は SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の NTD と相互作用していることが明確に示され、結論として、SP-D は DC-SIGN と SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の相互作用を安定化させることが示されました。