肝細胞癌のAFPとIgGあるいはIgMの糖鎖修飾変化を組み合わせた診断法

Department of Laboratory Medicine, Shengjing Hospital of China Medical University, Shenyang, Chinaらのグループは、レクチンマイクロアレイを用いた肝細胞癌の診断法について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9634732/

三つのレクチン(EEL、MPL、および TC)を用いたIgGの糖鎖修飾の変化とアルファフェトプロテイン (AFP) を組み合わせたモデルによって、肝細胞癌に対する良好な診断精度(ROCのAUC=0.96 (P < 0.05)、感度=82.54%、特異度=100%)を得たとしています。

また、一つのレクチン (DSL) を用いたIgMの糖鎖修飾変化とAFPを組み合わせた別のモデルでは、ROCのAUC=0.90 (P < 0.05)、感度=75.41%、特異性=100% が得られています。

カンジダ症に対するPD-L1の阻害に着目した治療法の提案

Clinical Medicine Scientific and Technical Innovation Center, Shanghai Tenth People’s Hospital, Tongji University School of Medicine, Chinaらのグループは、宿主の免疫応答に対するPD-L1発現の負の側面、即ち、骨髄から感染部位への好中球の移動を阻害し、真菌感染の免疫逃避を促進する、という役割について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9652346/

カンジダ症の原因となるカンジダ・アルビカンスは、ヒトと共生する日和見的な真菌病原体です。全身感染が起こると、カンジダ・アルビカンスは血流に入り、全身に広がり、侵襲性カンジダ症として知られる疾患を引き起こします。宿主のカンジダ・アルビカンスの殺菌は、炎症性サイトカインの放出、活性酸素種および抗菌ペプチドの生成、好中球細胞外トラップの形成といった免疫反応に依存しており、好中球が主要な働きをしています。

PD-L1は、好中球、B 細胞、樹状細胞、マクロファージなどの免疫細胞の細胞膜に発現することがわかっています。 カンジダ・アルビカンスの感染中、この真菌の細胞壁上に存在するβ-グルカンは、宿主免疫応答の調節に重要な役割を果たしています。 C-型レクチン受容体 Dectin-1(Clec7a 遺伝子によってコードされる)は、このβ-グルカンの認識にとって最も重要な好中球のパターン認識受容体であります。

本研究では、真菌のβ-グルカンによるDectin-1の活性化がマウスおよびヒトの好中球でPD-L1の発現を誘導し、高発現したPD-L1がケモカイン CXCL1およびCXCL2 の分泌を制限し、骨髄から感染部位への好中球の移動を阻害することが実証されました。この発見は、骨髄からの好中球の移動を調整という観点で、PD-L1が真菌感染症に対する好中球ベースの免疫療法の強力な治療ターゲットとして機能する可能性があることを示唆しています。即ち、PD-L1の遮断またはPD-L1発現の薬理学的阻害のいずれかによって、骨髄からの好中球の移動が大幅に増加し、宿主の抗真菌免疫が強化されるということです。

Bacillus subtilis、Delftia acidovorans、および Bacillus polymyxae が、高麗人参の根腐れ病菌(フサリウム菌)の増殖を効果的に阻害

Jilin Ginseng Academy, Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Chinaのグループは、高麗人参の根腐れ病(フサリウム菌)を抑制する為に、健康な高麗人参から分離されたバクテリアの抗真菌活性について報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0277191

高麗人参の根圏土壌から合計 145 のバクテリア株が分離されました。これらのうち、YN-42(L)、YN-43(L)、および YN-59(L) と呼ばれる 三つの分離株が、in vitro で フサリウム菌に対する優れた阻害活性を示しました。


ここで、
a: Bacillus subtilis [YN-42(L)]、
b: Delftia acidovorans [YN-43(L)]、
c: Bacillus polymyxae [YN-59(L)]。

バイオ肥料として5種類の善玉細菌群とバイオ炭を施した小麦とトウモロコシの植物成長促進効果について

Interdepartmental Center SITEIA.PARMA, University of Parma, Italyらのグループは、バイオ肥料として5種類の善玉細菌群とバイオ炭を施したコムギとトウモロコシの植物成長促進効果について報告しています。.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9499264/

バイオスティミュラントは、バイオ肥料や、植物成長促進微生物(PGPM)として定義されるバクテリア、および/または菌類からなります。これらは、土壌に存在する栄養素の利用可能性を高めることによって植物との良好な関係を確立し、植物の収量や健康にプラスの影響を与えます。バイオ肥料の性能を向上させるために、土壌改良剤を積極的に利用し、微生物の成長と生存を促進することが有効です。バイオ炭(Char)はその良い候補であり、その多孔質な構造により、微生物が環境ストレスから生き残ることができる隠れ家となります。

本研究では、小麦とトウモロコシの温室栽培下にて、バイオ炭(善玉細菌のキャリアとして)、ニ種類の善玉細菌群(MC-B と MC-C)、および/またはアーバスキュラー菌根菌 (AMF) の組み合わせをバイオスティミュラントとして用いた場合の効果を調査しています。

  • MC-Bは、以下の善玉菌混合物:A. vinelandii DSM 2289, R. aquatilis BB23/T4d, Bacillus sp. BV84, B. amyloliquefaciens LMG 9814, P. fluorescens DR54
  • MC-Cは、以下の善玉菌混合物:A. chroococcum LS132, B. amyloliquefaciens LMG 9814, P. fluorescens DR54, B. ambifaria MCI 7, R. aquatilis BB23/T4d

結果として、選択された善玉細菌群とバイオ炭の様々な組み合わせが、小麦とトウモロコシのシュートや根のバイオマスに関してプラスの成長効果があることが示されています。

小麦では、成長に最も寄与したバイオスティミュラントは、AMF の有無にかかわらず Char+MC-C であり、次に AMF の有無にかかわらず Char+MC-B となりました。一方、トウモロコシでは、AMF の有無にかかわらず、Char+MC-C が最適なバイオスティミュラントとなり、次に Char+MC-B+AMF または AMF のみが続きました。

小麦の根圏:小麦の塩害耐性を耐塩性のバチルス菌の接種で改善し、小麦の成長を促進する

Key Laboratory of Integrated Management of Crop Diseases and Pests, Department of Plant Pathology, Nanjing Agricultural University, Chinaらのグループは、小麦の塩害耐性を耐塩性のバチルス菌の接種で改善し、小麦の成長が促進されることを実証しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9608499/

塩分は、酸化ストレス、浸透圧ストレス、栄養異常、膜機能不全、光合成活性の​​低下、およびホルモン機能不全らにつながる生理学的および代謝障害を誘発することにより、小麦の生育に有害な影響を及ぼします。塩害ストレス下の植物は、活性酸素種 (ROS) を過剰生成することがあり、タンパク質、細胞壁、そしてまた核酸にダメージを与えます。本研究の目的は、中国の青海チベット地域から分離された耐塩性のバチルス株が小麦の成長を促進し、小麦に対する塩ストレスの悪影響を軽減する可能性を評価実証することでした。

バチルス菌株、PGPR、FZB42、NMCN1、および LLCG23は、それぞれ最大 10% NaCl、18% NaCl、および 14% NaClのLB 培地でも増殖できるという耐塩性を示します。
小麦へのNMCN1 と LLCG23 の接種は、コムギの成長パラメーターを大幅に強化しました。高NaCl 濃度 (200 mmol) の環境下で、コントロールとなる小麦に対して、それぞれ、生重量=31.2% と 29.7%、乾燥重量=28.6% と 27.3%、シュート長=34.2% と 31.3%、根長=32.4% と 30.2% と大幅な植物成長効果を示しました。

バクテリアの塩耐性遺伝子、DegU、OstB、OhrR、ComA、SodA、および OpuAC はすべて、生理食塩水条件下で昂進されていることが確認されました。更に、塩害ストレス (200 mmol) の下で NMCN1 を接種した小麦は、expansin (expA1)、cytokinin (CKX2)、そしてauxin (ARF)に関連する遺伝子を有意に発現させており、LLCG23 および FZB42 がそれに続きました。エチレンをコードする遺伝子 (ERF) の発現は、同じストレス条件下で栽培された NMCN1を接種した小麦で大きく発現が低下していました。以下に示すように、高度に好塩菌である NMCN1 を接種した小麦においては、耐塩性遺伝子 (MYB、DREB2、HKT1、および WRKY17)が高発現しており、続いて LLCG23 および FZB42 と続きました。

LSECtin(CLEG4G)の二分岐N-型糖鎖への結合特異性は、溶液中と糖鎖アレイの結果では異なる

Basque Research & Technology Alliance (BRTA), Chemical Glycobiology Group, CIC bioGUNE, Bizkaia, Spainらのグループは、溶液中でのNMRの実験結果と、糖鎖を固定したマイクロアレイを用いた実験結果が異なることをLSECtinと二分岐N-型糖鎖の系で示しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9615123/

非対称の二分岐N-型糖鎖に対する LSECtin (CLEG4G) の糖鎖結合特異性を、NMR によって精査した結果と、糖鎖アレイから得られた実験結果を比較しています。驚くべきことに、NMRの実験では、非対称LDN3およびLDN6 N-型糖鎖の両方が、溶液中で同様の親和性でLSECtinと相互作用することが確認されました。しかしながら、これは、これらの非対称二分岐N-型糖鎖が糖鎖アレイに提示されたときに得られた結果とは対照的であり、糖鎖アレイでは、LDN6のみがレクチンによって効率的に認識されました。

分子認識の様子は、溶液の状態と表面上では異なっています。自然界に存在するものに近いのはどれなのでしょうか?糖鎖は通常、グライコカリックスを形成する複合糖質の一部として細胞表面に露出しています。糖鎖アレイを用いた研究は、細胞表面で行われている研究に近いと考えたくなります。しかし、スライドガラスの表面は、実際の細胞表面のグライコカリックスとは全く異なりますし、リガンドを表面に固定するために使用されるリンカーの長さと化学的性質、およびスライドグラス自体も、最終的な結果と得られた結果の解釈に影響を与える可能性があります。

O-Mannose修飾を受けたα-ジストログリカンとガレクチンとの相互作用について

北大・次世代物質生命科学研究センターらのグループは、O-Mannose修飾を受けたα-ジストログリカンとガレクチンとの相互作用について、特にcore M1に着目した研究結果を報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-022-22758-0

O-Mannose (O-Man) の修飾構造は、ヒトにおいては正常な発達に必要な限られたタンパク質にのみ見られるもので、筋肉および神経生理学において重要な機能を持っていることが分かっています。 α-ジストログリカン (α-DG) は、ジストログリカン (DG) の細胞外成分であり、最も広く研究されている哺乳類の O-Man 糖タンパク質です。骨格筋と脳で遍在的に発現し、細胞接着、筋肉の完全性、および神経学的発達に関連しています。 α-DG は、そのムチン様ドメインに、LacNac 末端を持つ3種類のO-man コア構造 (M1、M2、および M3) というユニークな糖鎖構造を持っています。

本研究では、ヒトのGal-1、-4、および -9 (-3 を除く) は、O-Man LacNAc 末端複合糖質と強く結合し、α2,3-シアリル化末端が存在すると、これらガレクチンの親和性が大幅に低下することが示されました。これは、このタイプの糖鎖修飾の伸長によって、このタイプの O-Man 糖鎖に対するガレクチン活性を微調整できることを示唆しています。更に、これらの相互作用はラクトースによって有意に阻害され、α-DG core M1 型糖鎖がガレクチンの標準的な糖結合部位 (S 面) に結合し、ガレクチンの受容体として機能することも確認されました。

更に、Gal-1 は、マイクロアレイ実験で、ラミニン-111、-121、-211、および-221 (ただし-511 を除く) とcore M1 α-DG 糖ペプチドをリンクするトランスブリッジ型の結合を形成することが示され、筋ジストロフィーの治療において、ガレクチンが治療に使える可能性が示されました。


ラミニンとガレクチンを含む core M1 複合糖質マイクロアレイの蛍光画像

アーバスキュラー菌根菌接種による根圏細菌叢の変化と大豆の成長促進効果

Engineering Research Center of Agricultural Microbiology Technology, Ministry of Education, Heilongjiang University, Harbin, Chinaらのグループは、アーバスキュラー菌根菌(Rhizophagus intraradices)を大豆に接種し、大豆の成長効果や根圏細菌叢・真菌叢の変化について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-022-22473-w

フィールド実験は、パラメータとして、AM菌接種の有り・無し、および大豆の連作の有り・無しを振り、3重の実験として行われました。即ち、In0、In1、Non0、そしてNon1という4条件での比較です。

AM菌接種の効果は、根圏細菌叢の組成変化よりも根圏真菌叢の組成変化に大きく現れました。下図に示すように、最も優勢な属は、In1YSFおよびNon1YSFで、Subulicistidium でした。ただし、フサリウムは、In0YSF と Non0YSF で最も優勢な属でした。興味深いことに、フサリウムの相対存在量は、AM菌を接種することで、Non0YSF の 15.72% から In0YSF の 1.58% に激減していました。

これに呼応して、大豆根腐れ病指数は、AM菌の接種により有意に減少しました。たとえば、AM菌接種による病害指数は非接種に比べて66%に減少しています。そしてまた、大豆の生育/収量指数は、AM菌の接種で高くなり、非連作下でAM菌を接種した大豆で最も高くなっていました。

(sLex)に結合特異性を持つE-セレクチンを (6′-sulfo-sLex)に対する結合特異性に改変する

Complex Carbohydrate Research Center, University of Georgia, Athens, GA 30602らのグループは、E-セレクチンの糖鎖結合特異性を二ケ所に変異を入れることで sLex から 6′-sulfo-sialyl Lewis X に変えることができると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9564326/

レクチンは糖鎖の検出によく使用されますが、硫酸化糖鎖への適用は、硫酸化糖鎖の認識レクチンが殆どないことと、そのブロードな特異性のために非常に困難です。

本研究では、E-セレクチンに着目し、6′-sulfateとE-セレクチンのE92およびE107との間の不安定化な立体的および静電的相互作用をE92A/E107Aという二個の変異を挿入することによって除去し、6′-sulfo-sLexに対する新たな結合特異性を持つように改変しています。良く知られているように、E-セレクチン自体は、非硫酸化リガンド sLex に特異的な結合を示します。
この新しい糖鎖結合特異性は、6′-sulfo-sLex が優先リガンドである Siglec-8 の特異性を良く模倣しています。

育種の新しい視点:SynComと呼ばれるコア細菌種の利用

古典的な育種法に転換期が訪れようとしています。大きな流れの一つは特定の標的DNA配列のみを変更することができるゲノム編集を使った育種法です。これにより育種にかかる期間を従来法に比べて大きく短縮化することができます。しかし、更に大きなうねりは、植物の形質を改善するために根圏細菌を積極的に使用しようとする考え方です。この方法の大きなメリットは、植物は元の遺伝子型を維持しており、遺伝子の組み換えやゲノム編集を行った製品に比べれば、特定の安全性評価を必要としないということにあります。

根圏細菌と植物の共生関係については、既に多くのブログ記事を書いていることもあり(即ち、多くの論文が存在するということなのですが)、その重要性について、改めて本ブログで強調することはしません。しかし、その方法論として、SynComという言葉が使われだしていることを本ブログでは強調しておきたいと思います。SynCom というのは、根圏細菌叢の全体的な組成に関する蓄積データの解析を通じて、根圏細菌叢の構造に大きく影響を与える可能性が最も高いと考えられる「コアとなる選別された数種の細菌種の組合せ組成」のことを指します。

実際の農業における SynCom 応用の有効性はテストされていますが、しばしば一貫性がないようです。この失敗の主な理由は、植物に関連する根圏細菌が有益な効果を期待通りに発揮できていないからです。この問題を解決するには、宿主植物の遺伝子型と根からの分泌物、生育環境との細菌種の適合性、在来の土壌細菌との空間的競合などを考えなければなりません。自然発生的な細菌集団とのSynComの生態的相互作用は、実際の環境では考慮しなければならない最も重要な側面のひとつだと考えられます。更に、SynComを根圏に定着させテリトリーを拡大させる為に、バイオスティミュラントを積極的に利用するという事も考えられるでしょう。

マイクロバイオームセンサーとバイオスティミュラントは、今後益々ホットな話題になっていくはずです。

参考)https://www.cell.com/trends/plant-science/fulltext/S1360-1385(22)00156-X

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